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第33話 その声、記録外
通路を進む足が、不意に止まった。
ヘルメット越しに、微かなノイズが混じる。ノイズの中から小さいが人間の声が聞こえてきた。
「……R-Ka1032、応答を求む」
初めは幻聴かと思った。
でも違う。“外”から届いている――この封鎖された都市の外、誰かがこちらを見ている。
「……君は観察される側じゃない。
君は、“観察を終わらせる側”だ」
レイカの瞳が、わずかに揺れる。
ノイズ混じりの音声に、圧倒的な違和感はなかった。
むしろ、どこか“懐かしいような”響きがあった。
「その声……誰?」
応答はない。
再びノイズ。何かが接続され、また遮断されたらしい。
だがその一瞬で、レイカの中で何かが静かに書き換わっていた。
「これは、私の任務じゃない。
……私の決断で、ここに来たってことにする」
独り言――ただの独白にすぎなかった。
それでも都市は、わずかに軋みを上げて、揺らぎ始めた。




