26/51
第26話 わたしの意思で
開いた外壁の前で、レイカはバイクを止めた。
“ファング”のエンジンが沈黙し、都市の音が戻ってくる。
彼女はゆっくりと、ヘルメットのバックルに手をかけた。
カチリ。
外気がそっと頬に触れる。
ヘルメットを外すと、艶やかな黒髪がふわりと広がった。
包帯には、まだ塞がらぬ傷の血がにじんでいた。
風が吹く。
髪が揺れ、傷跡が露わになる。
レイカはそのまま、割れた外壁の奥を見つめた。
一歩、踏み出そうとして――止まる。
「……もう、戻れないかもしれない」
けれど、それすら確かではない。
彼女は目を閉じ、深く息を吸った。
そして、再び目を開ける。
「……行く。私の意志で」
足を前に出す。
その一歩が、観察される側から“抗う者”への境界線を越えていく。




