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第24話 止まれなくなる前に
レイカは、ヘルメット越しに失敗個体を見つめていた。
刀の柄に、そっと手をかける。
だが、抜かない。
代わりに、短く息をつく。
「このままじゃ、わたしも止まれなくなる……」
低く呟いたその声は、マイクにも拾えないほど小さかった。
彼女はアクセルをひねる。
“ファング”が音もなく滑り出す。
黒い影が、再び都市の静けさへと溶け込んでいく。
バックミラーに、歪んだ風景が流れていく。
その中に――
壁を引っかく異形の影が、まだそこにいる。
小さく、静かに。けれど確かに。
レイカは目を逸らさなかった。
「私もきっと、遠くないうちに……」
そして視線を前へ向けた。
遠くで、施設のセンサーが赤く点滅を始めていた。




