第17話 濡れた舗道に赤い影
フクロウのアジトをあとにし、レイカは一人、石畳の冷気を踏みしめて歩き出した。
向かったのは、旧市街の一角にぽつんと残る――武器屋“ラクツ”。
古ぼけたネオンサインが、濡れた舗道に赤く滲んでいた。
レイカは、軋む木製のドアを押し開けた。
「よう、久しぶりだな。……顔つきが変わったな」
カウンター越しに現れたのは、白髪交じりの大男。
彼女のかつての“補給支援者”であり、口数少ない理解者だった。
レイカは言った。「火力を。最大限で。持てるだけ持ってきて。」
男は黙って頷くと、店の奥へ消えた。
数分後、テーブルに並べられたのは――
対装甲用ランチャー/EMP散布弾/関節固定式パルスブレード/遮熱強化スーツ
「……今のあんたが欲しがるもんだ。弾は重いぞ」
「軽くて吹き飛ばされるくらいなら、背負って死ぬわ」
レイカは一つずつ装備を確認しながら、口元に静かな笑みを浮かべた。
兆候は、唐突だった。頭が焼けるように痛んだ。
目の前に過去がよみがえる。
廃ビルの中で、銃声。人工の雨。耳を塞いだ自分の手が震えている――
「……またか」
フラッシュバック。
実験中、あえて極限状況を再現された“発動訓練”の記憶。
「怯えろ」「怒れ」「壊せ」
上からの声。下から這い寄る血の感覚。 押し込めていた過去が、どす黒く脈打ち始める。




