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第14話 タバコの煙
彼の顔を見た瞬間、胸の奥に冷たい怒りが立ち上った。 拳を強く握る。
私は言葉を選ぶことなく、静かに問いかけた。
「……なぜ、裏切った。」
フクロウは眉一つ動かさず、肩をすくめるようにして答える。
「俺は、強い側につくって決めてるんだ。
この業界で長く生きたきゃ、それが一番。危ない橋を渡る気はない。 それが俺の人生訓だ。」
その言い草が、あまりに当然のようで、何も返せなかった。
握った拳の中で、信頼が砕けた音がした。
私は言葉を押し殺し、代わりにポケットを探った。
禁煙なんて、もうどうでもいい。
くしゃくしゃになったタバコの箱から一本を抜き、火を点ける。
細く立ち昇る煙の向こうで、視界がぼやけた。
一服して、ようやく呼吸が戻る。
感情の輪郭が少しだけ収まり、私は低く呟いた。
「それで……“面白い話”ってのは?」




