第11話 侵入者
外はまだ、朝を迎えていなかった。 払暁、時間の進み方が鈍く感じる。星が寂しく輝いていた。
空は鈍く湿り、窓の向こうにあるネオンの滲みもどこか遠く感じる。
こころの隅でフクロウの言葉がのしかかる。
部屋の中、レイカはベッドに仰向けのまま身じろぎもせず、天井の染みを見つめていた。
眠りは浅く、夢と現実の境界は曖昧で、その間を何度も揺れ動いていた。
──そのときだった。
「……カコンッ」
まるで金属がぶつかるような、くぐもった音が床の下から響いた。
小さな音。でも、明らかに人工的な“意図”を含んだ音。
ホテルの老朽化では片づけられない“設置系の音”。
低く、乾いた足音が、廊下の奥から波のように寄せてくる。
(……何かがいる)
レイカは反射的に息を止め、耳を澄ませた。
その次の音は、もっと近かった。
「……ジィィ……」
コードか何かが伸びるような、巻き取り音──扉の向こう側から。
レイカはそっと、ベッド脇のナイトスタンドに手を伸ばした。
指先が冷たい銃のグリップをなぞる。思考が一気に研ぎ澄まされる。
(これは──“侵入前の準備”)
静かに体を起こし、窓の縁に視線を向けた。
カーテンの隙間から差し込む街灯の明かりが、
ふっと一瞬だけ、何かによって遮られる。
“誰か”が、外にもいる。床の軋む音。
ドアが少しばかり開いた。
喉がわずかに焼ける。
鼻腔を刺激する、わずかに焦げたような臭い──薬品。
そして、部屋の空気が変わった。沈むように、重く。
(煙? ……いや、ガスか?)
レイカは、すでにそのときには足を床につけていた。
肺の奥がざらつく。
身体が、かすかに“拒絶反応”を始めている。
彼女の皮膚が、違和感を正確に伝えてきた。
咄嗟に腰を落としベッドの裏側で息を止めた。




