第10話 フクロウの招待状
目を覚ますと、世界が一瞬だけ、まだ夢の中にあるように感じた。 身体の血液が隅々に回らず、力が入らない。まるで、白昼夢の残り香に包まれているようだった。
肌に触れるシーツの感触も、天井のうす暗いシミさえも、どこか“現実の皮をかぶった夢”に見えた。
レイカは静かに起き上がり、浅く呼吸を整えた。
汗ばんだ額をぬぐい、ぼんやりと自分の手を見つめる。
小さく、鋭く、震えている。
——まだだ。完全には醒めていない。
そのとき。
ポン、と通知音が鳴った。頭がクリアになり現実に、引き戻されたような気がした。
携帯端末が、ベッド脇の粗末なテーブルで淡い光を放っていた。
フクロウからだ。
『起きてるなら応答しろ。面白い話がある。』
視界の奥で、再び夢の白が滲んだ気がした。
レイカは、静かに画面を閉じた。そして、黙って立ち上がる。
夢と現実の境界が、曖昧なまま溶けていく。
この戦いは、まだ――終わっていなかった。
漆黒の闇、朝の光は射していない。
それでも、時間が過ぎているのが皮膚でわかる。
血が、他人のもののように重く流れていた。まるで、自分の身体を“別の何か”が内側から動かしているような――そんな違和感
傷口は塞がり、粘膜で覆われていた。それでも、創痕の見た目は無残だった。
完全ではないが、前夜のあの状態から見れば、異常なほど回復している。
治りすぎている傷が、何よりも怖かった。痛みが消えていく代わりに、“自分”が薄れていくようだった。
(アンプルのせいか……それとも、とうとう“始まった”のか)
指先の爪が、ほんのわずかに透けている気がした。
“私”じゃない何かが、皮膚の下で微かに笑った。




