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第65話真実 2

 アメリアは、もともとキングスリー国の王女だった。政略結婚である年上の公爵と結婚させられたが、まったく愛されず、それどころかいっさい顧みられることがなかった。三年後、待望の子どもを授かったと判明したすぐあと、その公爵の愛人に男児が産まれた。そして、「産まず女」と誹りを受けて離縁されたという。


 結局、子どものことは言わなかった。いや。言えなかったのだ。


 彼女は決意した。王宮に戻り、自分一人で育てようと。が、離縁されて出戻った彼女は、当然のことながら風当たりがきつかった。どこの国も同様で、レディの存在意義は男性のそれより低くて悪いのだ。


 カイルが産まれ、それでも彼のために王位継承権を得ることに奔走した。国王の甥になるため、その序列はかぎりなく低い。それでもよかった。王太子や国王にさせるつもりは毛頭ない。わが子が、せめて何不自由なく暮らせるようにしたかったのだ。親心、というやつだ。


 が、それが仇となった。周囲からは二心ありと疑われ、煙たがられた。兄である国王にさえ、疎まれ始めた。


 そんなとき、彼女は王宮の森の中で赤子を拾った。


 黒髪と黒い瞳を持つ赤子を。


 哀れに思った彼女は、その赤子のことを宮廷付きの司祭に相談した。彼女とその司祭は、乳兄妹だったからだ。


 神からの啓示、ということにした。王女に迎えれば、国が繫栄するとも。


 国王は、疑いつつも司祭の宣告通りにした。


 キングスリー国では、その頃天災や戦争が続いて民衆の不平不満がたまっていまにも爆発しそうだったからだ。いわば、それでごまかし、目をそらせようという意図があったのだ。


 が、それもいつまでも続かなかった。


 アメリアは、ていよくまた政略結婚させられてしまったのだ。


 このモート王国の国王に。


 アメリアはカイルと拾ったわたしを残し、モート王国に旅立ったのだ。


「あなたのことをカイルに託したの。カイルは、あなたのことをほんとうの妹のように可愛がっていたから。だけど、彼はあなたと自分自身を守るため、すべてにおいて厳しくあらればならなかった。あなたにたいして。そして、自分自身にたいして。わたしは、カイルのことが心配でならなかったのと同様にあなたのことも心配だった。あなたがカイルのもとからいなくなったと聞いたときから、さらに心配だった。だけど、カイルがあなたの所在を調べてくれて安心したわ。あなたがひとりで、しかもこのモート王国でちゃんとやっているとわかったから」

「ブランドン様は? ブランドン様は、当然現国王との……」


 自分のことより、なぜかブランドンのことが気になった。


「ブランドン?」


 アメリアは、その名を初めて聞いたかのような反応を示した。


「ブランドンは、わたしの子だ」

「はい?」


 ホプキンソン大公の突然の宣言に、そうとしか反応のしようがなかった。


「厳密には、義理の息子だ」

「ああ、なるほど。クララ様の夫になるのでしたら、そうなりますよね?」

「クララの夫? クララ、そうなのか? それはマズいぞ。百歩譲って、わたしの愛人の子というのならまだしも、同腹の子となれば、倫理的にも社会的に許されんぞ」

「はぁ? 冗談はやめてください。お父様、わたしの好きな相手をご存知ですよね? お父様は、わかっていてロクでもない男とばかり政略結婚させようとしているのですから。ブランドンは、たしかにいい人です。しかし、しょせん兄どまりです。彼は、レディにたいする気遣いがない上に根性もありませんから。それにくらべ、レッドは最高のパートナーです。この際ですからはっきり言わせてもらいます。わたしは、レッドと結婚します。マクレガン公爵夫妻も賛成して下さっていますので、何の問題もないはずです」

「お、おい、クララ……。これは、まいったな」

「ワオ! おめでとう、クララ。レッド、いよいよだな」

「おめでとう、クララ、レッド。兄として鼻が高いよ。こんな素晴らしい義妹ができるんだから」


 サディアスとジャックは、おおよろこびだ。そして、レッドは照れまくってる。


「だけど、クララ様はブランドン様とサディアスと三角関係で……」


 小声で言ったとき、カイルが嘲笑した。


「単純で鈍感でバカのおまえらしいな。あの三人が三角関係なものか? いや。相手は異なるが、三角どころか四角関係ではないか?」

「どういう意味よ」


 意味がまったく分からず、カイルを睨みつけたタイミングでアメリアが説明してくれた。


「ライオネルの亡くなった奥様は、もともと現国王の侍女だったの。とはいえ、伯爵令嬢だけど。ブランドンが産まれると、ブランドンだけ取り上げられ、暇を出されたの。その彼女を、ライオネルが妻に迎えたわけ。そして、わたしはブランドンをわが子として育てたの。政略結婚で無理矢理王妃になったわたしだから、わたしだけでなくブランドンへの風当たりは強かったんだけど。結局、わたしは王妃の座どころかすべてを奪われてしまった。廃妃になったわたしは、帰るところもない。お情けで王宮の森に住まわせてもらっているのは、幸運だと思っているわ。それよりも、ブランドンには悪いことをしたわ。こんなことなら、ほんとうの母親とライオネルに預けることに奔走すればよかったのよ」

「母上、そんなことはありません」


 溜息をつくアメリアにブランドンが寄り添った。

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