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第62話ふたりは、ほんと噛み合わなさすぎ

 わたしたちは、屋敷の居間にいる。


 ログハウスでアメリアとホプキンソン大公がいた部屋は、控えめにいってもグチャグチャになった。


 わたしがそんなふうにしたんだけど。


 とはいえ、窓ガラスが割れ、花瓶や椅子や机や床が残念なことになっただけである。


 意識が飛んでいる間、外で暴れたらしい。だから、その程度ですんだのだ。


 そして、クララの誕生日パーティーは、本人とその父親不在の中で無事に終了した。


 カイルとダリルは満身創痍ながら、寝台で寝込むほどではない。もちろん、フツーの人なら、重傷レベルなので医師による治療の上絶対安静が必要だ。


 彼らは、フツーじゃないので唾でもつけておけばすぐに治るだろう。


 とはいえ、わたし自身も切り傷やら擦り傷やら打ち身やらでひどい状態だ。それでもこうして立っている。カイルとダリルに比べれば、まだマシだ。


 それから、ブランドンも傷や打ち身をこさえ、軽い捻挫をしている。彼はフツーの人だけれど、すべてたいしたことはない。それこそ、唾をつけておくレベルだ。



 アメリアにドレスの謝罪をした。


 このボロボロの状態は、どれだけの技術や経験のある裁縫師だろうとぜったいに修復はできないはずだから。それこそ、いまはもう廃れてしまった錬金術や魔術の類でも使わなければ、元には戻せないはず。


 これはもう依頼料から弁償するしかない。


 そこまで覚悟し、謝罪したのだ。


 原形をとどめていないドレスは諦め、クララにカジュアルなシャツとスカートを拝借した。ほんとうはズボンがよかったけれど、ズボンといえば乗馬用のズボンしかない。しかも、かなり高価なズボンだ。それは遠慮し、クララが屋敷内で着用するシャツとスカートを借りたわけである。


「じつは、そのドレスはわたしのではないの。あなたのなの」

「はい? わたしのドレス?」

「ちなみに、王宮でのパーティーの際にわたしが貸したドレスもあなたのよ」


 クララが言った。


 なにがなにやらわからない。


「ブランドンがあなた用にと購入したの。もっとも、ブランドンはセンスが悪いので、クララやわたしが選んだのだけど。今回は特に時間がなかったから既製のドレスにしたけど、それでさいわいだったわね。これが仕立てたドレスだったら残念な思いをしたでしょう」


 アメリアのさらなる説明もわけがわからない。


「ブランドン様が、どうしてわたしに?」


 ドレスを贈る相手を間違っているとしかいいようがない。


「きみに気を遣わせたくなかったからね。だから、母上のドレスということにしたんだ。黙っていてすまない」

「では、ブランドン様にも謝罪しなきゃ、ですよね? ボロボロにしてしまって申し訳ありません」


 ブランドンに頭を下げた。


「おば様。このふたりって、いつもこんなのですか?」

「ええ、クララ。最初は微笑ましかったけれど、最近は噛み合わなさすぎてイライラしているわ。精神衛生上、よくないので聞かないようにしているの」


 クララとアメリアは、なぜか笑っている。


 そのとき、居間にホプキンソン大公とリオンとルーが入って来た。


 ホプキンソン大公は、王都の警備隊へ通報し、その対処をしたのだ。


 大公自身も狙われたため、このまま隠しておくわけにはいかないからだ。


 リオンとルーは、王都外までロード帝国の工作員たちを見送りに行っていたのである。


 見送りというのが、親類や友人を見送るようなものではないことはいうまでもない。


 本来なら警備隊に引き渡すべきなのだ。が、そうなったらそうなったでいろいろ厄介なことになる。


 工作員たちを雇った、というか、一連の黒幕どものこともある。


 だからこそ、工作員たちにはお引き取り願ったわけだ。


 死を恐れぬ連中だけど、リオンとルーは死よりも恐ろしかったらしい。


 とりえず、あいつらがいなくなっただけで、肩の荷がおりた。さすがにあいつら以上の腕を持つ連中はいないだろう。


 まぁ、いたとしてもリオンとルーにはかなわないだろうけれど。


 ふたりには、感謝してもしきれない。

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