第6話子どもたち
「うん。間違いない」
「うん。間違いないね」
ふたりは、わたしに近づいて来るとマナー違反レベルに上から下までジロジロと見てきた。
「やっと見つけたよ、姉さん」
「なんですって?」
年長の子の言葉に、おもわず声が出てしまった。
「ずいぶんと探したんだよ、姉さん」
「ど、どういうこと?」
年少の子の言葉にも、反応せずにはいられなかった。
が、ふたりともニコニコ笑うだけだ。
(えっ? えっ? もしかして、腹違いの弟? わたしにそんなのいたわけ?)
まず、思いついたのがそのことだ。というか、彼らが人間違いや勘違いをしていないかぎり、そうとしか考えようがない。
(いいえ。わたしのような突然変異が、三度も起こるわけはない)
わたしがいまここにいるのは、黒髪と黒色の瞳のせいである。まぁ、たしかに性格や素行もあるかもしれないが、主な原因はこの見てくれだ。
黒色は、このモート王国ではまだ寛容だ。しかし、祖国ではそうではなかった。しかも王家の血筋にそういうのが現れたとなると、それこそ神への冒涜的な扱いを受ける。
実際、散々そういう扱いを受けた。
「邪魔なガキだ。そいつらもやってしまえ」
いろいろ考えているところに、クズ野郎の怒鳴り声が耳に飛び込んできた。
それでクズ野郎のことを思い出した。というか、すっかり忘れていた。
「いま、取り込み中なの。ひっこんでてくれる?」
子どもたちに丁寧にお願いした。
が、ふたりとも首を傾げるだけで、どこうとしない。
そういっている間に、傭兵どもが襲ってきた。
「どきなさいってば」
「ねぇ、ぼくがやっていい?」
わたしの怒鳴り声に年少の子の声がかぶった。
それこそ、瞬きする間もなかった。
傭兵どもは、一瞬にして石畳の上に転がったのだ。
「再起不能にしたけど、殺した方がいい?」
わたしを見上げてニッコリと無邪気な笑顔で尋ねた男の子は、「ズキュン」とくるほど可愛らしかった。
というか、実際「ズキュン」ときてしまった。