第59話意識が飛んだ?
「キャァァァッ!」
「ウオッ!」
室内にゴロゴロ転がったわたしに、アメリアとホプキンソン大公の叫び声が降ってきた。
「アメリア様っ」
「母上っ」
転がりながら体勢を整えたときには、ブランドンも壊れた窓から入ってきている。
その瞬間、またあの甲高い音が響き渡った。両耳がそれをキャッチした瞬間……。
意識が飛んだ。
ほんとうに意識がなくなったのだ。
ハッと気がついた。というよりか、夢からさめたような、あるいはなにかしらに目覚めたような、そんな不思議な感覚に襲われた。
「ここは? いったい、どうなっているの?」
なぜか外にいる。
右手にログハウスがあって、無残に壊れた窓からクララたちがこちらを見ている。
周囲にはタキシード姿の工作員たちが転がっていて、カイルとダリルが地面にへたっている。
そして、目の前には……。
異様な風体をした物たちが立っている。
まさしく、物という形容がぴったりなほど、不気味な感じがする。
彼らは全身黒一色という恰好で、フードを目深にかぶっている。
とくに先頭にいる男、たぶん男だろうけれど、そいつがとにかく異常な感じがする。
フードの奥にあるのは、暗い炎。不吉で不気味なそれらに見られていると思うと、総毛だってしまう。
うなじは、いまやザワザワどころかズキズキしている。
『その力だ。その力が欲しかったのだ』
その物は、声で伝えるのではなく心の中に伝えてきた。
『その力、いただくぞ』
その瞬間、そいつも含めたマントたちがいっせいに襲いかかって来た。
「リオ」
いきなり腕をひっぱられた。その衝撃で、うしろへよろめき倒れた。
「グワッ!」
血しぶきが、顔やドレスに飛び散った。
見おろすと、ドレスは血まみれのボッロボロ。切り刻まれ、ちぎれまくり、ほとんど原型をとどめてはいない。
「な、なんなのこれ?」
ドレスをこんなにボロボロにしてしまった記憶がない。
(もしかして、意識がなかったときに切り刻まれたの?)
そうとしか考えようがない。
「カイルッ!」
呆然としているわたしの方に、カイルが倒れてきた。
彼もまた血まみれだ。
すくなくとも、ついさきほどわたしをかばって傷ついたのだ。




