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第55話救世主あらわる?

「クララッ!」


 ブランドンがクララの名を呼んだ瞬間、左肩に衝撃があった。


 うなじのザワザワのお蔭で、背後からの攻撃をかろうじて防げた。


 もっとも、アメリアから借りているこのドレスの肩の辺は切り裂かれてしまったけれど。


「クララ様、どうして?」


 すぐうしろに、ついさきほどわたしのドレスを切り裂いたクララが立っている。その手にナイフを握りしめて。


 彼女に尋ねた瞬間、彼女の様子がおかしいことに気がついた。


「うわっ!」

「ブランドン様っ!」


 そのときには、工作員たちがブランドンに襲いかかっている。ダリルが数名を相手にバトルを繰り広げているのが、視界の隅に映った。


 ブランドンを突き飛ばし、東屋から飛び出しつつ相手の戦闘用ナイフを愛用のナイフで受け止める。が、やはり実力差は否めない。というか、まったく歯が立ちそうにないことをわが身を持って知った。


 いまさらだけど。


 とにかく、受け止めたはずのナイフが弾き飛ばされてしまった。しかも、相手は招待された貴族令嬢のふりをしている女工作員。女でさえこれだけの膂力なのだ。男だったらどれほどのものか?


「サディアス、ブランドン様とクララ様を連れて逃げて」


 自分の非力さを呪っている場合ではない。頼みのダリルも時間の問題。わたしも、あと数十秒かもしれない。


 サディアスにふたりを託した瞬間、またしても甲高い音が耳に飛び込んできた。


「うわっ! クララ、どうしたっていうんだ?」


 クララは、つぎはサディアスに襲いかかったのだ。


 ブランドンはわたしが突き飛ばしたときに尻もちをつき、やっと立ち上がったところ。


 これでは、どうしようもない。


 その瞬間、三方向から工作員たちが襲いかかって来た。


 瞼は閉じない。たとえ刺されようが突かれようが切り裂かれようが、相手を恨み殺しそうな勢いの眼力を発揮したいからだ。


「ったく、ちんちくりんは、あいかわらずちんちくりんの腕前だな」


 すぐ目の前に、カイルが現れた。


 救世主だと信じていいのかわからないけれど、ほんのわずか希望が持てた。


「なにを言ってるのよ。あなたが、バカ王子を相手に遊んでいるからでしょう?」


 ほんとうは、助けてもらった礼を言う場面だ。が、口から出てきたのは、憎まれ口だった。


 それがわたしだからよしとしよう。


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