第5話野郎ども
たしかに、自分自身の能力を奢っていたことは否めない。そこらの強面やゴロツキや力自慢には負けないという自負があった。
が、それはやはり違っていたのだ。
愛用のナイフを閃かせ、相手の剣や戦闘用ナイフをかわしつつ、依頼人の娘に合図を送ろうとした。
その合図で、彼女は逃げることになっている。
彼女が逃げたことを確認後、わたしはわたしで時間を稼ぎをし、可能ならば退散する。
いままさに合図を送ろうとしたときだ。
「みーつけた」
少年の声が聞えたと同時に、星がまたたく夜空から何かが降って来た。
(な、なんなの、この子たち?)
声が出そうになったのを、必死におしとどめなければならなかった。
目の前に現れたのは、ふたりの子どもだったのだ。
まさしく、空から降って来た、あるいは忽然と姿を現したという表現がピッタリな登場の仕方だった。
登場の仕方もであるが、子どもたちの恰好がまた奇抜だ。彼らが着用している衣服は、その昔、祖国の皇宮内の図書館の本で見たのと同じような感じだ。遠い東方の大陸の古の資料かなにかで見たのだ。独特な黒装束、といったところだろうか。幼心に衝撃的だったので、そのビジュアルはいまでもよく覚えている。
そんな奇抜な恰好をしている彼らの年齢は、十二、三歳くらいと十歳前後くらいだろうか。
そして、その髪と瞳の色だ。
わたしと同じ黒色なのだ。
それから、その存在感だ。とにかく、彼らからなにも感じられない。
人間というのは、つねになにかしらの感情を抱き、気を発している。わたしは、それらを読むことに長けている。もっとも、あくまでも「なんとなく」だけで、明確なところまではわからないけれど。
とにかく、そんなわたしなのに、目の前のふたりの男の子たちの心の中や感情だけでなく、気もまったく感じられないのだ。
それだからこそ、この子どもたちには得体の知れない恐ろしさがある。