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第48話大公女クララの誕生日パーティー

 さすがは大公家。


 なにもかもがスケールが違いすぎる。


 もちろん、招待客の数も半端ない。


 そのほとんどが、クララ自身が招待したわけではない。彼女の父親が招待した人たちだ。


 クララは、アメリアとブランドンに「来て欲しい」と、招待というよりかは懇願していた。そのときの必死な彼女は、なぜか寂しそうに思えた。


 元王女といえど、幼い頃に宮殿から、というよりか王家から追放されたわたしにとって、彼女のほんとうの気持ちはわからない。だけど、近しい人が側にいるのに、その人に見向きもしてもらえないときの寂しさや情けなさはわかる。


 わたし自身、何度も味わったから。蔑まれ、疎まれ、裏切られ続け、ずっとひとりぼっちだったから。


 そんなことを考えている間に、馬車が停止した。


 カイルがアメリアをエスコートすると、ブランドンが当たり前のようにわたしをエスコートしてくれる。


 すでにルーたちは到着している。


 クララが私設の警備兵たちに伝えてくれたらしく、門をなんなく通過できたという。


 リオンとルーはもとより、表向きキングスリー国の王子であるカイルの家臣兼護衛であるダリルたちも正装だ。その恰好で、隠れ家である屋敷からここまで走ってきたというから驚きだ。もちろん、息も服装も乱さずにだ。


 まぁ、わたしも現役時代はドレスでも飛んだり跳ねたりしても大丈夫だったけど。


 それはともかく、リオンとルーと合流でき、心からホッとしたことはいうまでもない。



 今夜の主役であるクララは、さすがに大忙しのようだ。彼女は、わたしたちが到着したことは気がついている。が、クララの父親がクララを連れ、パーティーの招待客の間をまわっているのでこちらに来ることができないのだろう。


(ご貴族様ってほんとうに大変よね)


 つくづく思う。


 なにもかもが家ファーストで、自分自身の優先順位は低くなってしまう。


 それを思えば、訳あり元王女のわたしは、いま現在はなにものにも縛られることなく自由気ままに生きている。カイルにしても、組織の長として縛られはしているが、ある意味では自由だ。


 わたしたちのような人間は、こういう不自由さは性にあわないのかもしれない。


「リオ、浮かれているじゃないぞ」


 カイルとダリルが近づいてきた。


 カイルは、キングスリー国の王子としてパーティー客と親交を深めてまわっている。


 とはいえ、こういうときだけ王子を演じる彼にとっては、親交じたいはどうでもいいことなのだろうけど。


「これが浮かれているように見える?」


 アメリアとブランドンは、ここでも疎外されている。いまもテラスへと続くガラス扉を背にして佇んでいる。わたしはというと、何かつまんでくるといって壁際の料理のところにやって来ている。


 当然のことながら、つねにふたりが視界にはいるようにしている。つまり、ふたりを見張りながら動いているのだ。


「これは、いったいどうなっているんだ? ヤバい連中ばかりじゃないか」


 ダリルは、ポーカーフェイスを保ったままモゾモゾと口の中で言った。


 広間内の喧騒でフツーの人の耳なら聞こえなかっただろう。ついでに口の形を読むこともできなかっただろう。


 当然、わたしは違う。あらゆる意味でフツーの人とは違う。組織に属していた人間だからだ。


 これは、わたしたち組織で使う伝達方法のひとつだ。他者から聞き取られないようにするのはもちろんのこと、口の形で読まれないようにもするためだ。というわけで、この初歩中の初歩の伝達方法は、組織に入れば一番最初に叩きこまれる。


「弟たちの言った通りね」


 わたしもその伝達方法でカイルとダリルに言った。


「そうとわかる下っ端だけでもこれだけいるのよ。そうとわからない連中がどれだけいるのか、よね? 王子殿下、あなたの部下、いえ、家臣だけで対処できるのかしらね?」


 不安をまぎらわせるため、カイルに嫌味をぶつけていた。


 リオンとルーは最初に他者の介入を報告してくれた後、その他者が何者かも調べてくれた。


 雇い主まではわからなかったけれど、キングスリー国をも凌ぐ軍事超大国の工作員たちだという。


 軍事超大国、つまりロード帝国は、キングスリー国同様、暗殺や工作で他国を陥れ、ぶっ潰すことを繰り返している。その彼らの規模は相当なもので、しかも腕もかなりもの。彼らなら、大国クラスでも一日あればぶっ潰せるという。それだけではない。軍事力をもってしても、同様にぶっ潰せるだろう。


 そして、そこの工作員たちは、キングスリー国の組織よりもはるかに狡猾で残忍だ。わたしも何度か渡り合ったことがあるけれど、カイルやダリルに救ってもらってばかりだった。そのふたりも、わたしを救って離脱するのに精一杯だった。


 もっと厄介なのは、幹部たちの存在がまったくわかっていないことだ。


 そんな連中が、いまここにウヨウヨしている。

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