表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/67

第35話わたしって、いじられキャラ?

 カイルは、いったん宿屋に戻ってカフェに戻って来るという。


 供の者を数名連れてということらしいけれど、それが組織の連中であることはいうまでもない。


 カイルは、わたしに気がついていた。


 あのパーティーで気がついていたのだ。


 いくら変装していて、現役の頃と雰囲気も違っているといっても、あいつの目はごまかせないというわけだ。


「どうしてあんなことを言ったのよ」


 クララたちとは咳が離れていることをいいことに、リオンに小声で文句を言った。


「この前、あいつのことは話したわよね?」

「この前? ああ、姉さんが彼を押し倒した、あのあとのことだよね?」


 リオンは、ニッコリ笑いながら形のいい顎でブランドンを示した。


「だから、違うって言ったでしょう」

 

 興奮で声がおおきくなり、ごまかすために咳ばらいをした。


「姉さん。ルーとおれは、ぜったいに負けない。だから、安心してよ」


 リオンは、真剣な表情で言った。


 その大胆不敵な宣言は、ストンと頭と心に入って来た。


(リオンがそう言うのなら間違いないわね)


 リオンの根拠のない自信。いや。わたしにとっては不確かな彼の確信。それでも、信じていいと思えるほど、彼らのことを信頼している。


「連中を側に置いた方が第三者の被害を防げるしね。なにより、他の暗殺者たちの抑止力になる」


 第三者の被害……。


 パーティーの送迎の馭者は、もう少しで被害者となるところだった。同居を断れば、クララだって危なくなるかもしれない。さらには、今後も出てくるかもしれない。


「抑止力ですって? 他にもまだ暗殺者はいるわけ?」


 そこも問題だ。


 カイルたちだけでなく、まだ他にもいるだなんて……。


 アメリアとブランドンによほど死んでもらいたい、というわけなのね。


「やあ、クララ」


 そのとき、クララたちにだれかが近づいてきた。


 その声に聞き覚えがある。


「おっと、リオもいたのか?」

「わたしがいて悪かったわね、サディアス」


 すぐ横を通りかかったサディアスを見上げ、頬をふくらませた。


 マフィアのボスであるサディアス・ラザフォードと腹心のジャック・マクレガンがやって来たのだ。


「いていいとも。ちゃんと仕事をしているってことだからな」


 このカフェは、東地区を牛耳るサディアスもおなじみにしているらしい。


「夫人、ご機嫌麗しく。あいかわらず気高くて美しい」


 サディアスは、木の床に片膝をつくとアメリアの右手の甲に口づけをした。


「あなたもあいかわらずね、サディアス。いつも助けていただいて感謝しているわ」

「クララにくらべればたいしたことはしていませんよ」


 サディアスの野性的な美貌には、やわらかい笑みが浮かんでいる。


「サディアス」

「ブランドン」


 ふたりは、ハグをしあった。


 なんだか親友どうしって感じでほのぼのとしてしまう。


「サディ、わたしには?」

「おっと、クララ。きみが一番だったな」


 サディアスはブランドンから離れると、立ち上がって腕を広げるクララをギュギューッと抱きしめた。


 サディアスに熱き抱擁をされているクララは、めちゃくちゃリラックスしている感じだ。


(なんてこと。サディアスもクララを愛しているの? ってか、クララもまんざらじゃないって感じだわ)


 衝撃を受けた。


 これって、三角関係ってやつ?


 混乱してしまった。


「ついでにリオもハグしようか?」


 サディアスは非常識なほどの時間クララとハグした後、あろうことか腕を広げたままわたしの横に立った。


「結構よ。間に合っているわ」


 座ったまま彼を見上げ、不貞腐れた。


「ついで扱いなんてごめんだわ」、とでもいうように。


「遠慮するなよ。おれとおまえの仲じゃないか」

「ちょっ……。へんなこと、言わないでちょうだい」

「おい、サディアス。彼女をいじるのはよせ」

「そうだな。おっかない弟たちにボコボコにされたくないからな」


 ジャックに諫められ、サディアスは苦笑した。


(わたしは、いじられキャラじゃないわよ)


 ますます不貞腐れてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ