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異世界転生 冒険者になるので探さないで下さい  作者: みえだ
第1章 『風』と『翼』の出会い
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ロケハンはしっかりと




 エールを助けてハーピー達が住む集落に招かれた俺。数日経った今は


「エール、もうちょい下ー」


「はーい」


 エールに掴んで飛んで貰ってあのとき俺を出迎えてくれたハーピーの一人プルーマさん達が住む家屋の補修作業をしている。


 元土方を舐めんなよ〜、こう見えても俺は前世鳶や左官を始めとした建設作業はほとんど経験済み。金を稼ぐ為に気のいい親方に勧められるがまま色んな作業や職場に身一つで参加しまくって資格取って死物狂いで働いて身に付けた技術。昔とった杵柄って奴だ。


「ここ、かなり傷んでるみたいですけど補修でいいんですか?いっそ張り替えたほうが早いっすよ?」


 長年使った家屋はそれ相応の劣化も見られる。俺の見立てじゃあ持って後一年位だろう。だが


「あー、いいんだよそれで、引っ越しも近いしそれまで凌げれば」


 プルーマさんから出た引っ越しという単語。あの後ティフォーネ様の友人からの情報だと結局マンハイム王国からの解答は


『責任者が多忙な為今現在事実確認をしている』


 と、言う物。ぜってえあのクソ親父が機能してねぇだけだろ。現に風声ステムウィントからは



(アノオジサン、ズットネテル)



 駄目じゃねえかとは俺の率直な感想だ。勿論その事もティフォーネ様に伝えた所


「…いっその事私達がこの地を離れたほうがいいかもしれませんね」


 ハーピー達の引っ越しを決意した。勿論俺の案は


「確かに、それはそれでありかもしれません。騎士と盗賊。事故死に見せかければ騎士が私達を守り盗賊達と戦ったというふうに捉えさせる事も出来るでしょう。ですがウィントスさん。貴方が私達の為に重荷を背負う事はありません」


 やっぱり説得されてしまいあくまで最終手段として留まるに至ったというわけだ。それでティフォーネ様は友人でハーピー族に便宜を図ってくれているアドレアさんなる人物がいるアルバトロス連邦共和国の内陸に位置するブリティス連峰という山の麓の街「ルーメン」への引っ越しを決めたってわけ。だからハーピーの皆さんは今引っ越し準備に追われている。


「それにしてもウィン上手だね〜」


 俺の無駄の無い手際を見てエールは羽ばたきながら関心して見ている。


「まぁ飽きる程やってたからな、慣れたもんさ」


 勿論前世でな!こっちの時は高いとこに登る度に母さんが『ダメじゃないニール!』と叱られよく近所のおっちゃん達に引き摺り降ろされていたからな。

 その後もエールに手伝ってもらいながら他のハーピーの方の家屋修繕を行っていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 家屋の修繕が終わり、今はエールに連れられ遊覧飛行と洒落込んでいる。


「ウィン、あそこがこの山のゴブリンの巣だよー」


 エールが見下ろす視線の先の岩陰にはゴブリンが協力して山にいた猪みたいな魔物を運んでいる所だった。ゴブリンは獰猛な人型の魔物で雑食、つまり人でも魔物でも構わず食っちまう魔物だ。そのゴブリン達は先にある洞穴を目指している所だった。


「へぇー、やっぱりこの山にも魔物はいたんだなぁ」


「ウィンは出会でくわさなかったの?」


「ウルフくらいかなぁ、俺の場合は風声ステムウィントが魔物の事教えてくれたから出会でくわさないように避けて山登ってたんだ」


 うん。本当にありがとうございました風声ステムウィントマジで助かりました。何が凄えってその都度その都度で的確に何がどうって具体的に教えてくれるからマジで助かった。だから山登りは順調だったし魔物相手とはいえ殺生も最小限に留める事が出来た。その後も飛行しながら改めてヴァトラス山を見て回しているとふとエールから


「ねぇウィン」


「どーした?」


「ウィンは騎士も盗賊もやっつけちゃおうって言ってたけど、どーするつもりだったの?」


「ああ、それな…」


 俺はもし騎士と盗賊を始末するならどうするかをエールに打ち明ける。飛びながらも静かに聞いてくれていたエールは俺に質問をしてくれた。


「成る程〜、それならバレなさそうだね」


「ああ」


「でもウィン、ウィンはそれでいいの?」


「それって俺が人を殺める事を前提での質問でいいんだよな?」


「うん」


 エールの質問に俺は一つ深呼吸して一拍置いてから答えた。


「冒険者の依頼の中にはさ、『盗賊の討伐』ってのもあって要は金出すから盗賊達を殺して来いって依頼だ」


 そう、冒険者と一口で言ってもその仕事は多義に渡る。そもそもこの世界における冒険者の定義とは国家間を股にかけ存在する『ギルド』と言う組織があり冒険者もその内の一つ分類され冒険者ギルドが存在し現に田舎街アーメントにもギルドはあってよく見学しに行った。

 様々な国家、街にギルドはあり横で繋がっている事から俺が憧れた旅や秘境探検はある意味仕事としての側面も有しており、一口でいえば趣味で稼げるというもの。


 話を戻して、だが冒険者ギルドには大小様々な依頼が舞い込みその中でもあるのが『盗賊の討伐』。要はギルド公認の合法的な殺しで魔物討伐と同系列にあたる。

 俺が飛び出す時に冒険者になりたいと言った時にフレイの姉ちゃんが不快感を示したのはこれだ。要は金でなんでもやる冒険者を良く思ってないというのを風声ステムウィントが教えてくれた。だが


「確かに人殺しは良くない。そりゃ俺だって分かってる。でもなエール、奴らみてぇなクソ野郎共のせいでエール達が迷惑被って追い出されるように引っ越しを余儀なくされるなんて俺は許せねぇんだ」


 これは俺の経験談でもある。いつの世も弱い立場のもんが追われるそれは向こうでもこっちでも変わらない。

 世界は理不尽だ。だが理不尽だからといって諦めても人は生きなければならない。


だから俺はそんな奴らを許せないんだ。だが


「ティフォーネ様やエール達の意向で奴らに関わる前に引っ越すんなら俺はそれに従うよ。俺はあくまで部外者だからな」


 そう、あくまで俺は当事者じゃないしクソ親父関係者には関わりたくない。後で俺の本名でリークする位はしてもいいがなとここまで言い終えた後


「でも、もしもって事もあるからな。だからエール、他の魔物の巣とかも教えてくれ」


「分かった!」


 その後も山を飛び回りロケハンをしっかり行いどう転んでも良いように準備を整える。前世からの癖なんだよ。


 引っ越しまで後2日、何もなければいいんだけどな




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