エールに誘われて
ハーピーの女性エールに誘われハーピー達が暮らすというヴァトラス山にある集落へと向かっていた。
エールの鉤爪を左腕のガントレットに掴んで貰って飛んでいるその途中
「ウィンって15歳なんだ〜、じゃ私がお姉さんだね!」
「エールっていくつなんだ?」
「私こないだで18になったの!」
「へぇ〜」
「んふふ〜、もし良かったらお姉ちゃんって呼んでもいいんだよ〜」
「いやそれはいいや。なんかエールの方が俺より子供っぽいし」
「ちょっと!どういう事!?」
「そういうとこだよ!ってわぁ!?振り回すなー!」
外敵がいない空の上、2人は軽口を叩き合い時には俺が物理的に振り回されながら集落へと向かう。しかし俺は1つ疑問が
「いいのか?奴らがまだいたら場所特定されるぞ?」
それは自分達が飛んでいる所を見られた場合、あの盗賊達はハーピーを探しているようでもしこの状況を見られたら必ず後を追い掛けてくるに違いない。しかしエールは呑気に笑いながら
「大丈夫大丈夫。私達の住んでるとこ周り断崖絶壁だからあんな鎧とか着けてちゃ登れないって」
「本当か?」
「そうだよ、私ハーピーはああゆう奴らに狙われ易くてさ〜だからみんなで集まって暮らしてるんだよ」
そう話すエール、確かにハーピー達の羽は素材として優秀なのとその希少性から以前人間達から狩りの対象として酷い迫害を受けていた。しかしアルバトロス連邦共和国に加盟したことでそれも収まりハーピー達の安息は守られた。
ハーピー族以外の者が来ることが難しいこの山に住んでいるのもその名残だろう。
だが俺は別の事を考える。
(ただの盗賊ならいいんだけど騎士がバックにいるとなるとなぁ)
しかもあのクソ親父のとこだからなぁと胸中で思い俺の懸念は拭えない。
エールが風声と呼んでいた風の声、それによるとあのクソ親父ことリックス・レーマンはあの事件から寝込んでおり業務は停滞。で、飛び出した俺の捜索の指揮を執っているのはあのフレイとかいう騎士の姉ちゃんだ。このヴァトラス山は隣国との国境を跨ぐ位置にあるが故姉ちゃん達の捜索の手は伸びていない。
つまりは俺の顔を知らないクソ親父のとこの騎士になる。
(なんかやらかして左遷された奴か?)
こんな辺鄙なとこにいるのと盗賊に加担してるところを考えて素行は良くない騎士のよう、しかも
(ハーピーに手を出すなんて正気か?そこにマンハイムの騎士がいたとなれば最悪戦争だぞ?)
俺の懸念点はそこだ。
ハーピーを襲う。見方を変えればそれはアルバトロス連邦共和国の国民を侵害することになり宣戦布告とも取られかねない。
というのもマンハイム王国とアルバトロス連邦共和国の国仲はあまりよろしくないことが原因だ。その理由は過去の確執。今でこそ冒険者ギルドを始めとした様々なギルド協会が間に入った事で何とか穏やかに済んでいるがそこにもしハーピー達の1団が壊滅させられでもあれば、そこにマンハイムの騎士が関与していたとなれば侵略行為ととられても不思議ではない。
こう見えても俺新聞とかよく読むんだぞ。コンビニでも売ってたしあんな田舎街にいても新聞あれば情勢はよく分かるし母さんも関心してたしな
…一部の人間の欲望で関係ないヒトが悲しむなんてのは許せねぇ
前世と今世でそんな父親が身近にいた事でどうやら自分はそんな身勝手な人間が心底嫌いになったようだ。何か仕掛けてくるなら対策を取らないとならない。そう考えていると俺はちょうど下にある流れがやけに早い渓流が目についた。
「なあエール。下の川って何処に流れてるんだ?」
「んー?あれは確かあっちの人間の国の方だよ。どーしたの?」
「いや、随分流れが早い川だと思ってさ」
「ちょっと前この辺雨降ってさ、そうすると決まってあの川流れが早くなるから私達は近寄らないようにしてるの」
「へぇ〜」
…川か、それを見ながら俺は思い付いた。
何か悪さが出来そうだと
そもそもあのクソ親父が女に現抜かして部下の管理を疎かにした手前もある
(まぁ最悪この手段取るか)
「死人に口無しって言うしな」
「?どーしたのウィン?」
「ああ、悪い独り言だよ。それよりエール達の住処ってあとどれくらいだ?」
「あそこだよ!」
エールが示したのは切り立つ崖の上にある集落、そしてその集落から飛び立つ2つの影がこちらに向かって来た。どうやら仲間のハーピーのようだ。しかもエールに負けず劣らず美人
「エールお帰り〜」
「その人間なあに?今日のご飯?」
「違うよ。この子はウィンって子で私を助けてくれたの!」
「こんなカッコですいません。初めましてウィントス・ミヤビです」
俺が自己紹介するとハーピーのお姉さん達も挨拶しているときに
(コノコハダイジョウブ)
風声が聞こえて来た。どうやらエール達にも聞こえたようで
「風声かしら?それに今の大丈夫って?」
「このウィントスって子の事ね。風声がそういうなら大丈夫よ。きっと」
「だ〜か〜ら〜!ウィンはそんなんじゃないって〜!」
「だからエール振り回すなー!」
なんやかんやあり俺はハーピー達の集落へと案内された。そして
「ごめんねウィン」
着いた途端に振り回された事で軽く酔いグロッキー状態になるのだった。
「ウィントス横になりますね」
「じゃ、私膝枕してあげる!」
前世今世通算初めての女の子の膝枕は気持ち良かった。