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異世界転生 冒険者になるので探さないで下さい  作者: みえだ
第1章 『風』と『翼』の出会い
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ウィントスの旅路




 レーマン侯爵家で起こった騒動から3日が経過した。あれからレーマン侯爵は体調を崩して寝込んでしまったらしいとの話しと同じくレーマン家に仕える騎士や使用人達が近隣の街で人探しをしているそうだ。


 探し人はレーマン侯爵と同じ暗い茶色の髪をし緑色の瞳を持った中性的な少年。


 しかし彼らの捜索も虚しく時間だけが過ぎ有力な情報も得られなかった。さて、そんな今注目の人ニール・トレイサー改めウィントス・ミヤビは



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「山の中にいる」


 険しい山を登るウィントス・ミヤビ。道無き道を行く彼は慣れたように上へ上へと登って行く。

 彼がいるのはレーマン侯爵の当地領、マンハイム王国と西の隣国である亜人達が共存し統治するアルバトロス連邦共和国にかかるこのヴァトラス山にいた。


 冒険者になりたいウィントスはこのマンハイム王国にいる限りレーマン侯爵の干渉は避けられないと判断、そうなると冒険者になる事も危うくなる可能性を考慮してこの国を出る事を考えた。そうなれば一番候補になるのは隣に位置するエルフや獣人、人間等様々な種族が共存し広大な領土を持つアルバトロス連邦共和国だ。

 だが、馬鹿正直に街道を行き関所に行こうものなら身分証の類も未所持でレーマン侯爵の息子であり捜索されている自分は確実に捕まる。それを避ける為ウィントスは山を登り国を渡ろうとしていた。その道すがら



(ーー)



「サンキュー、今はここか」


 マンハイム王国の地図を広げ印を付ける。


「あの姉ちゃん追手つけやがって、ええと今追手は屋敷のあるグランダースとドレステンとシーニグラートにアーメント、まあ子供の足を考えるとってするとこの辺りを探すよな」


 追手を指揮しているのはレーマン侯爵に仕える騎士団の団長フレイ。地図に印を付けながらウィントスは状況を整理する。


「まずあのクソ親父は寝込んでてその変わりに俺を捜してるのがあの姉ちゃん達、屋敷近辺の街と俺の暮らしてたアーメントを中心に捜索してると、でも残念。俺はもう遥か西だ」


 自身のいるであろう部分と捜索範囲地点を確認してみると無事に捜索範囲外に出ている事に成功していた。

 その理由はウィントスの目覚めた力だ。魔法が自身が手足のように使える様になったウィントスは風にまつわる魔法と相性が良く屋敷を飛び出した時の様に突風に乗って移動を繰り返す事で普通では10日かかる道のりをたった2日で移動することに成功していた。更に風の声を聞く事が出来るウィントスには風に乗って様々な情報が入り向こうの情報も全て筒抜け状態で知ることが出来たのだ。それは勿論


「俺が飛んでたって話しはまだ向こうの耳に入ってないみたいだしこのまま山を超えればもうサヨナラだ」


 これで国を出ればもう二度と国に帰れないだろう。だがウィントスには迷いはない。母さんの墓参りも出来ないかも知れないがそれは命の危険が常に付き纏う冒険者になる以上仕方のない事だ。



(サビシクナイノ?)



「ああ、俺の世界の言葉でこんなのがある『勇敢な人は航海の度に故郷ができる』」



(ナンテイミ?)



「勇気を出して旅をすれば自ずと居場所が出来る。だから旅をすることを躊躇うなって意味だ」


 語り掛けてきた風にそう返事をするウィントス。その表情に陰りはなく堂々たるものだ



(ソレニシテモ、カミニアッテルネ)



「おう!ありがとよ。いや〜やっぱ金髪のほうが落ち着くわ。茶髪ってなんかチャラいイメージあって落ち着かなくてよ」


 そう笑うウィントスの髪の毛は生まれつきの暗い茶髪から明るい金髪へと変わっていた。

 これは前世の頃のことが起因しており中学卒業と同時に建設作業員になった時ヤンチャしてたっていう先輩に


『風見お前金髪似合いそうだな!』


 と、勧められて試しにやってみたら思いの外しっくりきたのと自分自身気に入りその後死ぬまでの12年ずっと金髪にしていた。外人寄りの今の容姿ならと思い1年前に前もって買っといた髪染めを使い先日金髪にしたのだ。日本じゃ髪染めは色々と時間がかかって大変だったが魔法を使いこなしてあっと言う間に終わらせることが出来た。


「この世界は金髪の人間多いし写真なんてもんもないから少し外見変えりゃイケるだろ。それにもうあの時と格好も装備も変えてるし」


 ウィントスの今の姿は民族衣装風の裾に刺繍が入ってるフード付きの半袖ジャケットと左腕に鎧用のガントレット、ニッカポッカ風のボトムスとボトムスの下に鉄製の脚甲にブーツと比較的軽装で腰には幅広の剣を横に収めている。

 後は早くアルバトロス連邦共和国に入って冒険者になるだけと言い腰を上げると



ぐぅ〜〜



 ウィントスの腹が鳴る。


「腹減ったな。そういやもう保存飯ねぇな。装備整えるのに金使い過ぎたからなんかねえかな?」


 辺りを見回し探すウィントス。そこに風が吹いた



(ムコウ、リンゴアル)


「おっ、サンキュー!」


 風を頼りにその場所に向うウィントス。するとそこにはリンゴが実った木を見つけた。


「ラッキー♪いっただきまーす」


 猿のように木に登りあっと言う間に一つリンゴを取り齧り付く。

 リンゴのシャリッとした歯応えと瑞々しい甘みは大変美味でペロリと一つ食べてしまった。


「美味いなこのリンゴ。じゃあもういくつか頂くとしますか、ん?」


 そうリンゴに手を伸ばそうとした時だった。


「…誰か近くにいるな」


 風に乗って何かが騒いでいる声が聞こえるウィントス。いくつかリンゴを取り木から降りて声のした方向へと進むと


「もーう!また絡まったー!誰だー!罠仕掛けたのー!」


 いた。


 どうやら罠に引っ掛かった人物を見つけた。右足に縄が括り付けられて逆さ吊りされていたのは


「女のコだけど、人間じゃないよな?もしかしてハーピーか?」


 逆さ吊りにされていたのは手は鷹の爪と翼を持ち足は膝上からが鳥の足と鉤爪に半身半鳥の女の子、獣人に分類される種類ハーピー族だ。そのハーピーの女の子はウィントスを見つけると


「たすけて〜」


 これがウィントスとこの少女の出会いだった。



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