報酬と興味
「あっ、ウィントスさーん!」
冒険者ギルドへとやって来た俺達に気が付いたギルドの受付をやっているルーサさんに声をかけられた。
冒険者で騒ぎに活気づいてる中でもルーサさんの声がよく通るなぁと関心したがせっかくお呼ばれしたので俺とエールは受付へと足を向ける。
ぴょこんと立てたうさ耳を持つ兎の獣人族のルーサさんは明るい黄色い髪を三つ編みおさげに纏めて遠目から見ても一目で分かると思う。
「こんにちはお二人共!」
「こんにちは!」
「こんにちはルーサさん。こちらは朝受けた依頼の報告書です」
そう言って俺はルーサさんに依頼完了の報告書を渡す。受け取ったルーサさんはふむふむと目を通して
「確認取れました。何時もご苦労様です!」
報告書を纏めながらルーサさんから報酬を受け取る。ルーメン街内の依頼は確かに討伐系の花形依頼と比べれば少ないが実は国防軍絡みは意外と美味いんだよな。
街内の依頼って大体一つ3000G位だけどあの駐屯地の寮の外壁修理20000Gだったからなぁ。20000Gあれば冒険者割り引きで宿一ヶ月取れるしマジで有り難い。手に入った報酬にホクホク顔の俺とエールだったが
「あら?貴方達久しぶりね」
ふと声をかけられる。この声に俺達はピンと来て察したエールと同時に振り向き
「「あっ、ルルカだ」」
まるでチビっ子がまたまた見つけた人文字ネタで有名な某お笑い芸人にやるかのように指を指して返事をしてみたら
「指を指すな!それと呼び捨てやめなさい!」
心地良く突っ込んでくれてこの場に笑いを起こしてくれたのはビキニアーマーなるものにマントを羽織ったその姿は現世に生きる露出狂
「ちょっとウィントス!あんたまたあたしのこと露出狂って呼んだわね!?」
…何で分かったんだ?これにはエールと顔を見合わせてしまった。それを見て
「カマ掛けただけよ、そのリアクションならエールも…!」
オ・ノーレェ!って言ってる場合じゃねぇ!ルルカさんギルドの中で剣に手ぇ掛けやがった!
「それじゃルーサさん、皆さん俺達はこれで。エール!」
「うん!」
「「走れ!」」
俺達は一目散に逃走。ギルドの出口一直線に走りだした。突然の逃走にルルカさんや後から来たコリンさん達は反応出来なかったようでコリンさん達と入れ替わりに外へと出ると
「こら待ちなさい!」
事情を知らないコリンさん達を置いてきぼりにしルルカさんが追いかけてくるも遅ぇ!冒険者ギルドを出るやいやな
「いっくよーウィン!」
「合点承知!」
後ろにいたエールが飛び立って俺の身体に身に着けているフルハーネスを足の鉤爪に引っ掛けてあっと言う間にINTHESKY!
後から出て来たルルカさんが俺達に気付き見上げていたので俺はつい
「とっつぁんあばよ〜!」
「ばいばーい!」
「誰がとっつぁんよ誰がぁ!!あんたら覚えときなさーい!!」
上手く逃げおおせた俺達は空の中で笑い合うとエールの提案でせっかく飛んだついでにティフォーネ様達に会いに行くのだった。
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「プリスキン中隊!帰還!」
アルバトロス連邦共和国はその広大な国土から国を守る為各地に国防方面軍が存在しこのルーメンでは中部戦術大隊が該当する。
中部戦術大隊。
正式名称アルバトロス連邦共和国中部方面防衛軍陸上戦術大隊。
ルーメンに本部を置き近隣領土の守護を担うこの中部大隊はルーメンにそびえるブリティス連峰を始めとした厳しい山々で日夜訓練に励んでおりその成果あってか他の方面軍よりも練度が高く場慣れしたベテランも多い事もあり精鋭が揃っている。
今回遠征から帰って来たプリスキン中隊は特に中部方面防衛軍陸上戦術大隊の中でも生え抜きの精鋭揃いの部隊であり隊長を務める豹獣人のプリスキン・イロィの徹底した集団戦術も相まり華々しい戦果を納めている。
「出迎えて頂き感謝を」
門扉が開くと先頭にいた中隊長のプリスキンと後ろの部下達が軽く頭を下げ駐屯地内へと足を踏み入る。左右にはルーメンに留まっていた主計隊や守備隊の軍人達が敬礼し出迎えており暫しプリスキン中隊が歩を進めると
「ご苦労だった。プリスキン」
出迎えてそう答えたのは黒々と艶のある黒髪に猛々しい立派な角を生やし黒髪と同じ位の漆黒の龍の羽と尾、ドラゴンの鱗を持つ龍人族。
彼こそが中部戦術大隊の司令官にしてルーメンを始めとした中部都市守護を任されたディノ・ドヒュナーだ。
「今回もご苦労だったな。戦果は報告を受けている。暫くはゆっくりしていくといい」
「いえ、これから此度の遠征であるジャバヴォックス討伐に際して命を落とした部下達の遺族へ報告せねばなりません。報告書は後程纏めますのでこれにて失礼致します」
そうプリスキンはディノに頭を下げると側近の部下に何やら指示をし踵を返してルーメンを街へと向かって行った。
責任感が強く冷徹で厳しい男だが人一倍部下思いで人望の厚く人の上に立つというのを理解しているプリスキン。遺族への訃報を伝えに行くプリスキンの後ろ姿を見送りディノは中隊の軍人達に1週間の休暇を与える事を伝えると早々に解散させたのだった。
解散となり寮に戻る者、街に繰り出す者、家族の元に帰る者といる中
「いやぁ、ジャバヴォックスはヤバかったな」
仲間と寮に向かって歩いていた軍人が口を開く。
鮮やかで燃え盛る炎を連想させる明るい赤色の赤メッシュが入った黒髪に朱色の翼や尾、龍の鱗を持つ青年だ。
「何言ってんだよエルク。あんときお前が機転効かせなきゃ俺達は死んでたよ」
そう笑っていう人間族の軍人仲間セスに同じ人間族のディーンと寅の獣人族のルマンが続くように頷き
「全くだ。ジャバヴォックスにばかり気を取られていた本隊に後ろからのワイバーン種の奇襲、エルクが違和感を感じて行動していなければもっと被害が出ていただろう」
「それで殿に入って蹴散らしているからなこいつ、流石は『焔龍』ってか?」
「おいおい、やめてくれよ」
『焔龍』と呼ばれたこの青年こそディノ・ドヒュナーとアドレア・ドヒュナーの息子にして陸上大隊所属プリスキン中隊のエース、エルク・ドヒュナー。その後も彼等は任務終わりの一種の開放的な空気に他愛のない会話をしながら寮へと歩を進め寮に差し掛かった時にディーンが声を上げた。
「ん?なんだ?」
「どうしたディーン」
「いや、ちょっと見ない間に随分寮が綺麗になってるな」
「は?寮が?」
ディーンに吊られエルクの目の前の寮を見やる、遠征前ボロボロで亀裂が入った外壁は1面綺麗に補修されておりとても同じ寮には思えなかった。飲みに行ったセス達と別れ気になったエルクは近くにいた主計部隊の部隊章を付けた女性軍人に尋ねた。
「悪いな主計部隊のお姉さん、ちょっといいか?」
「こ、これはエルクさん!」
「ああ〜、固くなんなくていいよ。寮ってどうしたんだ?」
「あれは今日のお昼前に依頼した冒険者に直して貰ってたんです」
「冒険者に?」
エルクは首を傾げた。以前主計部隊の軍人が丸一日掛けて直したものより明らかに綺麗でどう見てもプロの手によるものだ。その後も聞いていくとどうやら最近ルーメンで冒険者になった新人冒険者らしく
「ハーピーとコンビを組んでるのか、お姉さんその冒険者の名前って分かるかい?」
「えっと、確かトニアが「ウィントス君」って呼んでましたけど…」
「ウィントスね、分かったありがとう」
そう言って女性軍人と別れたエルクはふと空を見上げる。何やら大きな影がブリティス連峰に飛んでいくのを見て
「ウィントスか、興味が出て来たな」
1週間ある休みだ依頼でも出せば会えるかと考えるエルク。その出会いが自身を変えるとも知らずに




