最終試験
来た道からいきなり声がし反射的に身構えた俺とエール。そこにいたのは
「ぜぇぜぇ、間に、あった…」
現れたのは冒険者らしい人間の女性だ。だが
「ウィンー」
「どした?」
「なんでこの人こんなに慌てて来て疲れてるの?」
「ごめんエール。マジで分かんねぇ」
うん、本当に分かんねぇ。ここまで走ってきたのかぜぇぜぇと息を切らし両手を両膝に付かせ額から玉のような汗をかいており頭につけていた装飾品は汗を吸ったのか染みが出来ていた。腰に剣を下げてあることから剣士かなにかと思われる。
しかし、俺には更にわからない事がある。
「なんだ?あの水着みたいなの?」
「ねー、そーゆー趣味なのかな?」
「新手の露出狂か?」
「誰が露出狂よ誰が!」
ぜぇぜぇと息を切らし突っ込む水着みたいなのに鎧みたいな甲冑のプレートを着けた服?水着?の露出狂。俺達2人が困惑していると
「待ってよ〜、ルルカ〜」
この露出狂の人の仲間なのか3人の女性がこの大水晶のある開けた場所にやって来るとこちらも息を切らしており
「はぁはぁ、この子達が、はぁはぁ、今回の?」
「ってか速くない!?もうここまで来たの!?ぜぇぜぇ…」
「しかももう自分達で採取した後だよね…?ふぃぃ…」
…なんか皆さん疲れてグロッキーだ。取り敢えず俺はアイテムボックスから水が入った水筒を出して皆さんに飲んで落ち着いて貰うこと10分後
「で、皆さんはどうしたんですか?」
「私達とおんなじで試験受けに来たの?」
ようやく落ち着いたであろうこの4人組に質問を投げる。すると露出狂さんが水筒を俺に投げ寄越しながら
「私達は貴方達の登録試験の試験官よ」
「「試験官?」」
水筒をキャッチし続きの話しを聞くとルーメンでは冒険者の登録試験の際登録試験の手続きをし希望者に準備をしてもらっている間にギルドでギルド内にいる冒険者に試験官の依頼を出して試験官に新人が冒険者として相応しいかの真偽をするのだそうだ。
その方法は試験官を受け持った冒険者に委ねられるが大体が力試しがてらの手合わせになるそうとのこと。
だが、この露出狂さんの説明を聞くにつれて俺達は感じていた疑問に気がつく
「ねーウィン、もしかしてあの時受付のお姉さんが慌ててたのって」
「完璧に俺達が直ぐに出るなんて思ってなかったんだな…」
俺がそう呟くと目の前の4人組は即座に反応し露出狂さんが
「そうよ!そう!まさか即受諾して飛んでくなんて思ってなかったからギルド大慌てで大変だったのよ!アリッサが泣きながら私達に頼み込んで来たんだからね!」
アリッサと言うのは受付のお姉さんのことらしい。
俺達が飛んでった後ギルドはもうてんやわんや。と言うのも空を飛ぶ魔法『フライト』というのがあるらしいがハーピーのように速く飛ぶ事が出来ないらしく転送魔法以外で俺達に追いつく方法がなかったそうだ。その転送魔法もその時のギルド内でたまたま別の依頼で帰って来た露出狂さんら4人組の1人コリンさんなる人物しかおらず帰って早々急遽依頼を受けて水晶の洞窟入り口まで跳んでここまで猛ダッシュで来たそうだ。
「何なの貴方達!空飛んでマジで10分で着くわ魔物しっかり倒してるわ最短ルートで到達するわ挙句の果てには最適な採取量だわで完璧じゃない!」
まるで糾弾するかのように捲し立てる露出狂さん。息も落ち着いてきたお仲間さん達も
「そもそも即受諾で文字通り飛んでくなんて前代未聞よ…」
「ってかこの子達、歴代でも最速の踏破タイムじゃないの?」
「ルルカも言ったけど採取量完璧なんですけど」
こんな風に口々に言われてしまった。そういう時はこうとエールと決めており俺達は揃って右手をやや後頭部に持っていき
「「いやぁそれほどでも」」
「「「「褒めてないわよ!」」」」
総ツッコみを入れられ笑いが起こり場が和やかになると俺は
「じゃあ皆さん戻りましょうか。行こうエール」
「はーい♪」
そうして出口へ向かおうとした時だ。露出狂さんに回り込まれてしまい
「だからちょっと待ちなさい!」
「「ですよねー」」
そうは問屋が卸さない。まぁここまでのやり取りで大体察しているが一応うんざりしながらも確認してみる。
「あの、露出狂さんなにか?」
つい露出狂と言葉を出したからか露出狂さんは顔を真っ赤にして反論した。
「だから露出狂って呼ぶのやめなさい!」
「だってどっからどう見ても露出狂じゃないっすか。そんな水着みたいなのでよく街ん中歩けますね」
だって、マントも着けてるし手袋とブーツはしっかりしてるものだしでなんか日本の小学校の注意喚起で出てきそうな変質者みたいなんだよなぁ。
俺のどストレートな物言いに露出狂さんより先にコリンさんが反応すると
「まぁ、そうだよね」
「「うんうん」」
コリンさん始めお連れの御三方が俺の意見に肯定するように首を縦に振った。ちなみにコリンさん達はそれぞれ冒険者としてそれ相応の格好である。
「ちょっとぉ!?」
「いや、ウィントス君の言う通りよルルカ。いくら戦闘で激しく動くからってビキニアーマーを街中で平気な顔して着てるのはどうなのよ?」
「だって暑いんだもん」
「「「はぁ…」」」
コリンさん達が盛大に溜息を付いている。ああ、うんざりしてるんだなと少し同情してしまったがここで露出狂さんの物言いの矛先は俺に向けられ
「そもそも貴方!貴方はどう思うのよ!?」
「いや何がっすか?」
「自慢じゃないけど私みたいな美人がこんな格好で歩いてるのよ!?ドキッとしたりまじまじ見ないわけ!?」
「ないけど。だってあんたおっぱいちっちぇし。寧ろ寸胴じゃん」
いや仮によ、もしエールがあんな格好したらドキドキもするし目のやり場にも困る。だってエールデケえしスタイル抜群だから似合うと思うけど、あんな寸胴体型に言われても興奮なんてしないしたつもんもたたん。
そもそも俺にはエールっていう容姿も性格もスタイルもどストライクな娘と一緒なのにそれと比べるちゃうと今まで出会ってきた女性は劣るしまず俺はやたらプライドが高そうな奴は男女問わず好かん。と思った時だ
「ウィン!」
(アブナイ!)
「うおっとぉ!サンキュー」
あっぶねぇ〜。この露出狂の姉ちゃん真剣抜きやがったよ!俺は咄嗟に振り下ろされた剣を白刃取りで剣を抑え
「あぶねぇな、何すんだよ」
わりとギリだったな。俺が冷静に尋ねるのと
「ちょっとウィンに何すんのぺったん露出狂女!」
怒ったエールがダイレクトに暴言を吐く。露出狂さんは表情を見るに完璧にキレてるみたいで後ろのコリンさん達はあわあわとしており目の前の露出狂さんから
「ウィントスくん。言葉はもう少しオブラートに包むのを覚えようか?」
ニコニコと笑いながら剣を押し付けて斬るように力が込めるのを感じ
「何で包もうが中身は一緒ですから意味ありません」
オブラートに包む事も大切だが俺はそうは思わない。だって何で包もうが中身は変わらないのだから回りくどく表現するのは時間がもったいないからだ。俺の言葉で目に怒りを湛え力が入った。だから俺は
「プッ!」
露出狂さんの左目目掛けて唾を吐く。しかもただの唾じゃない。吐いた瞬間に風の魔法を付加し勢いを付けたものだ。
「くっ…!」
唾が左目にクリーンヒットし怯んだ隙に俺は距離をとり腰に下げていた剣を抜くと奴さんも直ぐに態勢を立て直していた。
「そっちがその気ならタイマンと洒落込みましょう。これが最終試験って事でいいですね?」
「いいわよ。私から一本取れたら2人とも合格にしてあげるわ…!ミリツァ!」
「しょうがないわね分かったわよ!」
ミリツァと呼ばれた白いローブの女性が俺と露出狂さんの間にまるでレフェリーのように入ると
「これより冒険者登録試験、戦闘試験を始めます!」
この言葉と同時に俺は懐に飛び込んだ。