暫しの別れとエールの身なり
その後も俺とエールの漫才に近いやり取りを挟み場が和やかになっていると
「アドレア隊長」
そこにやって来たのはミセスアドレアと同じような軍服を来たエルフと人間の女性の二人。
同じようなと言ったのは二人の元とミセスアドレアの軍服は細部で違いがあり特に胸元の階級章らしきものがミセスアドレアのものが立派なもの。それを見比べるにミセスアドレアが後から来た二人の上司に当たるのだろうなと考えていたら
スパーン!
「おうっ!」
「ウィン!アドレアさんのおっぱいばっかり見ないの!」
エールの羽ハリセンを食らってしまった。ってちょ待てよ誤解しとるわエール!
「違う違う、そうじゃない。胸元の階級章を見比べてたんだよ」
思わずテンプレートみたいなのが出てしまったが俺はしっかりとエールに事情を説明する。
「かいきゅーしょー?」
「ほら、ミセスアドレアの胸元のやつ、後から来たお嬢さんらと違うだろ?」
そう言ってエールにもミセスアドレア達の胸元の階級章を見比べて確認してもらい納得して貰えた。
「ホントだ。アドレアさんの綺麗だね」
「だろ?軍服っぽいのも着てるしミセスアドレアは偉い人かと思ってさ」
俺のエールの会話を聞いてミセスアドレアに報告に来たお嬢さん方が関心したように
「この少年、目敏いわね」
「外から来た人はあんまり気付かない人いるのにね」
「これは自己紹介もなく失礼致しました。自分ウィントス・ミヤビと申します。お名前をお伺いしても?」
「ご丁寧に、私はアルバトロス連邦共和国国防軍中部主計隊隊員のトニアと申します」
「同じく国防軍中部主計隊隊員のサラよ」
アルバトロス連邦共和国は多種族が混在する国柄故人間ばかりのマンハイムみたいに騎士というものが定着せず国を守る為の義勇兵を募った事が始まりで規模が大きくなり正規軍となり今に至る。
どうやらミセスアドレア含め彼女達は後方部隊の軍人のようだと分かるとティフォーネ様がミセスアドレアを頼ったのが理解出来た。俺がそうしているとエールは頭に疑問符を浮かべており俺に顔を向けると
「ウィン、しゅけーって何?」
「戦う軍人さん達の食べる物や着る物や住むとこを確保して管理してる人達だよ」
「へぇ、そこまで知ってるなんて関心するわ。でもうちの場合補給も兼ねてるんだけどね」
エルフのトニアさんから補足が入った。しかし
「いやいや、それってかなり激務じゃないですか」
「今はまだましよ。大きな作戦がある時は猫の手も借りたいくらいだから」
「ウィントス君が冒険者になるならひょっとしたら依頼出すかもね」
ミセスアドレアの言葉に俺は反応してしまい
「軍人さんが冒険者に依頼出すんですか?」
「ええ、もっぱら主計隊の手伝いと護衛でね。みんな軍人ではあるけど戦闘に不慣れな人もいるし、長距離の移動だと不足の事態になった時の対応は冒険者の方が慣れてるから」
「成る程」
納得出来るな。こんな大きな国だ恐らく国防軍とやらには適正試験のようなものではっきり分けてしまうのだろうと考えていると
「でも、戦わない軍人さんって変なの」
退屈そうに聞いていたエールが口を挟んでしまった。不用意な発言にこれは不味いと思い俺はフォローを入れる。
「そんな事ないぞエール。国防軍みたいな大きな組織になるとキチンと役割を決めておかないと現場ってのは混乱するもんだ」
「現場?」
「軍人さんで言うなら戦場だな。個人でやろうとするなら何から何まで自分で用意しないといけないんだ。食事やら物資やら寝るとこや休む安全な場所やら進退路やら全部、だからミセスアドレアのような組織の屋台骨をしっかり作ってくれている人がいるから戦う軍人は後ろの憂いなく戦う事が出来るんだ」
ちなみにこれは前世の経験談だ。土方と一口で言っても種類や業種は沢山あり指揮系統が一つ崩れるだけで現場は本当に混乱する。それが基礎工事の段階なら目も当てられず10代の頃苦労したのは今となっては良い思い出だ。
しかし、それは冒険者にも通ずる所があり俺も他人事ではない。
「だからなエール。冒険者になったら自分達で色々とやらなきゃならないんだぞ」
「大丈夫!私考えるの苦手だからウィンに任せる!」
「俺に丸投げかよ!?」
俺の突っ込みに皆笑い出しまた場は和んでいたのだった。
その後の話しはやっぱり俺の推測通りティフォーネ様はミセスアドレアに自分達の住む場所の交渉をしていたらしくティフォーネ様ハーピー達は俺達が超えて来たブリティス連峰に連なる山への移住が認められたようだ。その代わり、山にある『魔力溜まり』と呼ばれる魔物が湧くポイントの監視と魔物の間引き、それがティフォーネ様ハーピー達の仕事になる。
突っ込んで聞くとミセスアドレアは国防軍中部戦術大隊の指揮官である旦那さんの副官で中部主計隊の大隊長、かなりの大物だった。その話しが終わった後に
「ウィントス君、エール、無事を祈ってますよ」
ティフォーネ様始めハーピーの皆さんから別れの挨拶を交わす。少しの間だったとはいえお世話になったし貴重な経験も沢山させて貰えた。なによりも
「任せて下さいティフォーネ様!ウィンには私がいますから!」
エールと出会えた。そのエールはフンスと鼻を鳴らしティフォーネ様に返すが
「全部俺に丸投げする癖に良く言うよ」
「もーう!混ぜっ返さないの!」
プンプンと可愛らしく怒るエールに俺もティフォーネ様達も和んでしまう。また笑いが起こり和やかな雰囲気になりティフォーネ様が最後に
「二人に風の精霊の加護があらんことを」
そうしてティフォーネ様ハーピー達はブリティス連峰へ飛び立って行った。それを見送るとミセスアドレアから声をかけられた。
「さあ、冒険者ギルドに案内する前にまずエールさんの服装を整えましょう」
「え?」
「私の服?」
「ええ、流石に露出が多いからね。エールさんが良くても周りが気を使っちゃうわ」
それを聞いて俺は内心毒されてたんだなと思った。確かにチューブトップとホットパンツだけは流石に野郎共が目のやり場に困る。俺は慣れちゃったけど確かにエールも装備は整えた方がいいよな元々そのつもりだったし
「じゃあ早速行きましょう」
「こちらです」
そうしてトニアさんとサラさんに案内してもらいルーメンで多種族御用達の店へ、女性陣から仲間はずれにされ待つ事30分
「おっ待たせーウィン」
整えたエールの服装は白地で髪の色と同じ明るい緑色の刺繍が入った肩が出てるストラップレスドレス風のものに羽根の人間の腕の境目にアームカバーみたいのがくっついておりふんわりとした青のロングスカートで村娘風の格好だ。飛ぶんだからスカートはどうなんだと突っ込んでみたら
「下に今までの着てるから大丈夫だよ」
全部上から着てるんだ。なんか納得だわ。聞くところあの肩出し服要所要所に防御力アップの付加魔法を掛けられているおり見かけによらず防御力が高いらしい。
…えっ?お金?それは大丈夫あの時の盗賊達のとっから拝借したから。いいよねお金って名前書いてないから
そしてそんなエールの武器は
「ウィンのオススメって言ってたからこれにしたよ〜」
ハーピーの武器と言えば鞭。意義は認めない。