一行、ルーメンに
「やっと、着きましたね」
高いブリティス連峰の山々を越え麓に見えるルーメンへと辿り着いた俺達。
「それにしてもいい風が吹いたわね」
「そうね、山を昇る時に運良く上昇気流に乗れたから助かったわ」
そう口々に話すハーピー達。実はその風、運良く吹いたものではなく俺が風声に頼んで吹かせたもらったものなのは皆知らない。憎きクソ親父がいる国から出してもらい奴の手の届かない所まで連れてきてもらったせめてもの御礼みたいなもんだ。
アルバトロス連邦共和国の内陸部に位置しブリティス連峰を望む山岳都市ルーメン。
北西の方角に位置する連邦評議会がある首都ディレクタス始め要所の貿易拠点の中間地点となる都市は物も人も情報も様々なものが集まる。
本名を隠して活動するに最適な街、本当にエールとの出会いには感謝しかない。そう思っていると
「どーしたのウィン?」
俺をぶら下げて羽ばたいていたエールが尋ねてきた。俺は素直に
「今、エールとの出会いに感謝してたとこだ」
「ん〜にひひ〜♪でしょでしょ?」
そうエールと軽口を叩いているとルーメンの街の入り口で俺達を見て手を振る女性がいたのを見たティフォーネ様は
「あら、アドレアだわ。みんな降りるわよ」
例の件で相談していたというアドレアなる人物を見つけて皆でルーメンの街に降りる事に、突如現れたハーピーの集団に街の住民達は驚いており注目を集めていた。そこに
「ティフォーネ。久しぶりね」
「アドレア。今回は感謝致しますわ」
ティフォーネ様が挨拶した軍服っぽい格好をした女性。艷やかな黒髪に沿うように生えていた二本の角、喉元付近に見える竜鱗、大きな褐色の竜の翼と尻尾、そして美しい美貌と軍服からでも分かるナイスバディに左手薬指に光る指輪。
色々な種族が混在するアルバトロス連邦共和国だが中でも珍しい竜人族と呼ばれる種の女性だった。アドレアさんは穏やかな笑みを浮かべると
「貴女達が無事で良かったわ。マンハイムからの返答も碌なものじゃなかったから心配してたのよ。それでそちらの人間の少年がティフォーネが話していた子かしら?」
アドレアさんと不意に目が合い俺は直ぐ様身なりを整え
「お初にお目に掛かります。ご紹介に預かりましたウィントス・ミヤビと申しますレディ」
スパーン!
「いったい!」
「ウィン今のレディ絶対いらない!」
エールの羽ハリセンの一撃だ。良い音がルーメンの街の入り口に響くと
「何言ってんだ?いきなり名前呼びなんて失礼にも程があるだろ。親しくもないのに」
「私にはなかったよ?」
「いや、あの場面そんなんじゃねぇじゃん。そもそもエール、俺の名前言えなかったし」
「なんですってぇ!」
そこから俺とエールは言い合いになると周りのハーピー達はまた始まったと言わんばかりに笑い出しティフォーネ様は困ったように笑う。そして肝心のアドレアさんは
「あはは!随分仲良しな二人ね。ウィントス君だったかしら?初めましてアドレア・ドヒュナーよ。アドレアで構いません宜しく」
「今の笑顔、花が咲いたように大変素晴らしかったです。ミセスアドレアと及びしても?」
「ウィ〜ン〜!」
「大丈夫だエール!ミセスアドレアは既婚者だから!」
「そーゆー問題じゃないでしょうが!」
そしてまたその場に笑いが起きる。二人は相変わらずである。