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異世界転生 冒険者になるので探さないで下さい  作者: みえだ
第1章 『風』と『翼』の出会い
11/24

崩壊の足音(?サイド)




 ウィントス達がアルバトロス連邦共和国の街ルーメンへと辿り着く少し前のマンハイム王国。レーマン領にある国境の街ジルクの王国騎士団詰め所にての出来事


「此方です」


 1人の騎士にある地下室に案内されていたのはそのレーマン領の騎士とは異なる鎧を纏う騎士達と要人と思われる2人の10代後半の若い男。

 どうやら案内の騎士以外の男達はレーマン領の人間ではないよう、特に要人と思われる男性2人はこんな辛気臭い地下室には似つかない人物達だ。1団は無言のまま目的の部屋へと入る。

 部屋の中は一段と肌寒く異質な空気が籠っておりそこには分厚い布に包まれた何かが整理されて置かれており中に入った1団は手前にあった布の元へ、案内の騎士は布に手をかけ


「これがヴァトラス山の麓の川で先日見つかった遺体になります」


 布を剥ぎ取る。ここはジルクの死体安置室、このように身元が分からない死体を一時的に保管する部屋である。案内の騎士は死体を見ながら続ける。


「此方の騎士、ゴルバの死体は右の脇腹に深く刺された傷があり内蔵にも届いていることからこれが致命傷になったかと思われます」


「死亡推定時刻は分かるか?」


 外部の騎士がレーマン領の騎士に尋ねると彼は申し訳なさそうに首を横に振る。


「いえ、刺された後に川に落ちたようでそれにより死体の損壊状態が悪化し判別が出来ないと医師が。次はこちら」


 案内の騎士は隣の厚布を捲る。


「こちらはゴルバと共に見つかった盗賊の死体になります。死因は腹にある横に深く斬られた傷でしょう」


「斬られた傷、それは剣か?」


「恐らく、そちらのゴルバの剣が発見場所で見当たらない事からこの盗賊が道連れに共に川を落ちたのではないかと」


「そうか…」


 騎士達は案内の騎士と何かを話している間に要人の男達は盗賊の顔をまじまじと見る。明らかに場違いと思われる高貴な装いの2人が互いに聞こえる声で


「こいつは…」

「うそだろ…」


 と、驚きの声を溢す。案内の騎士と話し終わった騎士が2人を不思議そうに見やり


「ディノ様、ファビオ様。盗賊の死体を見てどうなさいました?」


 要人達に話しかける。最初2人は気付かなかったがもう一度声をかけられた時に気が付き


「えっ?ああすまないランスロー。なんかこの盗賊見たことあるなぁ、って…」


「どうやらこの盗賊は以前王都でも騒ぎを起こしていたようで手配書も回り逃げていたようです」


「みたいっすよー、でもこのゴルバって騎士はなんで一緒にいたんすかねー?団長」


「ミルド、ディノ様達の前だぞ」


「いや構わない。続けてくれランスロー」


「分かりましたディノ様。こちらの調べではどうやらヴァトラス山に住んでいたハーピー達から不審な人間が自分達のテリトリーに侵入してると問い合わせがあったそうです」


「ハーピー達?」


「はい、どうやらアルバトロス連邦のハーピー達のようで、アルバトロス連邦にも問い合わせましたがレーマン領の担当者からは『責任者多忙な為現在事実確認をしている』とのみ返された事と報告が上がっています。これは私の推測ですがハーピー達は我々の対応を不審に思い引っ越しをしたのではないかと」


 つまり、そのやり取りと行動を見るにハーピー達は盗賊と騎士が繋がっている場合を危惧したようだ。そして問題が起こる前に一斉に引っ越しをしたと、一連の話しを苦悶の表情を浮かべたディノとファビオだったが


「ですが、どうやら杞憂だったようですね。騎士は命をかけ職務を真っ当し盗賊を討ったのでしょう。アルバトロス連邦には私から返事を用意しますので御2人はご安心ください」


 ランスローにそう促され納得した要人達。そしてファビオが


「最後に、そのハーピー達は何処へ?」


「いえ、申し訳ありませんがそこまでは…」


「そうですか。ありがとうございますランスロー団長」


 こうして1団は死体安置所を後にし取ってある宿へ、要人達を部屋に送り届けて警護の為残る騎士団長ランスローと数人の騎士と別れ持ち場に戻る騎士達は


「しっかし、何でディノ様達は付いて来たんだ?」

「さぁ、ランスロー団長が言うには話しを聞きつけて飛びついたって聞いたけど」

「物好きだよなぁ」

「あんまり大声でいうなよ、誰が聞いているかわからん」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「では、私共は下にいますので何かあれば申し付けください」


「分かりましたランスロー団長。ありがとうございます」


 ランスロー達の後ろ姿を見届け下へと行くのを確認してからファビオは改めて誰もいないことを確認し扉を締め鍵をかけ中にいたディノに焦ったように声をかけた。


「どうなってんだよ『良太』…!あの盗賊ってドゥーエ・カシミリアンだよな!」


「ああ、あの顔の傷跡間違いない…!」


「なんであいつが…!なんでこんなとこで『死んで』るんだよ!最初にこんな『イベント』なかったぞ!」


「分かってる!分かってるから少し落ち着け『良平』」


「落ち着けねぇって『良太』!」


 まるで何か知っているようなこの兄弟はこのマンハイム王国王族の第2王子ディノ・クラトス・マンハイムと第3王子ファビオ・カンタス・マンハイムという双子の兄弟。

 しかしこの2人は前世の記憶がありその名前は門間良太もんまりょうた門間良平もんまりょうへいという双子の兄弟だった。そして


「だけど良平ファビオ良く考えろ。結果的にドゥーエがここでいなくなれば『戦争』は起きない。つまり平和だ」


「それはわかるけどよぉ良太ディノ、じゃあこれからどうなるんだよ…」


 戦争という不穏な言葉が出て来たようにこの2人はここが何処でこの物語を知っている。



 ガーディアンフロント。

 それは彼らの前世である日本で存在した名のあるゲーム。

 主人公であるレーマン侯爵の息子にして新米士官ニール・レーマンがアルバトロス連邦共和国との戦争に身を投じ様々な苦難を乗り越え仲間と祖国マンハイム王国を勝利に導くというタクティクスRPGゲームだ。

 このゲームは仲間に騎士や正規兵以外に義勇兵や冒険者に傭兵果ては敵兵を自陣営に引き込んだりするなど取れる戦略や編成の自由度が幅広くやりこみ要素が深く綺麗グラフィックも重なりそれなりに売れた据え置きゲームである。



 この門間兄弟もそのゲームのユーザーで死ぬ前日までプレイしていた高校生。だからこそこの結果、ドゥーエという盗賊が死んだ事が考えられない


「何でガーディアンフロントが『始まる前』にドゥーエが死んだんだ?ドゥーエが死んだら…」


 少なくとも2人はガーディアンフロントの物語が崩れたのは理解するしかない、実はドゥーエ・カシミリアンという盗賊はガーディアンフロントではある意味重要人物なのだ。



 ドゥーエ・カシミリアン。

 盗賊団「明けの虎」のリーダーでハーピー達を皆殺しにした事でマンハイム王国とアルバトロス連邦共和国との戦争を起こす切っ掛けを作った盗賊。様々な場所で第3陣営の敵として何度も主人公達に立ちはだかり血で血を洗う戦争を激化させるように立ち回り最終的にはその狂気を魔神に気に入られ後に判明する第3陣営こと魔神陣営に組みした男。執念深く傲慢で救いようもない男でプレイヤー達からのアンチも多く戦争が激化する程拍車が掛かる悪役ヒール



 つまり戦争の発端を作った男が退場したことになり、更には犠牲になるはずだったハーピー達は何処へ集団疎開、戦争が始まる理由が無くなってしまったのだ。


「良太、本編開始って確か…」


「…2ヶ月後」


「どうすんだよ、これから」


「…取り敢えず何時までもこうしてる訳にはいかない。取り敢えず『主人公』に接触しよう」


「確かそのイベントって」


「記憶が正しければ1ヶ月後の騎士士官学校の入学式だ」


 何故こうなったかが分からないが一先ず王子もんま兄弟は王城への帰還後1ヶ月後に出会う筈の『主人公』ことニール・レーマンとの接触に臨む準備を始める事に、しかし1ヶ月後、彼らは更に混迷を極める事になるのだった。




 ご拝読誠にありがとうございます!作者のみえだと申します。

 異世界ピアニストを書いている途中ですが書いているとどうしても色々な物語が思い付いてしまい今作を作ってしまった次第で御座います。

 誠に申し訳ありません。

 こちらもリアル事情により頻繁に更新出来ませんが更新されてましたら読んでやるか的なノリで拝読して頂けたら幸いです。


 それでは改めてになりますがご拝読誠にありがとうございました。次章「風と翼、冒険者になる」お楽しみに


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