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異世界転生 冒険者になるので探さないで下さい  作者: みえだ
第1章 『風』と『翼』の出会い
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後始末と引っ越し




「ウィンーーー!!!」


 空から急降下してくるエールに俺は無意識に手を伸ばす。

 前世からの記憶が頭を過ぎったが俺はそれに逆らうように手を伸ばした。

誰も取ってくれなかったこの手を、


今度こそ取ってくれる予感がしたから


 俺が激流に飲み込まれる直前


「間に合っ、たぁ!!」


 伸ばした手を掻っ攫うように掴み一気に上昇、俺ごと引っ張り上げ崖上へ一直線に飛ぶ中俺は川に奴らが落ち激流に呑み込まれるのを見て文字通り九死に一生を得た。しかし


「あいてっ!」


 崖上に着いた途端エールにぺいって投げっぱなしで落とされモロにけつを打ち付けた俺。エールは地に降り立ちスタスタと俺に歩み寄ると



スパーン!



 羽ハリセンで頭をぶっ叩かれた。今までの中でも一番痛い、痛む頭を上げると


「ウィンのバカ!」


 目に涙を溜めてエールが怒っていた。


「なんでこんな事したの!?死んじゃうとこだったんだよ!」


 うん。その通りだ。エールのお陰で助かったがそれは結果論に過ぎない。魔法ってものを便利だと安易に使い過ぎた俺とあの盗賊の執念を失念してた俺の失敗だった。エールはポカポカと俺を叩き


「ウィンのバカ!オタンコナス!スットコドッコイ!てやんでいやろー!」


 考えられるだけ思い付く悪口を口にし泣きながら叩く。それだけ心配してくれてたんだなと思い抵抗出来なく俺はされるがまま叩かれていた。そうしていると


「ウィントスさん、エール」


 ティフォーネ様始めあの集落のハーピー達が次々と俺達の元へ降り立った。


「ウィントスさん無事でしたか」


「はい、エールのお陰で…」


 本当にその通りだからそのまま皆さんに伝えた。すると泣き止んだエールが


「ティフォーネ様決めました!私もウィンと冒険者になります!」


 いきなりの発言で俺は頭の中でパニックになったがエールに抱き寄せられ


「ウィン放っておけません!私がしっかり見てます!」


 俺はいきなりの事と抱き締められた暖かさに頭が働いてないしエールのされるがまま、そしてガバッとエールは俺の肩を抱き


「ウィンが嫌って言っても私は付いてくからね!」


 泣いて赤くした金色の瞳を潤ませて真っ直ぐ俺を見てそう皆さんに宣言する。

 うん。これは断れない。


「分かったよ。ごめんなさいエール」


 俺はエールに謝罪の言葉をかけると


「分かればよろしい」


 目尻に涙を残しながらもエールははにかむように笑うのを見て俺も何処か安心してしまう。このまま終われればよかったがまだやるべき事がある。


「なぁ、コイツラどうすんの?」


 ハーピーのお姉さんファーナさんに訪ねられたのは馬車の荷台に積まれていた麻痺して動けない騎士と盗賊達。そうコイツラの後始末が残っている。麻痺して動けないのを見てティフォーネ様は


「じゃあこうしましょうか」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「みんなーやるわよー」


「「「「「「せーの!」」」」」」


 ハーピー達が空から盗賊達を載せた馬車を投下、馬車は地面に激突するとけたたましい音を立ててバラバラになり中に載せた盗賊達や騎士はまともに動けない状態で酷い衝突を受け死んだのもいれば虫の息の奴もいた。そこに


「ギギッ?!」

「ギッ!」

「ギィッ!」


 不気味な声がしそれが出て来た。ハーピー達が馬車を投棄したのはヴァトラス山でゴブリン達の住処になっている洞窟の前、騒ぎを聞きつけて外に出て来たゴブリン達は目の前の人間えさを見て喜々とした様子で壊れた馬車を持っていた粗末な武器で更に壊し虫の息だった盗賊達に止めを刺しご馳走を手に入れたと言わんばかりの様子で盗賊達を運んで行き馬車の中に残っていた物を物色しているのを空から見て


「これで良いでしょう。私達が見たのは騎士と盗賊の人間同士のいざこざ。盗賊の1人と騎士の1人は川に落ち、残った者達もゴブリンに襲われました。それだけです」


 そうティフォーネ様は俺やエール達に言うと俺達は頷いた。最初俺は自分でやると言ったがエールに羽ハリセンで叩かれて頭を冷やしティフォーネ様に


『これは私達の問題でもありますから、それに私達を食い物にしようとしたのですから彼らにはこの山の自然の一部になって頂きましょう』


 奴らの末路を察し俺は笑っちまった。

 クソ野郎共が文字通りクソになるんだから傑作だ。


 ゴブリン達に襲われ『加工』されているのを俺はエールの鉤爪に左手を掴んでいる状態で見届けて


(明日は我が身として気を引き締めないとな。まっ、あんたら来世があれば真面目に頑張んなよ)


 一歩間違えば明日は我が身。それが冒険者なのだ。その世界に俺も飛び込むんだ。今更迷いはないし


「どーしたのウィン?難しー顔して」


 そんな俺に訪ねて来たエール。俺はエールを見て


「いや、ああなりたくないから気を引き締めただけだよ」


「そっかー。そーだね!」


 分かってるのか分かってないのかはさておき後始末も終わり関わった盗賊と騎士はこの世を去った。後は


「それではみんな。行きましょうルーメンへ」


 ティフォーネ様の鶴の一声を受けてハーピー達はアルバトロス連邦共和国の街ルーメンへ向かって飛び立った。

 これから俺は冒険者になる。それは夢への第一歩だ。まだ見ぬ様々な種族が暮らす国に俺は期待に胸を膨らませて共に飛ぶのだった。



 そして後日俺達は風声ステムウィントからその後の顛末を聞いた所川から流れて来たゴルバとドゥーエの遺体が発見されたが検死結果死因は互いの刃傷もあることから互いに揉み合いになり川へ転落したとして、その後山を調査した所ゴブリンの巣でゴルバの部下3人と盗賊達の遺品が発見され騎士と盗賊の潰し合いの末ゴブリン達に襲われたとして処理されたようだと聞いた。



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