変わった
「ふーっ、ふーっ……」
何故かものすごく必死になって弁明をしていたサクラを落ち着かせる。
結構汗を掻いていたので、浄化をかけて身体を清潔にしておくことにした。
とりあえず、今後しばらくサクラに恋愛系の話はNGだな。
どこが逆鱗か分からず、彼女を怒らせてしまうかもしれないし。
「サクラが……」
「なんだ?」
「サクラが騎士になったのは、やっぱりそういう話が好きだったことと関係あるのか?」
少し話の河岸を変えてみることにした。
サクラの生い立ちについて、結構気になってたんだよな。
普段の会話だと、ここまで切り込んだ話をすることはない。
今がいい機会だろう。
話が真面目な雰囲気になったのを察し、サクラも表情をキリリと整える。
こういう空気が読めるところは、一緒に居て楽だよな。
「そうだな……アルノードは私の母親が側室だということは知っているだろう?」
「ああ、聞いたことがあるな」
「私は侯爵家では長女だが、爵位の継承権においては次女のオウカ、そして長男のティンバーに次いで第三位にあたる。どちらも病気を持っているわけでもないから、もしオウカの継承が無理でもティンバーに継がせればいい。となると私が家に残っているかどうかは、侯爵家にとってそれほど重要ではない」
通常、継承権が後ろの方になっている貴族家の子供たちは家を追い出されることが多い。
けどそれはあくまで普通の貴族ならという話。
アルスノヴァ侯爵家くらいの大貴族になると、家の者を抱えておいた方が便利なことも多い。
名代として派遣させることもできるし、代官だって知らぬ人間に任せるより息子や娘に任せた方が信頼が置けるしな。
けどいくら女性の権利がデザントと比べると強いリンブルであっても、やはり貴族家の女性というのは婚姻政策のために他家に嫁ぐ者が多い。
サクラはそれを嫌い、父親の反対を無視して第一騎士団の入団テストを受けた。
そして合格し、その中でも優れた者として『聖騎士』を名乗ることを許されたのだという。
けれどその話をしている最中のサクラの顔は、どこか暗かった。
それは自分で運命を切り開いた女傑の表情ではない。
「どうしたんだよ、そんなしょぼくれた顔をして」
「いや……すぐ後になって、知りたくない事実が判明したのを思い出したのさ。私が『聖騎士』になれたのは、父の口利きあってのことだった。『聖騎士』の中でも高い序列が手に入ったのも、実力ではなく縁故だった。所詮実家の柵からは出られないのだなと、以前までは諦めていたんだ」
サクラは王国軍の中でも優秀な第一騎士団の『聖騎士』を拝命したが、それは侯爵家と王家との間の交渉あってのことだった。
サクラは騎士団内での地位こそ高いものの、実力は見合っていなかった。
父の強い希望で、サクラは前線に立つことすらほとんどなかった。
サクラは完全に、お飾りの『聖騎士』だったらしい。
それを情けないとは思いつつも、父の好意を無碍にすることもできず、日々を過ごしていたらしい。
「けれど私はそこで……アルノードに出会った。そこで私の、全てが変わったんだ」
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