コイバナ
「好きな人、か……」
「あ、答えにくい質問だったらいいんだ! 無理して言う必要は――」
「いや、別にそういうわけではないんだけどさ」
好きな人……と言われて、誰が頭に思い浮かぶだろうか。
パッと脳裏をよぎるのは『辺境サンゴ』のみんなだけど……サクラが言ってるのって多分、そういうことではないよな。
「少し、自分語りをしてもいいか?」
「ああ、もちろん。そういうものが必要な質問をしたのは私だからな」
「俺が昔孤児だったって話はしたと思うが……」
「……いや、初めて聞いたぞ」
あれ、そうだったか。
最近は出自を気にすることもなくなった。
孤児院出身であることを恥ずかしく思っていた時期もあったが、もうそのへんは乗り越えてる。
言われなければ思い出すこともめったにないくらいにな。
大切なのは、昔より今、そして今より未来だと思っているから。
それにそもそも、俺の持つ力や技術を知りたがる人はいても、俺という人間のことを知りたがる人間なんかほとんどいない。
つまり何が言いたいのかというと、サクラは大分物好きな人間ってことだ。
「まあ俺は孤児だった。だから小さい頃は孤児院に居たんだが……その時には好きな子はいたよ。告白したらフラれたんだけどさ」
「その子は見る目がなかったな。今のアルノードを見れば、逃した魚がどれだけ大きかったかを知って悔やむだろう」
「そこから先は……ぶっちゃけ少し怖いんだよ」
「何がだ?」
「何って……女の子が」
「……」
サクラは俺の方を見て、きょとんとした顔をしてから……急に前屈みになり、プッと笑い出した。
まるで堪えきれなかったみたいに。
全身を震わせながら笑うサクラは、少し落ち着いてから姿勢を戻し、キリッとした顔に戻る。
さっきのを見ているので、全然しまって見えなかった。
「どんな魔物を相手にしても怖れの一つも抱かないアルノードに、まさかそんな弱点があったとは」
「笑うなよ……だからあんまり、人には言いたくなかったんだ」
いい大人が若干女性恐怖症気味だなんて、なかなか言えないじゃないか。
ちなみに女の子は怖いが、『辺境サンゴ』のにいる女子たちは別だぞ。
元は部下と上司だったが、彼女たちはどちらかと言えば妹のような存在だからな。
でもなんだかやりこめられたみたいで嫌だな。
……少し意趣返しでもしてやるか。
「それならサクラの方はどうなんだ?」
「私か?」
「ああ、サクラには好きな人とかいるのか?」
「……いる、ぞ?」
「いや、なんで疑問形?」
サクラ、好きな人いるのか。
それっていったいどういう感覚なんだろう。
なんか会話内容が女の子っぽい気もするが、たまにはこういうのもいいだろう。
ほれ、今度はそっちのターンだ。
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