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上目遣い


「食べてばっかりだな……今日の夜飯、入るか不安になってきた」

「アルノードはいつも私の倍くらい食べるじゃないか。問題ないんじゃないのか?」

「魔導師は身体が資本だからな、多分普通に入る」

「なんだ、それ。初めて聞いたぞ」


 王都の大通りだけあって、どの店も割と品揃えがいい。

 リンブルは今、絶不調だった景気を若干持ち直しつつある。

 期待感のおかげで、街行く人たちの顔色は明るい。

 遠くから来た商人たちも、今のうちに王都に根を張れば旨い汁が吸えるかもしれないと頑張っているようだ。


 どこも見たことのないような物ばかり出しており、俺の財布は実質無限。


 大量に素材や魔道具を売ったせいで、自分でも資産総額がわからないくらいだから、金に糸目をつける必要はない。


 けれどそもそも魔道具みたいな高級品は自分で作った方がいい物が作れるため、結果買う物は食べ物や雑貨ばかりになった。


 とりあえず目に付いた珍しいものは全部食べたから、割と腹がパンパンだ。


 空を見れば、日が傾き始めている。

 夜飯の前に軽く運動でもして、腹を減らした方がいいかもしれない。




 一通り出店を見終えた俺たちは、とりあえず近くにあったベンチに腰掛けていた。

 最初に感じていた気まずさは、一緒に色々な物を食べてるうちに消えていた。


 今ではもう、目を見つめられても急に逸らしたりするようなこともない。

 そりゃちょっとは焦ったりはするけどさ。


「いやぁ、人混みの中を歩くのは疲れるな……」

「王都や東部だと、人口は増加傾向にあるらしい。治安が悪くなるのは考え物だが、経済が活発化する側面もあるのはありがたいな」


 俺は純粋な感想を言っただけだが、サクラはどうやら通りを歩いているだけでも色々と考えることがあったらしい。


 ……サクラもサクラで、結構仕事中毒だよな。


 でもずっと働いてると、マジで気の抜き方を忘れるんだよ。

 彼女の気持ちも、正直痛いほどわかる。


「サクラももうちょい、気を抜いた方がいいんじゃないか?」

「――ふふっ、それをアルノードが言うのか?」

「いやまあたしかに、俺が言えた義理じゃないけどさ……」

「冗談だ、親身になってしてくれた忠告には、しっかりと耳を傾けるとも」


 二人で軽く笑い合い、なんとなく前を向く。


 通りの外れの方では、何やら怪しげな魔道具を売っている露店があった。

 耳を澄ませば、カンカンと槌を叩く音が聞こえてくる。


 王都は活気に満ちている。

 色んなことが、いい傾向へ向かっているおかげだ。

 この活気を作る手伝いができてると考えると、少しだけ誇らしい気分になってくるな。


「アルノードには……」


 サクラはもにょもにょと口を動かすだけで、そこから先の言葉を続けなかった。

 俺がいったいなんだというのか。


 不思議に思っていると、彼女がスッと座る位置を変えた。


 サクラは音もなく、俺の方に近付いてくる。

 ふわりとした、嫌みのない花の香りが鼻腔をくすぐる。


 俺の方を上目遣いで見上げながら、サクラはゆっくりと口を開く。


「アルノードには……好きな人は、いるのか?」

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