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高い


 何故かはわからないが、一度屋敷を出てから通りで待ち合わせをしようということになった。


 一緒に行けば手間が省けて楽だと思うんだが……やはり女の子はわからないことだらけだ。


 待ち合わせの十分ほど前に到着し、とりあえず立っておく。

 飛んでいる蝶々を見てぼーっとしていると、待たせてすまないと後ろから声がかかる。


「俺も今来たところ――」


 そのまま続く言葉は、喉の奥でつっかえた。

 サクラの今の格好は、まるで別人のようだった。

 後ろから見れば、本人だとは気付かないかもしれない。


 フリフリとした、可愛らしいスカート。

 髪は後ろで一纏めにしており、上の長袖は何かの花の柄だ。


 化粧をしているのか、いつもより頬の赤みが少し強い気がする。

 そして元々白かった肌が更に白くなり、陽光全てを反射してしまいそうなほどだ。


「……ど、どうだろうか。や、やっぱり似合っていないよな! 今すぐ着替えを――」

「いや、似合っている……と、思うぞ」


 真っ直ぐ見つめることはできず、視線をさっき蝶がいたあたりに固定させながら言う。

 直截に褒めることができず、目を見て素直にかわいいと言えない俺を笑ってくれ。


 鎧姿や、鎧の下に着ける肌着の格好、食事の際の貴族令嬢らしいドレス。

 どれも似合っていると思うが……今回のかわいらしい格好は、それらとはまた趣の違った良さがある。

 女の子の女の子らしい格好って、異性が見るとドキッとすること多いよな。


「そ、そうか……それなら良かった……」

「ああ……じゃあ、行くか」


 俺たちは朝練をしている時ややご飯を食べる時よりも距離を取りながら歩き出す。

 いつもと雰囲気が違うせいか、どうにもぎこちなくなってしまう。


 いかんいかん、こういう時は男の側がリードするものだと、前に本か何かで呼んだことがある。

 気まずくならないよう、俺の方から積極的に行かなくては。


 ……あれ、でも俺が読んだのはたしかデートの手引き書だったな。

 そういえば、これって……デートになるのか?







 市場を特に何も目的もなく歩いていく。

 ぶらぶらとあてもなく、人の流れに沿って進みいくことは、一人だとなかなかしない。

 俺の場合、買い物に出掛ける場合は何を買うかを決めてから出掛けるからな。


「お、見てくれアルノード。見たことのないお菓子が売っているぞ」

「焼き菓子……か? 少しばかり色が毒々しいが。店主、二つくれ」

「あいよ、お代は銀貨二枚ね!」


 少し高いな……とは思うが、ケチるのも違うだろう。

 とりあえず目に付いた、焼き菓子を二つ買う。


 一方をサクラに手渡すと、彼女は財布を取り出そうとしてきた。


 いらないぞと目で訴えてから、それでもポケットに入れたサクラの手を無理矢理引っこ抜く。

 そこまですると、さすがに観念したようだった。


「――ありがとう、アルノード」

「おう」


 手に持っているまだ温かい焼き菓子は、とても人間が食べるとは思えない色をしている。

 下の方は普通のパウンドケーキなのだが、上に深緑色の何かがかけられている。


 一体何を入れたら、こんな色味になるんだろうか。

 砂糖は安くはないとはいえ、一つ銀貨一枚は結構ぼったくり価格だ。

 目を引かせることに全力を注いだ結果、この苔みたいな色合いにたどり着いたのだろうか。

 人間の業とは、なんと深いものなのだろう。


「もぐもぐ……うん、普通だな」

「当たり前だが、うちのパティシエが作ったケーキの方が美味しいな」

「侯爵家の料理人と比べるのは酷だろ。にしてもこれ、甘ったるいな……どこかで飲み物買ってこよう」


 そのまま飲み物を買いに行くと、今度はサクラが奢ってくれた。

 サクラってこういうところ、しっかりしてるよな。


 俺の知り合いは大抵金銭管理がザルだ。

 なんだか新鮮な感じがするな。

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