いいぞ
「今日は王都の大通りで市をやっているんだ、もしよければ一緒に行かないか?」
「ん、いいぞ」
ペコペコの腹を満たしてやるために飯をひたすらかっこんでいると、サクラにお出かけのお誘いを受けた。
断る理由もないので、即決。
速攻で答えを返し、再度食事に戻る。
そんな俺たちの様子を見て、オウカが笑っている。
「この屋敷に来てから、アルノード殿はずいぶんサクラ姉様と仲良くなりましたね」
「そうか? ……まあ、そうだな。距離は大分近くなった気がする」
一緒に出掛けることと、そのために少し仕事を詰めなくちゃいけないことに、特に抵抗を覚えなくなったくらいには。
思えば、俺って成人してから割と働きづめだった。
バルクスに入ってからは、ある程度睡眠時間も削って戦い続けてたし……バルクスでゆっくりできるっていうのは、ちゃんと睡眠が取れるくらいの意味だったし。
休みになり戦わずによくなった場合も、みんなのマジックウェポンの補修とか、貴族特有のめんどくさい社交事情だったりとか、そういう理由でまったく自由な時間はなかった。
あれ、てかもしかして……俺ってこんな風にゆとりある生活をするのって、初めてなのか?
……今までがゆとりがなかったかと言われると、違うとは思う。
でもこれだけまったりとした時間が流れてるのは、俺の人生史上初な気がする。
ただ朝から夜まで魔道具作りをしてるだけでいいとか、なんてホワイトな環境なんだ。
これがスローライフってやつなのかもしれない。
……いや、さすがに違うか。
「でもサクラも強くなったよな」
「そうか? アルノードと戦っていても別に実感はないが……」
「いやいや、前とは全然違うぞ」
サクラの気の練り方は以前よりもずっと上手くなっている。
多分今なら、前に俺が倒した強盗の……えっと、名前はなんて言ったっけ……そう、ゲイリーだ。
今のサクラならあのゲイリーを相手にしても、対等以上にやり合えると思う。
それに強者との戦いが、気力操作の上達には一番効率がいい。
生体エネルギーである気力は、割と使用者の命の危機や危険なんかに直結している部分がある。
俺と戦うことで、以前よりサクラはずっと強くなっている。
……今思うと、こうやっていれば団員を強くすることもできるんだよな。
魔物と戦うことに意識を向けすぎていた気がする。
今度から、ちゃんと模擬戦や対人戦を訓練内容に組み込む必要があるな。
「なんだ、アルノード。また仕事のことでも考えているのか?」
「ああ、もちろん。それ以外に何を考えるというのか」
「わかってる。アルノードがそういう奴だって」
俺のことがよくわかってきたみたいじゃないか。
……この仕事人間っぷりは、絶対に改善した方がいいよな。
何か、没頭できる趣味でも見つけてみようかなぁ……。
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