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一日の終わり、新たな始まり

日間ハイファンタジー15位になりました!

応援ありがとうございます!

「はい、では合わせて金貨八枚になります」


 今俺の前には、オーガ討伐の報酬が置かれている。

 さっと布袋の中に入れると、ずっしりとした重みを感じた。


 討伐報酬と処理済みのオーガのいくつかの部位をまとめると、大体オーガ一頭あたり銀貨三枚くらいの値段になった。

 今日は合わせて三十体くらいのオーガを倒したが、いくつか処理が甘かったものがあり、その分査定額が引かれて金貨八枚という次第。


 危険なくできる仕事の中では、大分割もいい方だろう。

 後で魔道具の触媒になる魔石とレバーだけはもうちょい加工して魔道具屋にでも卸すつもりなので、しめてギリ白金貨一枚に届かないくらいの稼ぎだろうか。

 一日でこれだけ稼げるなら、この街で暮らしていくことは問題なくできそうだ。


 受付を終えギルドから出ようとすると、後ろに並んでいた冒険者たちの視線が気になった。 今朝とは違い、彼らが見ているのはエンヴィーたちではなく俺だ。

 大量のオーガを狩ることは、熟練の冒険者であっても難しい。

 普通オーガというのは、泊まり込みで群れていない個体を探して狩る場合が多いからだ。

 群れを成しているオーガを蹴散らすには、金級レベルの実力が必要になるからな。




「それでは第三十五辺境大隊の再出発を祝って、乾杯!」

「かんぱい」

「乾杯!」


 宿の食事処で、コップを打ち鳴らして酒を呷る。

 労働の対価に酒を求めるようになるのは、大人になった証拠だ。

 俺も歳を取ったもんだ。

 前は苦くてマズいと、酒を敬遠してたというのに。


「このままなら余裕で暮らしていけそうですね~」

「冒険者としての、私たちの実力は高い」

「だな、お前らなら十分やっていける」


 エンヴィーたちはなかなかに上機嫌だった。

 彼女たちからすればオーガはそれほど満足できるような相手ではなかった。

 だが久方ぶりに俺と一緒に魔物討伐に精を出したことによる満足感と、思っていたより多く金が稼げたことによる達成感がそうさせているらしい。


「何か入り用なら遠慮なく言えよ。必要な物なら、経費として出すからな。あとこれが、当面の小遣いな」


 今回パーティーを組むにあたって、俺は彼女たちと改めて雇用契約を結ぶことにした。

 といっても、それほど厳密に決めたわけじゃないけど。

 でも一応、一緒に生活していくにあたって金銭の管理は必要だ。

 金の切れ目は縁の切れ目だしな。


 とりあえず財布の管理は俺がすることにした。

 魔物討伐のための準備や魔道具や各種装備品の整備は俺がやるし、彼女たちはおおらかな属州出身者なせいかそっちの面では大分ずぼらだ。

 なので必要な金銭が生じた場合、それを財布から出すという形式を取らせてもらうことにした。


 銀貨五枚ほどを給料……というか何かあったときのための予備として渡しておく。

 エンヴィーたちはそれを、前に俺が渡した巾着袋へとしまっていた。


 ……俺が公務の手慰みに作った小銭入れ、まだ持ってくれてるのか。

 二人ともずいぶんと物持ちがいいんだな。


「とりあえず金の問題はなんとかなりそうだ。オーガも数十匹程度なら問題なく倒せることがわかったし、狩り場を変えれば数を減らすこともなく安定して稼げるだろう」


 俺たちはまだしばらくのうちは、節約しなくちゃいけない。

 何人か新たに大隊のメンバーが来たりすれば、出費もかさむだろうし。

 最終的に六百人もの人間の面倒を見るなら、金なんかいくらあっても足りないからな。


 一応腹案としては、いずれは稼ぎを五等分するような形にしたいと考えている。

 具体的には俺に二、エンヴィーとマリアベルにそれぞれ一、そしてパーティーの余剰資金として一を溜めるという形だ。

 俺の取り分が多いのは、素材を加工する手間を加味した結果である。

 これくらいの配分でも、何もせず全部ギルドに売るより彼女たちの得る金額は多くなる。

 そして俺を別の誰かに置き換えてもパーティーが回るようになれば、それが理想だ。


 魔物の加工方法を教えた奴らも何人かいるので、そいつらを教師にして同じことができる者たちを増やし、いずれは大隊を小分けにした中隊、更にそれを分けた小隊ごとに黒字が出せるようになるのが目標だ。

 彼女たちが俺の手から離れても問題なく稼げるようになれば、俺としても万が一の心配をしなくてもよくなるし。


「しばらくはガードナーにいるんですか? もっといい場所もあるかもしれませんけど」

「ここは王国とかなり近いからな。大隊の中にはシュウみたいな戦闘要員じゃない奴らもそこそこいるし、ある程度の数が揃うまではここでと考えてるが」

「何人か呼んどきます? 手紙出せるそうですけど」

「そうだな……とりあえずもう四人呼べるか? 大人しめな奴らで頼むぞ。あと一人は、俺が魔道具作りの手ほどきをした奴も入れてくれ」

「ほいほーい」


 まだ一日しか試してはいないが、大隊のみんななら実力的にはそれほど問題はなさそうだ。

 冒険者としても問題なくやっていけるだろう……少なくとも、実力的には。

 手綱を取ってやらないと、強敵に突っ込んで死にかねない奴らが多いんだよな……あいつら、バルクスでちゃんとやれてるだろうか。

 一応結構な量の魔道具は残してきたから、下手なことにはなってないとは思うが……。


「マリアベルは今日一日、どうだった?」

「冒険者……あんまり強いのいない。エンヴィーの方が、まだマシ」

「それってどういう意味よ! いいわ、決闘しましょう。表に出なさい!」

「どうどう」


 何かあるとすぐ試合おうとするエンヴィーをなだめながら、俺もマリアベルの意見に内心で同意していた。

 少なくともこの街の中で会った者の中に、二人クラスの実力者はいなかった。


 『サーチ&デストロイ君三号』で冒険者たちの魔力量も見てみたが、俺が唸るような者はいなかったし。

 『気力ミルミル』で気力量、つまりはその人間の持つ生体エネルギー量を確認した感じでは、大隊のメンバーは大体金級相当くらいの力はありそうだった。


 となれば単純計算で、大隊のみんなを呼べば金級六百人分の武装集団がやってくることになる。

 だがそうなると……。


「大隊全員を養っていくには、この街だと小さすぎるんだよな」


 俺抜きのパーティーでもやれるかを確認する意味も込めて、大隊から何人か人員を募るのは問題ない。

 手紙が届いてこちらに来てもらった時には、今よりはずっと余裕を持てているはずだし。


 ただどうやらこの街周辺の狩り場では、出てくる魔物の数も質もそれほど高くはない。

 二十~三十人ならなんとかなるだろうが、あまりたくさん来られても完全に戦力過剰だ。

 日々の生活のためだけに、魔物を狩り尽くしかねない。


 そもそも金級六百人の戦力なんて、基本的にどこへ行ったって過剰だろう。

 戦争でもおっぱじめるなら話は別だけど。


 まぁとりあえず、目標は当初と変わらない。

 金級にさっさとなって、大隊のみんなを呼べるだけ呼ぶ。

 そしてクランとしての名声を高めて、王国の中で存在感を高めていく。


 いざという時に切り捨てられたりしないよう、立ち回っていかなくちゃいけない。

 そうすると早い段階で、この街を治める貴族とも渡りをつけといた方がいいかもしれないな。

 元『七師』の威光が他国でどこまで通じるかはわからんが、あまり期待せずにやってみようじゃないか。

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