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模擬戦


「はああぁっ!」


 サクラが木剣を構えたまま、前に出てくる。

 足を大きく上げ、とにかく勢いをつけた突進だ。

 力を込められるよう、剣を水平にし、利き手の右側に寄せる。


「シッ!」


 そのまま両腕に溜めた力を解放し、突きを放つ。

 狙いは胴体、とにかく攻撃を当てようとする動きだ。


 俺は構えた木剣を下げ……思い切りかちあげる。

 そしてサクラの木剣の中央部に当て、攻撃の軌道を逸らす。

 少し左にズレるだけで、簡単に避けることができた。


 サクラは妨害を物ともせず、そのまま飛び上がる。

 そして自分の体重を乗せることで、剣を強引に制動させて振り下ろす。


 けど地面から足を離すのは悪手だ。

 振り下ろしの軌道を読み切り、横に逸れてから思い切りサクラの腹を蹴り上げる。


「ぐうっ!?」


 勢いよく数メートルは飛んだサクラが体勢を立て直そうとする動きを、俺は許さない。

 身体強化で上げた腕力を振るい、連続で突きを繰り返す。

 速度の上がった突きは、同時と見まがうほどの圧力でサクラを襲う。


 突いて引く、引いて突く。

 そしてその行程を、何度も何度も繰り返す。

 動きが最適化され、更に速度を上げていく。


 サクラが迎撃態勢を取るよりも、俺が彼女を削りきる方が早い。

 明らかに防御姿勢を取るのが遅くなったと判断したところで、俺は彼女の木剣を思い切り弾き飛ばした。


 ふぅ、と熱い息を一つ。

 ずいぶんと熱が入っていたせいで、少し息が上がっている。


 全身に攻撃を食らっているサクラは、ふらふらと立ち上がり笑う。

 決してへこたれないサクラの心根の強さに頷き、回復魔法をかけてやる。


 女の子の珠の肌に傷が残ってはいけないしな。

 ……まあ、つけたの俺なんだけどさ。


「相変わらずアルノードには一撃も入れられないな」

「手を抜くのも違うし、今はまだ攻撃を受けるつもりはないかな」

「やはり、私がもっと身体能力を上げなければ……自分より上手の人間と当たったらどうしようもないな」


 俺がサクラ相手に手加減をしないのは、時には理不尽と戦う必要があるということを、彼女に教えるためでもある。

 格上相手の戦い方を覚えておかないと、強敵と戦う時に詰みかねないからな。


 そしてそれは、俺も例外ではない。

 気力の扱いや魔力の扱いで人に早々遅れを取るつもりはないが、世の中には達人と呼ばれるその道のプロフェッショナルが存在する。


 俺は以前デザントの剣術指南役の、剣聖と呼ばれている男と模擬戦をしたことがあるが、その時は指一本触れることもできずに負けた。


 なんでも俺の身体能力がどれだけ高かろうが、視線や身体の動きから次の動作を予測すれば対応できるということらしい。

 正直もう、意味の分からない世界だ。


 俺が彼を倒すなら、とにかく彼より高い身体能力で距離を取りながら、魔法で削り続けるしかない。

 逆にそれさえできれば、相手が剣聖だろうがなんだろうが完封できる。


 こんな風に、戦いというものはいかに自分の強みを出して、相手の強みを出させないかみたいなところがある。


 だから今ではどんな魔物ともやり合えるようになったからとはいえ、決して慢心してはいけないのだ。

 戦闘技能の向上に終わりはないからな。


 それに魔道具造りも一段落つき、俺の手から離れても問題なく稼働するようになった現状、俺もそろそろアレに取りかからなければ。


「もう一本、お願いする」

「もちろん、何度でも」


 未だ食い下がり続けるサクラを傷つけては治しながら、俺たちの朝練は続く。


 ……今ふと我に返ったんだけど、俺キレた侯爵に殺されたりしないよな?

 あとでサクラに、内緒にしてくれるよう約束しよ……。

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