王女アイシア 2
【side アイシア・ツゥ・リンブル】
私が描いた王位継承までの絵図は、ほとんど完成していた。
あとはいくつかのピースだけを埋めるだけで完了するはずだったのだ。
私が地方分派を大きくした方法は、単純でそれゆえに切り崩しにくいものだった。
まず最初に、地方貴族に周囲の貴族たちを取り込ませ、地方分派自体を大きくしていく。
そして彼らの懐柔が上手くいかなかったり、そもそも統制できる範囲外にいる貴族家には鼻薬をかがせたり、硬軟織り交ぜた交渉を行って傘下に入れていく。
元豪族でお金を沢山持っている地方貴族と、私の即位を手伝ってくれるデザント。
二つのパトロンを持っている私は、こういう単純で資金力という強みを発揮できる方法を選んだ。
実際問題、王党派や中立派の人間を何人も寝返らせることができている。
中立派のノヴィエはただ勝ち馬に乗りたいだけの小娘だから、私のライバルは実質ソルド一人。
そしてそのライバルは、勝手に自分から崩落に巻き込まれていった。
ソルドがリーダーを務める王党派の人間は、東部に土地を持つ貴族が多い。
そしてそんな東部貴族たちは、勝手に力を失っていった。
そう……魔の森からやってくる凶悪な魔物たちの手によって。
魔物による領土の蹂躙は、王党派の貴族たちへ直撃した。
領地を奪われ土地持ち貴族にもかかわらず税収が取れなくなってしまった者。
自領の平民を他領へ難民として移すために、いくつもの条件を呑まされた者。
最後まで領地を守ると無駄な意地を張り、無様に魔物に食い殺された者。
王党派の貴族の数自体もかなり減ったし、彼らが王都へ及ぼせる影響は日々減少し続けていた。
けれど、この潮流はとある一つの出来事のせいで、土台からひっくり返ってしまった。
このまま行けば父であるフリードリヒ四世が死ぬ前に決着がつく……そんな風に高笑いしていた少し前までの自分を、ぶん殴ってやりたい気分だ。
――向こうに、デザント最強の魔導師である『七師』がついたのだ。
デザント側がこちらに内戦を起こさせる一手かとも思ったが、どうやらそうではないらしい。
彼の人物――アルノードは既にデザントを放逐されているのだという。
そして流れの冒険者としてリンブルに居たところを、王党派に見込まれたのだという。
たかが一人の人物が王党派に入っただけじゃないの。
最初は私も、そんな風に思っていた。
(アルノードが冒険者クランを作っているという話も聞いていたけど……それでも冒険者集団が一つ味方についただけ。それだけで現状が変わるほど、私が築いてきた体制は弱くない)
私はわずかに不安を抱えながらも、派閥工作を続けた。
そして……私の悪い予感は、見事に的中することになる。
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