白鳳
「どうですかね、一応原種ワイバーンの素材で統一するつもりです」
「付ける効果は『斬撃軽減』と『魔法軽減』と『回復』の予定ですね。一着お試しで作ってありますので、確認してください」
白鳳騎士団の下へやって来た俺たちは、事前に用意しておいた一着の鎧を出した。
黒っぽい紫の鱗を削って作っているので、見た目がずいぶんと禍々しい。
鱗を重ねているので、紫の要素が消えてほとんど真っ黒に見える。
「うちは白鳳騎士団だが……黒いな」
「黒鳳騎士団になっちゃいますね」
騎士団の中の代表者であるカーネルさんが、鎧をためつすがめつ確認する。
それについてきている騎士は、キースさんというらしい。
ちなみにカーネルさんが団長で、キースさんは騎士団のエースらしい。
とりあえず武具を揃える相談を、この二人にしてみようということになった。
来る前にみんなと相談して結構悩んだんだが、俺たちは原種ワイバーンと呼ばれる下位龍の中では強い方の魔物の鱗を使ったスケイルメイルを使うことにした。
昔一度原種ワイバーンの群れがトイトブルクにやってきたとき、俺が単身で相手をしたことがある。
中位龍で装備を揃えているため、『辺境サンゴ』メンバーの装備の更新には使えず、在庫が余っているのだ。
ワイバーン素材なので耐久は折り紙付き。
付与魔法で各種ダメージ軽減も付いているので、ちょっとやそっとの攻撃なら効かないはずだ。
「試してみても?」
「どうぞ」
カーネルさんが腰に差していた剣を抜き放ち、鎧に切りつける。
中々良く気力が練られている、使っている剣は……ミスリルか。
剣は鎧とぶつかり……そして抵抗を受けすぐに止まった。
見れば擦れた痕はあるが、切れ込みは入っておらず目に見える傷もない。
「これはすごいな……」
「団長、こんなものがあれっぽっちの値段で買えていいんでしょうか?」
「これも殿下の人徳のおかげだ」
この鎧で問題ないという話がまとまり、団員たちが呼び出されてぞろぞろとやって来る。
ソルド殿下が集めた王都にいる腕利きの鎧職人たちと生産組の面々が採寸を始める。
既に鎧職人や皮革業者とジィラックたち『辺境サンゴ』のメンバーの顔合わせは済ませているため、動きもかなりスムーズだ。
防具の次は得物だが、これは直剣がいいという話になった。
今使っているミスリル製の剣が使い心地がいいということなので、俺がそれぞれの剣に付与をしていくことになった。
なんでも鎧が黒いのは構わないが、騎士団が魔物の牙や角で作った剣を持つのは外聞がよろしくないということだ。
そういうもんだと割り切って、ちょちょいと付与魔法で効果を付けていく。
あり物に付与するだけなので、あまり強い効果は付けられないが、その分ほとんど時間はかからない。
白鳳騎士団はほとんど全員が気力使いなので、魔法とかち合ってしまわないよう身体強化系の魔法は避ける。
とりあえず『斬撃強化』と『頑健』だけ付けておくことにした。
より強力な魔法効果の付与されたミスリル剣を作るなら、一度溶かしてからしっかり内側に魔力回路を彫り込み、ミスリルに負けないような素材で作った魔力触媒を使わなければならないが……そこまでするとコストと時間が掛かりすぎる。
ミスリルやオリハルコンの精錬と変形には専用の炉を作らなくちゃいけないからな。
白鳳騎士団の装備更新に目処がついたところで、ソルド殿下からの遣いがやってくる。
どうやらソルド殿下の父である現王フリードリヒ四世が俺に会いたがっているらしい。
王との謁見はずいぶんと久しぶりな気がする。
前にいつ着たか忘れたが、一張羅を引っ張り出してこなくちゃいけないな。
【しんこからのお願い】
この小説を読んで
「面白い!」
「続きが気になる!」
「王様との謁見頑張って!」
と少しでも思ったら、↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
あなたの応援が、しんこの更新の原動力になります!
よろしくお願いします!




