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大変


 リンブル兵は全体が東部の防衛に回せているわけじゃない。

 例えば最精鋭であるソルド殿下が抱えている白鳳騎士団なんかは、未だ王都に釘付けだ。


 その理由は……政治的なものだ。

 ソルド殿下率いる王党派が王都で影響力を持つためには、戦力を王都付近に展開させておく必要がある。

 地方分派や中立派に、要らぬ邪心を抱かせぬためにだ。

 ソルド殿下が全力で東部を奪還しに戦力を差し向ければ、クーデターの一つも起きる可能性がある。

 どうやらリンブルの中央は、結構きな臭いことになっているらしい。

 政治のせいで効率的な戦力配分ができないというどの国にもある非効率が、リンブルにもあるのだ。




 殿下の随行員として、俺たちは特にチェックを受けることなく王都に入ることができた。

 今回の面子は俺とシュウ、ダックにジィラック、それからその下についている生産組だ。

 戦闘能力は自衛が限度なので、いざとなれば俺がなんとかするしかなさそうだ。

 そんな事態にならないことを祈るばかりである。

 街へ入ると、活気のある大声がそこかしこから聞こえてきた。


「不穏な感じはまったくしないですね」

「はは、当たり前だ。上がゴタゴタしていても、平民というのは力強く毎日を生きている」


 リンブルの王都リンブリア……思っていたよりずっと活気のある街だな。

 露店の人間は商魂たくましく人を呼び集めているし、そこら中に客引きの人間がいる。

 食事処と屋台の出す匂いが混じり合って甘辛いタレのような香りが鼻を刺激し、思わず唾が出そうになった。


 ソルド殿下が東部から帰還したということで、たくさんの人たちが物見にやってきている。 こうやって見ていると、殿下の民からの人気は中々高いようだ。

 殿下の方も、気安く手を振ったりしている。


 貴族が通る時は顔を上げれば即死罪なデサントとは大分違うな。

 貴族と平民との間がずいぶんと近い。


「これ、貴族の権威的なやつは大丈夫なんでしょうか」

「平民と貴族ではそもそもの戦闘能力が違うからな。魔力を御しきれず気力の使い方を知らない平民は、数打ちの剣で人を真っ二つにできる騎士には逆らわないとも」

「なるほど……」

「そもそもそんなことにならぬよう、税金も比較的抑えている。デザントでいうところの王国区と同盟区の中間くらいだな」


 リンブルに属州制度はないが、よくそれでやっていけるものだと感心する。

 デザントは属州から絞り上げることができる分、王国民が楽をできる仕組みになっている。 だがリンブルには搾り取れる者たちがいない。


 その差はなんだろうと思い、そういえばリンブルは肥沃な土地が多いことを思い出す。

 収穫量自体がかなり多いため、そこまで税金を引き上げずとも平民も貴族も困らないようになっているんだろう。


 ここが属州になれば、まず間違いなくデザントの一大穀倉地帯になるだろう。

 補給体勢が今より盤石になれば、それこそデザントの一強状態はさらにひどくなる。


「負けられませんね」

「そのためにわざわざ王都くんだりまで来てもらったのだ。色々と動いてもらうぞ、アルノード」

「御意に」


 俺たち一行は殿下が抱える白鳳騎士団の武具を揃えるためにやってきた。

 だがもちろん、それだけのために王都まで足を運んだわけではない。


 俺はこっちに来てからも、沢山やらなければいけないことがあるのだ。

 ……上に立つって大変だよな、ホント。

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