王都へ
しばらくの間、俺は『辺境サンゴ』とは離れて魔道具造りに勤しむことにした。
俺とシュウという魔道具造りのツートップがいないせいで、そもそもの魔道具の供給に限界がきはじめていたからだ。
俺が必要になるような強敵の反応がないことも大きい。
トイトブルク大森林からやって来る魔物は、セリアのアンデッドと悪魔だけでもほとんど打ち漏らしがない程度のモンスターしかいないからな。
ちなみに掃討作戦も順調に進んでおり、今は『辺境サンゴ』とリンブルの精鋭兵たちで領地の奪還を行うための用意も進んでいる。
魔道具造りの方は、俺が参加したことによって一気に進んだ。
でき次第逐次投入するというやり方なので多少の問題は起こったが、まぁ十分に対処は可能だった。
装備にバラつきがあったり、使用法が完全に理解されず暴発事故が起きたり、不発だったせいで魔物のかみつきを食らったり。
こういう上が決めた変更の割を食うことになるのは普通は現場だが、今回は違う。
上がってくる陳情に、あまり悲観的なものはなかった。
いきなり強力な武器がタダで支給されるのだから、嫌がる兵士はほとんどいなかったようだ。
頭が固い奴らもいたようだが、その有用性を目にすれば何も言えなかったようである。
『魔力筒』の安定供給が可能になったので、俺は魔道具班から一旦離れ、リンブルの精鋭兵達用の装備を作ることに決めた。
『魔力筒』による防衛戦力の確保が済んだら、次に行うべきなのはリンブルの兵士たちの強化だ。
リンブルの兵士にはある程度戦える者達も多いので、その戦力を浮かせておくのはもったいないからである。
危険だった魔物は俺が率いていた頃にあらかた蹴散らしておいていたので、今ならば街の外に出没する魔物たち相手なら問題なく対応できる。
ただ、やはりトイトブルクに近付けば近付くほど魔物は強くなっていく。
トイトブルクからやって来て、罠とアンデッドたちによる警戒網を突破してきた魔物を直接屠れるほど、リンブルの兵士たちは強くない。
それを行えるのは、まだ『辺境サンゴ』だけだ。
もちろん、広い国土を『辺境サンゴ』の六百人足らずの人員で守り切ることはできない。
街が魔物から襲われないように周辺の強力な魔物を狩るのと、最前線でマズい魔物が人里に出てしまうまでに討伐するので精一杯だ。
なのでなんとかして戦える人員を増やす必要がある。
リンブルの精鋭兵たちにしっかりとした装備を行き渡らせ、街を守るだけでなく魔物によって占領されている地域へ向かい、魔物たちを狩れるところまでいってもらう。
それができたら、次に『辺境サンゴ』が対応している凶悪な魔物の討伐をできるようになってもらい、そこまで行ったら俺たちのお役御免だ。
道のりは未だ長い。
が、終わりが見えている分気が楽だ。
バルクス防衛のようないつ終わるかもわからないことをやるより、ゴールが見えていることをやる方がよっぽど気持ちが楽である。
俺は、まずは精鋭兵たち用のマジックウェポンの作成に取りかかることにした――。
ただ『魔力筒』のような単純な魔道具ではない、複雑なものを作るとなると俺だけでは難しい。
そもそも俺にできるのは付与魔法で魔法効果を付けることだけだ。
革をなめして鎧にしたり、金属を溶かして直剣を作ったりすることは俺の担当外である。
ただ幸いにも、『辺境サンゴ』には俺の無茶を聞いてくれるありがたいメンバーがいる。
鍛冶担当のダックと皮革担当のジィラック、そしてそれを手伝うサポートメンバー(この中には俺も含まれている)。
みんなで力を合わせれば、どんな素材であっても加工が可能になる。
ただリンブルもデザント同様、基本的に鎧を始めとする武具は個人負担だ。
高い給金には、その分も含まれてるからな。
今回の場合はソルド殿下がある程度補助金を出してくれるようだが、基本的には俺たちから騎士たちが買い上げるという形になる。
俺もそこまであこぎな商売をする気はないが、素材の原価と加工料くらいはきちんともらうつもりだ。
なので俺らは、あくまでも彼らの財布の兼ね合いで装備を作ってあげる必要がある。
リンブル兵たちの要望も聞きたいということで、俺たち生産班一行は一度王都へ向かうことになった。
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