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グロッキー


 魔道具造りに必要な三種の神器。

 魔道具にするための道具、道具に魔法を乗せるための魔力触媒、そして付与魔法を使う魔導師。

 今この作業場には、既に必要なその三つが揃っている。


 『魔力筒』を作るための金属製の筒は、近辺の鍛冶屋の生産力をフルで使って作ってもらっている。

 魔力触媒は、効率重視で作りまくったので大量にある。

 そして俺やシュウを見て学んできた隊員たちがいる。


 つまりあとは、ひたすら作業をこなしていくだけということだ。



 とりあえず後ろの方にうずたかく積まれている筒を十個ほど拝借し、魔力触媒は自前で用意する。

 間隔を並べて置いた筒に触媒を振りかけ、準備を調えてから付与魔法を使った。


 威力はなるべく揃えておいた方がいいので、俺が使うよりも少し弱いくらいの威力の魔法を込めていく。

 付与魔法を使うのに、対象に触れる必要はない。

 精緻な魔力回路に魔法を入れたりするなら話は別だが、これくらいの量産品なら遠隔処理だけでいける。


 属性は火か風という指定がされているので、火を五本と風を五本作成した。

 これでまずは十本。


「頼む」

「は、はいっ!」


 今この作業場には、隊員以外にアルスノヴァ侯爵が雇ってくれたお手伝いが何人か常駐している。

 その中で一番若い少年の手が空いているようだったので、筒を持ってきてくれるようお願いする。

 名前はカールというらしい。


 十本、二十本、三十本……みるみるうちに、『ファイアアロー』の籠もった『魔力筒』が出来上がっていく。


「は、はえぇ……相変わらず人間業じゃねぇよ、隊長マジ半端ないって」

「俺たちは魔力切れかけてポーションがぶ飲みしながら頑張ってるってのに……なんで付与魔法と属性魔法を使うのに魔力が切れないんだよ」


 こういう単純作業は、嫌いじゃない。

 無心で打ち込めるから、何も考えなくていいしな。

 複雑な魔道具を作るより楽でいい。


 作ってるうちになんだか調子が出てきたぞ。


「次からは五十本ずつ並べてくれ」

「ええっ!? は、はい、わかりました!」

「『超過駆動オーヴァーチュア』エンチャント・ファイアアロー」


 超過駆動を使い、付与魔法を一気に複数の筒へかけていく。

 一度に二個ずつ、三個ずつ、四個ずつ……最終的には一回の発動で二十個ずついけるようになった。


 お手伝いのカール君は、全力ダッシュで魔力筒を持ってきてくれるが、残念ながら間に合っていない。

 準備が終わるまで魔力ポーションを飲んで休憩してから、ある程度の数が揃ったところで触媒をかけ、付与魔法を使っていく。


 カール君はダダダダッと全力疾走を続けている。

 できた『魔力筒』を完成品と書かれたスペースに置き、鋳型で作った魔力回路のついた筒をひたすらに持ってきてくれる。


 俺に触発されてか、メンバーのみんなが魔法の多重がけを始める。

 インターバルこそ挟むが同時に付与魔法を三つ発動させているため、今までの二倍以上の速さで『魔力筒』ができあがっていく。


 じゃんじゃん量をこなせるようになってくると、不思議なもので競争心のようなものが湧いてくる。


 魔道具班の五人対俺で、どちらがたくさんの『魔力筒』を作れるかという勝負が、どちらからともなく始まった。


「『超過駆動』エンチャント・ウィンドアロー! 『超過駆動』エンチャント・ウィンドアロー! 『超過駆動』エンチャント・ウィンドアロー!」

「うおおおおおおおっ!」

「はああああっ!」


 魔道具職人にとっては、この作業場こそが戦場だ。

 俺たちは戦っている時と変わらないほどの気迫で、うずたかく『魔力筒』を積んでいく。






「げぷっ……もう限界っす、隊長」

「参りました……」


 魔力ポーションをがぶ飲みしまくり、気持ち最初に見たときよりも膨らんだメンバーたちが倒れていく。

 彼らに勝利した俺は、そのまま付与魔法を残っている筒にかけ続けた。


「――よしっ、これでとりあえず届いてる分は終わった。とりあえずゆっくり休め、俺はこのまま他の隊員たちの様子を見に行ってくる」

「ういぃーっす……」

「隊長は相変わらず化け物じみてるぜ……」


 俺はグロッキーになっている魔道具班と、引きつった笑みを浮かべているお手伝いさんたちを背に、小屋をあとにした――。

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