ダメだ
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リンブルの東部、かつて魔物の襲撃を受けていたあたりでは建築ラッシュが進んでいる。
アルスノヴァ侯爵を始めとする貴族によって投入された資本で、ガンガン掘っ建て小屋が建てられているからだ。
とりあえず俺たちや俺たちのサポートとして送り込まれてきた職人たちが寝泊まりできる場所を作るためというのがその理由ではあるが。
将来的には、東側が発展し人口が増加し始めたときに、それに対応する狙いもあるのだろう。
殺風景で色も塗られていない小屋へ戻り、メンバーに浄化をかけてから話をする。
行きたいと手を上げた人数は、案外少なかった。
六百人もいるというのに、挙がった手は三十にも満たなかった。
「セリアとシュウ、お前らは強制だから」
「いぃやぁでぇすうぅぅ!! 人いっぱいいるのいやあぁぁぁ!」
「僕が行く意味がないと思うのですが」
今後の防衛作戦に必要な人員と、今回披露した魔道具の製作者を連れていかなくちゃ、話が始まらないだろう。
その場になんとしても留まろうと渋り続ける二人を見てるとため息がでてきた。
ダメだこいつら、はやくなんとかしないと……。
いざとなれば首根っこを掴んででも、連れていかなくちゃいけないな。
「装備を着けたままでも正装でも、好きな方を選んでいいらしいぞ。当然だけど、武器の携帯はダメだぞ」
「えー、それならやっぱり……」
「おめかしする」
一度会食をして慣れているからか、以前と比べるとエンヴィーたちの抵抗は少ないようだった。
どうやらああいう場にちゃんとしたドレスを着ていく喜びを知ったらしい。
どうしよう、彼女たちは彼女たちで、俺より貴族耐性高いかもしれない。
「エルル、服選びに行こ!」
「うん、じゃあ隊長、またあとで!」
エンヴィーたちは自分たちの部屋に戻り、着替えてくるようだ。
彼女たちは、一度ドレスを着てからというもの服を大量に買い込んでいる。
そんな金があるのかと言われれば――あるとしか言いようがない。
今の『辺境サンゴ』メンバーの懐事情は、かなり明るいのだ。
今までバルクスで狩ってはいたが外には出せなかった大量の素材をアルスノヴァ侯爵経由で徐々に流しているからな。
まずその売却益がかなりある。
それに各街々に防衛用の魔道具を売ったりもしている。
基本的にはお友達価格だけど、そもそも質を意識せずに大量に生産し卸しているので結構な儲けが出る。
その素材はクランが狩ったもので賄っているので、素材の採取分のボーナスを出している。
そして『辺境サンゴ』メンバー全員に改めて『収納袋』を貸し出してもいるので、今の彼女たちは非番の日なんかには素材を採取し放題だ。
軍隊に居た頃と違って上に全部持っていかれるわけじゃないので、クランに申告さえしておけばかなりの部分が自分の懐に入る。
これが臨時収入になるので、最近は休みの日も狩りに出掛ける奴らが多いらしい。
バルクスで不眠不休で戦い続けていた経験のおかげか、休みを作らずともそれほど支障は出ないようだ。
彼らの有能さを褒めるべきか、前職のブラックさを嘆くべきかは微妙なところだ。
俺たちがやっている魔物の討伐は、王党派のトップであるアルスノヴァ侯爵からの指名依頼の形を取っている。
そのため依頼料もかなりの額が出ており、ぶっちゃけこれだけで贅沢な暮らしができるくらいの額が出ている。
これら全部の依頼料なりボーナスなり臨時収入なりを全部足すと、一人あたりかなりの額が手に入っている。
実は今、隊員はみな小金持ちなのだ。
ただ今まで金をまともに持ってこなかったので、使い方がわからない奴らの方が多い。
そのため女性は服や美容品を、男は博打や女遊びに金を使っているらしい。
休みに何をしようが、個人の自由なので俺は口出しはしない。
一時間後、あらためておめかしをしてきたみんなを引き連れて俺はソルド殿下の逗留している屋敷へ向かう。
ちなみにシュウは引きこもり、セリアはベッドの下に隠れていた。
俺は予想通りの事態に苦笑しながら、二人の首根っこを引っ掴んだ。
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