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王子の憂鬱 1


【side ソルド・ツゥ・リンブル=デザンテリア】



 リンブル王国は、存亡の危機に立っている。

 だがそのことを正確に理解している奴は……いや、理解した上で奔走している奴は、全体の一割もいない。

 下手をすれば明日にもこの国に翻る国旗がリンブルを示す双頭の鷲から、デザントの牙を剥く獅子へすげ替えられるかもしれないのにだ!


 この国のバカ貴族共は――本当になにもわかっていない!

 今は国内でごたごたを起こしてる場合ではないというのに、やっていることは足の引っ張り合いばかりだ。

 リンブルの狭いパイを分け合うために、あの手この手で俺――リンブル王国第一王子たる、ソルド・ツゥ・リンブル=デザンテリアの邪魔をしてくる。


 リンブルは早急にまとまり、デザントを封じ込めるためにガルシア連邦へ救援を出すべきなのだ。


 デザントはバカではない。

 矛先が連邦に向いている限り、新たにこちらに宣戦布告し二正面作戦をするような愚は犯さない。

 連邦が戦ってくれている間は、俺たちが直接戦争をする必要はないんだぞ!


 もし連邦が落とされれば、次に狙われるのはリンブルだ。

 オケアノスの海上支援は、陸路を取ってやってくるデザントの侵攻には間に合わないし、戦力も限られてくる。


 今ならまだ、デザントが覇を唱えることを防ぐ術はある。

 オケアノスと組めば、三方からデザントを封じ込めることができる形になるからだ。

 なんとしてでも同盟を組み、こちらの技術がデザントに追いつくまでの時間を稼がなくちゃいかんのだ。


 時間は俺たちの味方なのだ。

 魔法技術で追いつくためにも、デザント国内の反乱の気運が高まるためにも。



 デザントの魔法技術や『七師』の力は絶大だが、その分彼の国はいくつもの歪みを抱えている。

 国内にある属州民と王国民との間に広がる軋轢は大きい。

 そしてデザント内での派閥争いは常に激しく、派閥の中でも細部に分かれて常に戦っているような魔境と聞く。

 『七師』をバンバン海外へ派遣しないのも、その間に宮廷内のパワーバランスが崩れたり、暗殺や自領への虐殺が起こることを警戒してのことらしい。

 『七師』は『七師』でしか倒せぬため、おいそれと動かすことができない状況なのだ。


 デザントは今、自縄自縛に陥っている。

 だから今こそが――リンブルが生き残るための千載一遇の好機なのだ!


 同盟さえ結んでしまえば、事態は一気に好転する。

 奴らがリンブル・ガルシア・オケアノスの連合同盟を破るより、こちらが向こうの属州を始めとする反王国勢力と結託し、デザントを内側から崩す方が早い。

 というか俺が、早くしてみせる。


 だというのにリンブルのバカ貴族共と来たら……っ!

 思い出すだにはらわたが煮えくり返る。


 アイシアもノヴィエも、宮廷の外に出たことがない箱入り娘だから、配下の甘言に容易く惑わされる。

 下手に王位継承権があるせいで、あいつらの発言は影響力を持ってしまう。

 そして今はそこを突かれ、俺率いる王党派は劣勢に陥っている。


 こちらが切り崩しを考えるなら、向こうも同じ手を考えてくるのは当然のことだ。

 今リンブルの国内――具体的には第一王女アイシア率いる地方分派に、明らかに不透明な金の動きがある。

 とてつもない量の裏金がばらまかれ、各地で買収工作が始まっているのだ。

 既に寝返っている貴族の数は両手の指では数え切れない。

 俺が全てを把握できていないだけで、恐らく魔の手はリンブルのかなり深いところにまで入り込んでいることだろう。


 恐らくアイシアは――既にデザントの手先になっている。

 きっとリンブルをデザントが併合したら、新リンブル王国の女王にしてやるとでもそそのかされ、それを真に受けたんだろう。


 あのバカが――デザントが何度約束を反故にしてきたかも知らんわけではあるまいに。

 中途半端に利口な奴が要らぬ知恵を回すのが一番厄介なのだ。

 処理するのにも時間がかかるからな。


 ノヴィエが旗幟を明確にしないせいで、俺はアイシア率いる地方分派に完全な優位をつけきれていない。

 父である現王フリードリヒ四世が事なかれ主義なこともあって、どうにも思い通りに動けていない現状だ。


 それでもできることをしようと、俺はかつての教育係でもあったアルスノヴァ侯爵と共に二人三脚で頑張ってきた。

 俺たちが仕掛けていたデザントの裏切り工作や反乱支援は実を結ばなかった。

 こちらが提供できる魔道具などの質が、向こうが求めている水準にはるかに及んでいなかったからだ。

 その分金品や美術品を使いなんとかパイプだけは作ったのだが……結局上手いこと活用できてはいない。


 頭を悩ませながら焦りだけが募る日々が続いた。

 けれど……転機は突然、やってきた。


 アルスノヴァ侯爵の愛娘であるサクラが、デザントを追放された元『七師』と接触し、交流を持つことに成功したのである――。


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