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上位龍討伐戦 4


 スケルトンたちに持たせた魔道具は『ブラストファイアボール』という中級火魔法を込めたマジックウェポンだ。

 といってもかなり低級の素材を使い、本来の許容量をはるかに超えるよう設計し、臨界点に近付けている。

 それこそ何か衝撃があれば、暴発してしまうくらいの調整を施してあるのだ。

 俺が割と使うのが、この替えの利くスケルトンたちによる特攻戦術である。


 息吹という衝撃によって魔道具は爆発。

 スケルトンの全身と魔道具を包んでいた箱は破片になって、シルバリィドラゴンの口の中へ飛び散っていく。


「kyaaaaaaa!?」


 初めて味わう衝撃に、ドラゴンが口を大きく開いた。

 だがそのままでは同じことをされると思い、急いで口を閉じる。

 まぁ口の中じゃなくても、同じことやるんだけどな。


 悶えているドラゴンに対し、臨界状態の魔道具を抱えるスケルトン部隊を順次突撃させていく。

 ところどころ目標にぶつかるまえに爆発した者もいたが、大体全体の八割くらいは無事に着弾してくれる。

 元々弱い腹部と、ライライたちが削って鱗が意味をなしていない背面と側面を重点的に狙わせてもらった。


 ドラゴンは目を白黒させながら、ライライたちの方を睨んでいた。

 おいおい、そんなことしてていいのか?


『『閃光弾』、投擲!』


 ライライたちがドラゴンの目を引き付けているうちに、エンヴィーとマリアベル率いる部隊が左右からぐるりと回って龍の背後を取る。

 そして『ライト』の魔法を封じ込めた『閃光弾』を投げた。


 激しい光が網膜を焼き、ドラゴンは苦悶の声を上げる。

 みなは『見え見え発見君』を使っているので、むろん『閃光弾』の影響を受けていない。


 今まで無傷で保存されていた隊員たちが、飛翔を封じられブレス攻撃で手痛いダメージを負った手負いの龍へと向かっていく。

 このまま戦えずに終わるかもしれないと思っていたからだろうか、彼女たちの攻撃はいつもの五割増しくらいで激しいように思えた。


 しばらくすると、遊撃隊の姿が見えなくなった。

 見れば遠く離れたところで、ライライが酒瓶を抱えて眠っている。

 先ほどの攻防で完全に酔いが回り、限界を迎えてしまったのだろう。

 残りのメンバーも自分の仕事は終わったと考え、距離をとっていざという時に乱入できるように得物を構えながら戦闘を見守っていた。


 セリアたちが呼び出したアンデッド集団も、戦列へ加わっている。

 頭部の方で戦っているのは、彼らがスケルトンであることをドラゴンに認識させるため。

 もしまた息吹を使おうものならまたあの爆発を食らうと、ドラゴンに躊躇させるのが目的だ。


 閃光弾の効果が切れドラゴンの動きが明らかに良くなってきた段階で、再び『闇玉』を投擲。


 『閃光弾』と『闇玉』を交互に使うのは、どちらも連続して使用しているうちに相手が慣れてきてしまい、効果時間が短くなってしまうからである。


 目は優秀なので、暗いところにも明るいところにも慣れる能力がある。

 だが暗さと明るさを交互に浴びせれば、慣れさせる時間を与えないということが可能なのだ。



 状況を俯瞰し、自分たちの全力を出す機会を測っていたマリアベルとエンヴィーが動き出す。


 二人はここぞと見たタイミングで、空歩を発動。

 宙を駆けながら、首筋のあたりから顔まで飛んでいき、そして一気に急降下。


『獲った!』

『――もらった!』


 体力を用い限界まで強化した『龍牙絶刀』による振り抜きが、シルバリィドラゴンの左目と右目をそれぞれ襲う。

 龍は攻撃を察知し事前に瞳を閉じたが、二人の全力の一撃は龍の皮膚を貫通し瞳を傷つけた。


「guooooo……」


 放置できぬような傷を多数つけられ、龍は明らかに元気を失っていた。

 視界が奪われ、攻撃手段を奪われた。


 遁走しようと空を飛べばエンヴィーたちがたたき落とすため、今の龍は逃走手段すら奪われている。

 もはやあれに伝説のドラゴンとしての威厳はなく、ただ闇雲に攻撃を繰り返すだけの魔物に成り下がっていた。


 ただ暴れるだけの魔物となれば、『辺境サンゴ』の敵ではない。

 革の保存状態を気にせず全力で攻撃を続けたことで、龍は一時間もかからぬうちに息絶えた。




 作戦が終わり、損害を確認する。

 アンデッドはほとんど全て消耗し、魔道具はかなりの量を使い捨てた。

 だがこれらは、また作ればいいだけ。


 怪我をした者も多かったが、ひどい者でも複雑骨折程度。

 致命傷を負ったメンバーはいなかったので、俺が回復魔法をかけるだけで元通りになった。

 ただドラゴンとの攻防で、みんながつけている『ドラゴンメイル』がかなり傷ついてしまっている。

 修復がかなり面倒だなぁと思いつつ、無事作戦が完了したことにホッと胸をなで下ろす。

 前回とは違い、今回は俺が直接戦闘に参加せずとも無事上位龍の討伐ができた。

 それだけみなの基礎能力が上がっていたということだろう。


 みなの回復を終え勝利を祝ってから、くるりと後ろを振り返る。

 雑木林の中には、俺たちの戦いを映し出している『通信』の魔道具と、それを動かしているスケルトンの姿があった。


 さて、これで貴族連中の固い頭がほぐれてくれると助かるんだが……。

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