ストレス
それからしばらくは、俺とシュウ、そしてかつてシュウが小隊長をしていた頃の隊員たちによる魔道具設置の時間が続いた。
セリアによる悪魔召喚とアンデッドによる防衛線構築、『辺境サンゴ』による残敵掃討もほとんど完了している。
そしてその二重の網を抜けてきた魔物たちへ戦力を集中させるための用意も整ってきている。
街の要塞化も着々と進んでいるのだ。
アルスノヴァ侯爵を始めとする街の有力者たちと話し合った結果、街と街の後方に警戒線を立てるという合意が成った。
基本の防衛作戦は、俺たちが街の後方にある砦の後方で待機。
魔物が防衛網を突破してきた場合、まずは街の設備で防衛。
即座に連絡をよこし、後方で警戒中の俺たちが迎撃に出る。
無論俺たちは魔力や気力を探知できるので、基本的に街が襲われるより早く迎撃に出ることになるだろう。
まぁ俺たちは前と変わらんくらい忙しい。
バルクスより魔物の強さが一段落ちるのが、せめてもの救いだな。
ただこれだと、俺たちの負担がかなり大きい。
やってること、大隊だった頃とそんな変わらんくらいハードだからな。
そのため今後は街の防衛設備を順次増強し、要塞だけで完全に魔物の撃退ができるところまで持っていってもらう。
そして街の外を闊歩する魔物を撃退できるような魔道具を、俺たちがリンブルに提供することになった。
リンブルにも気力使いは多いから、強力なマジックウェポンさえあれば街の防衛自体はできる。
なので俺たちとリンブル兵を逐次入れ替えていき、ある程度のところまで行ったら自由にさせてもらうつもりだ。
俺とシュウ率いる魔道具作成部隊が頑張れば、そう遠くないうちに『辺境サンゴ』はフリーになるだろう。
ちなみにこんな風に色々やってた過程で、俺たち『辺境サンゴ』はオリハルコン級に格上げになった。
オリハルコン級になったってことは、国が俺たちのことを必要だと認めたことに等しい。
これで当初考えていた、国から無碍にされるという選択肢は完全に消えたことになる。
まぁその分色々厄介は背負っているが……この荷物も、そう遠くないうちに大分軽くなってくれるし問題はない。
俺は昇格にあたり、アルスノヴァ侯爵に一つお願いを聞いてもらうことにした。
その内容とは――シュウがとうとう作成に成功した、『通信』の魔道具である『短距離通信儀』による、俺たち『辺境サンゴ』対上位龍の戦闘映像提供である。
フルメンバーで戦うため俺たちが抜け、その穴をアルスノヴァ侯爵騎士団によって埋める形だ。
実際に俺たち抜きでもやれるということを示す必要があるとは思っていたのだろう。
アルスノヴァ侯爵も、マジックウェポンの貸与を代償にオッケーを出してくれた。
どうして龍との戦闘映像を見せるのか。
これにはいくつもの理由がある。
一番の理由は、とにかくリンブルの偉い人間たちに魔物の脅威と俺たちの力を見せつけることだ。
未だ冒険者である俺たちによる防衛に、難色を示している街はまだいくつかある。
『辺境サンゴ』のことを冒険者だからとバカにしてくる手合いも多い。
頭の固い貴族には、俺たちの力を見せて力で分からせた方が手っ取り早い。
二つ目は、ようやくシュウが完成させた魔道具の有用性をお偉方に見てほしいという理由もある。
俺は無理だと思ってたが、本当に『通信』の魔道具なんてできるもんなんだな……使い魔なんかの視覚同調から発想を得て完成にこぎつけたらしい。
死霊術が不得手な俺では、恐らく途中で行き詰まり、完成はしなかっただろう。
シュウもあれで中々多才なやつである。
後は……まぁ久しぶりに、『辺境サンゴ』として戦いたいというのもある。
結果デザントに居た頃より忙しいかもしれない仕事から来るストレスを、解放させたいのかもしれない。
許可が出て、日取りも決まった。
そしてドラゴンは相変わらず動いていないらしい。
作戦決行の日は――明後日だ。
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