まさかの
「久しぶりネ~」
「ライライか、どうしてここに?」
俺たちの目の前に現れたのは……大隊のメンバーを呼びに行ったはずの、ライライだった。 『ドラゴンメイル』の『偽装』のせいで、反応はあったが強さまではわからなかった。
自分の作った魔道具に騙される……探してみたら、そんな感じの童話とかありそうだな。
「そりゃもう、森伝いにこっち来ただけヨ~」
「お前……酒臭いぞ」
「そりゃ言いっこなしネ」
ライライは酔っ払うほど気力が増加していき、戦闘能力が上がっていくという特殊体質持ちだ。
彼女は酔っ払う度合がある程度より上になると、途端に呂律が怪しくなってくる。
語尾が半音上がってインチキ商人みたいになってるのは、間違いなく相当酔ってる証拠だ。 ……ライライが酒乱じゃなくて、本当によかったよな。
にしても森伝いにかってことはトイトブルクから直に南下してきたのか?
命知らずだな……遠回りしてでも、安全なルートを取った方が楽だと思うんだが。
俺たちはあえて遠回りをしてデザントからリンブルへ抜けた。
戦闘の回数なんか少ない方がいいし、辞めた職場で危険な戦いに身を投じなくちゃいけない理由もないし。
それに、いくつかすませなくちゃいけない事務手続きもあったしな。
これでも元貴族で金もあったので、住居だの債権だのの処理も必要だったのだ。
「いやネ、あれだったのヨ、あれ」
「あれってなんだ、あれって。というか他の奴らは?」
「あるぇ? みんな居ないネ、不思議なことは続くネ~」
『ドラゴンメイル』の『偽装』のせいで『サーチ&デストロイ君三号』に引っかからないので、気力察知で探す。
すると少し離れたところに、大量の反応があった。
放射状に拡がりながら、ゆっくりとこちらの方に向かってきている。
多分あれが、ライライが連れてきた第三十五辺境大隊のメンバーだろう。
ここらへんの魔物だと、下手をすれば死ぬ危険もある。
ベロベロになったライライが、露払いをしながら進んできたってところか。
こいつは酔うとあまり力の加減ができないからな。
下手に味方を巻き込まないよう、一人で先行してきたんだろう。
にしてもこれだけ酔ってるってことは……。
「相当無理しただろ、おつかれさま」
「……いやいや、私はただお酒飲んでただけネ。タイチョと比べたら、罰当たっちゃうヨ」
見ればライライの身体は、かなり傷だらけだった。
回復魔法で治してはいたんだろうが、肌にいくつか白い傷痕も残っている。
『ドラゴンメイル』も、今すぐ補修が必要なくらいにいくつもの線が走っているし。
かなり急いでここまで来たんだろうな。
そこまで合流を焦る必要はないと思うが……何か理由があるのか?
気にはなったが、今のライライにそこらへんの細かい説明はできんだろう。
俺は疲れてくたくたになっている彼女に浄化をかけ、他の隊員たちの到着を待つことにした。
「ゆっくり休め、今日は『ふろーてぃんぐ☆ぼぉど!』持ってきてるから」
「アイヤー、私これ好きネ。なんか高級なハンモック乗ってる、みたい、で……」
『ふろーてぃんぐ☆ぼぉど!』自体はただの分厚い板なので、綿を詰めてから絹で覆い、上に枕なんかを乗っけてやると即席の寝具になる。
ライライを上に載っけて、その上にタオルケットをかけてやる。
彼女は最初は笑って楽しそうにしてきたが、すぐにすやすやと眠りに落ちた。
相変わらず、こいつの寝心地は抜群そうだ。
本来は怪我人を楽に運ぶために作られた魔道具なんだが……大隊では高級寝具みたいな扱いを受けている。
魔力を結構使うから、長時間浮かすには俺が事前に注入しといた魔力を使うか、魔石をいくつかおじゃんにしなくちゃいけないから、あんまりやりたくはないんだが……まぁ今日くらいはいいやろう。
お酒は適度に楽しむがモットーのお前が、ここまで泥酔するほど頑張ったんだ。
これくらいの労いはしてやらんと。
ありがとな……ライライ。
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