声
トイトブルク大森林の付近に陣取りながら、魔物をひたすら間引いていく作業が長いこと続いた。
飛び出してきている魔物たちを潰し、とりあえずセリアに悪魔たちを召喚して警護に使ってもらう。
セリアはアンデッドたちを更に呼び出そうとしたが、それは俺が止めた。
ある程度身の安全が確約できるまでは、彼女のアンデッド使役のリソースは取っておくべきだ。
なので俺がクリエイション・スケルトンで骸骨兵を造り出し、悪魔に貸し出す形を取らせてもらった。
悪魔召喚も、やっていることはアンデッドの使役とそれほど変わらない。
ただいくつかの違いはある。
アンデッドは素材を用意しなくとも召喚自体は可能だが、悪魔を呼び出すには生け贄か彼女の血が必要という点。
そしてかなり知能が高く自律行動を取れるため、彼女のリソースを圧迫しない点だ。
これはメリットでもあり、デメリットでもある。
セリアは悪魔を選別し、不満が出たりしないように気を配らなければいけないのだ。
要は彼女は、悪魔たちにとっていい上司にならなければいけないということだ。
悪魔にも人間同様性格があり、真面目な奴もいればさぼったり、命令違反をするような奴もいる。
自分がこの場を離れる際、アンデッドならばセリアがお願いをすればそれを必ず守ってくれる。
だが悪魔の場合は誓約や契約によるものではなく、悪魔たちのいる精神世界から、彼らをこちらの世界に受肉化させているだけに過ぎない。
そのため口では従っていても面従腹背で、セリアがいなくなるのと同時に好き勝手暴れる奴らもいるのだ。
以前それで一度痛い目を見てから、彼女は使う悪魔を慎重に選定するようになった。
そんな風に悪魔任せで防衛準備を着々と整えながら先を進み、時折戻っては悪魔たちがさぼっていないかを確認するような感じで進んでからしばらく経つと、見慣れた目印が見えてきた。
俺がバルクスに居た頃に彫り込んだ、国境を意味する単語の刻まれた樹だ。
つまりここから先は、デザントの領土。
新しい『七師』が頑張って守っているであろうバルクスがあるってことだ。
俺が用意した『幻影』や『欺瞞』の魔道具、国境ギリギリのこのあたりまでは設置してたはずなんだが……見当たらないな。
まぁ、いいか。
『サーチ&デストロイ君三号』で確認をすると……相変わらずトイトブルクの奥地には、集合体恐怖症なら失神しそうなくらい大量の魔物が居る。
そしてこれは……デザントの方にも、魔物がいくらか漏れてるな。
さすがに領土侵攻まではされてないみたいだが、ところどころ防衛線を突破され魔物の侵入を許している。
あいつらがいるのに、どうしてこんなことになって……いや、もしかして既に全員こっちに移動済みなのか?
そういえばずっと確認してなかったな。
俺たちがここまで来てから、どれくらいの日数が経っただろう。
……俺もセリアも何かに熱中すると、他のことをおろそかにするタイプだからな。
もしかするとあまりにも時間が経ちすぎて、既にエルルなんかが怒っている頃かもしれない。
「セリア、とりあえず一度連絡を入れるか。とりあえず応急処置は終えたし、魔物が侵攻してこないよう魔道具設置の準備をしていく」
「わかりましたぁ、とりあえず全部の街に飛ばしときますねぇ」
「助かる」
俺はセリアに頼み、使い魔を飛ばしてもらうことにした。
使い魔は、言わば悪魔召喚を色々とグレードダウンした代わりに対価が魔力だけになった物と考えてくれればいい。
使い魔を飛ばすのは、死霊術士の割とポピュラーな力だ。
セリアの使い魔は蝙蝠型なので、見た目もそんなにグロテスクではない。
全ての街に飛んでいっても、問題になったりすることはないだろう。
俺は『欺瞞』と『幻影』の魔道具で魔物の認識をずらし、森の内側へ向かっていくための魔道具『森へ帰れ!』を作っては、等間隔で設置していく。
『葬送の五騎士』にはその間、森の外でたむろしている魔物たちの掃討作業をしてもらった。
魔道具と悪魔による二段構えの防御網を構築し始めてから三日ほど経った時、俺たちに来客がやってくる。
「アルノード様!」
その声の主は――。
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