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【side サクラ】


精密腕ウォルドゥ


 その腕の大きさは、人間より二回りは大きい。

 オーガの腕より太く、サイクロプスの腕よりは細い。

 樹齢二百年の樹木の幹くらいの太さと言った方がわかりやすいだろうか。


 長さは、シュウの下半身と同じくらい。

 彼自身の腕と比べると、かなり長いな。


 精密腕と呼ばれていた物を、シュウは自分の――背中にくっつけた。

 カチリと音が鳴り、腕がシュウの背中で固定される。


「神経素子接続……完了」


 金色の腕が、グーパーと握りを作る。

 シュウはそのままブンブンと、まるで自分の身体の一部のように腕を動かし始めた。


 義手の技術なのだろうか……あれほど精密な物が作れるのなら、たとえ腕や足がなくなっても兵士を退役させることなく、新たな戦場へ送り込むこともできるだろう。

 ……ダメだな、私はついつい考えが物騒な方向へと向かってしまう。


 次は何をするのかと見ていると……彼は腕を地面へとくっつけた。

 彼自身は立ったまま、目を瞑って腕を組んでいる。

 ……いや、本当に何をしているんだろうか。


 観察していると、彼は腕をほどき、今度はそのまま地面にしゃがみ込んだ。

 そして右腕、左腕、精密腕という三本の腕にある掌を、全て接地させる。

 彼は何かをブツブツ言っているようだが、さすがにこの距離では聞き取れない。

 いったい何をしているのか、教えてくれても――。


「これは……地面が、揺れている?」


 ゴゴゴという地響きのような物。

 今立っている地面を伝わって、彼が何かをやっていることだけは伝わってくる。

 更にそこから数十秒ほど待っていると、シュウがカッと目を見開く。


「クリエイション・ゴーレム」


 今までより一段強い震動。

 次に起こったのは、地割れだ。

 山が割れていき、いくつもの小さなまとまりに分かれていく。

 分割のされ方は、シュウが落とした溶かしたミスリルを基点にしているようだ。

 七つの土の山が、ぐねぐねと動きながらその形を変えていく。


 ただの土の山が、土の塊になる。

 そして大きな一つのブロックになった。

 色は灰色。

 恐らくはミスリルと土を混ぜているせいで、このような濁った色になったのだろう。


 大きなブロックの側面の一部が凹み、その分の土が使用されて腕が伸びる。

 また別の部分が凹み、足が伸びる。

 そして気付けば、土塊は人型に変わっている。


 他の場所でも同様の変化が起きており、七体の人型のものが生まれていた。

 無機物によって生み出される魔物――ゴーレムだ。


 だが七体同時に生み出せる者など早々いない。

 シュウはもしやゴーレム使いでも特に秀でた存在――ゴーレムマスターなのか?


 彼は生み出したうちの一体の肩にのり、近付いてくる。

 私の周りに居たギルドの男たちは、びびりながらも動かずにいる。

 彼らも彼らで、肝が据わっている。


 シュウは近付いてから下ろしてもらい、てくてくとこちらへ歩いてきた。

 気付けばその背中から、腕はなくなっていた。


「とりあえずこの七体を使って、防衛設備を整えます。いくつか指示は出しますし、あとで僕が魔道具にして補強はしますが、それ以外の部分はギルドの方たちにお任せします。ゴーレムたちの命令権を委譲しますので、お好きなように使ってください」

「シュウ殿……あれは貴殿の魔法なのか?」

「ええ、クリエイション系の魔法の一つであるクリエイション・ゴーレムです。ミスリルを使ったり核を事前に用意して、魔力消費を節約して出しました」

「それは……助かる」

「いえ、気にしなくていいですよ。請求書は後で出すんで」


 シュウは何かの球を、ギルドの代表であるリンギールに手渡す。


「ゴーレムたちはそれを持っている人間の言うことを聞きますので、くれぐれもなくさないようにお願いします」

「お、おお、わかった……」


 リンギールがいくつかの命令を出すと、ゴーレムたちはそれに忠実に従った。

 彼は頷くと礼を言い、工事への意欲を見せる。

 今までまともな仕事ができていなかったからか、その瞳はやる気に満ちあふれていた。


「まずは要塞の補強からだ。土嚢の積み上げを始め、内側からでもできることはいくらでもある」

「ああいえ、効率優先で外に出ても大丈夫ですよ」

「それは……頻度は落ちているとはいえ、魔物の襲撃は定期的に起こっている。さすがに危険だと思うんだが……」

「問題ありませんよ。僕がゴーレムと魔道具で雑魚をどうにかしますので」

「それならもし強力な魔物が来たら、どうするつもりなのだ?」


 私の質問に、シュウは表情を変えずに答える。

 まるでそれが当然だとでも言わんばかりの様子で。


「――来ませんよ。エンヴィーたちが、そんな雑な仕事をするわけありませんので」

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