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ガードナー


 馬車での旅に飽きが来始めた頃、ようやっと国境までたどり着くことができた。

 視線の先にあるのは、俺たちの拠点となるリンブル王国だ。

 ぐるりと反時計回りに移動し、北から王国を抜けた形だな。

 ちなみにデザントの南の国境を接しているのがガルシア連邦で、西側は海に面している。

 魔導船に揺られて数週間も旅をすれば、海洋国家オケアノスが見えてくるらしい……まだ一度も行ったことはないが。


「ここがリンブル王国か、長かったな……」

「そうですか? いつもより快適だったと思いますけど」

「むしろ手応えがなくて物足りない」

「それはお前らがバグってるだけだ。物事の考え方がバルクス基準になってるぞ」


 道中魔物の襲撃や盗賊討伐なんかもしたが、どうやら彼女たちは満足できなかったようだ。

 もっと強い奴と戦いたいらしい……戦闘狂どもめ。

 平和ボケしないのはいいことだとは思うが、殺伐過ぎるのも息が詰まると思う。


 バルクスは常に戦いのことを考えないと生きられないような場所だったからな。

 俺が警戒の魔道具『起きルンです』を作るまでは、警邏も命がけだったくらいだし。


「でも兵士たちがいませんね。これだと素通りできちゃいそうですけど」

「一応リンブルとデザントは相互不可侵条約を結んでいるからな。両方とも今は事を荒立てる気がないってことなんだろう」


 国境沿いに兵士たちの姿はなく、あるのは『この先を進むとリンブル王国』と書かれた看板だけだ。

 国境線自体がかなり曖昧になっているのは、もし紛争が起こってもその責任をうやむやにするためだろう。


 越境し放題な感じなら不法入国者が大量に生まれる気もするが、実は案外そんなことはない。

 一歩外に出れば魔物や盗賊による被害が起きるこの大陸では、街の外への転居すらも命がけだ。

 そして両国とも納める税金に大した差がないのだから、そんなことをする者はほとんどいない。


 まあ間諜の侵入や犯罪者の国外逃亡とかはあるだろうが、それはお貴族様の考えることだ。

 ついこないだ爵位がなくなった平民の俺には関係のないことである。


 ちなみに今リンブルとデザントが相互不可侵条約を結んでいるのは、お互いの利害が一致しているためだ。

 デザントは南部のガルシア連邦を切り崩して併合しようとしている最中。

 リンブルは王位継承関連でゴタゴタが続いている……というのが表向きの理由。

 これは俺の推測だが、東部からやってくる強力な魔物の処置に追われているというのもあると思っている。

 ここもバルクス同様、強力な魔物の生息地域であるトイトブルク大森林と国境を接しているからな。


 俺の推測を裏付けるように最近、リンブル王国では凶悪な魔物を狩れる冒険者を手厚く保護しているらしい。

 ここは正しく、俺たちが冒険者ライフを始めるのに相応しい場所というわけだ。


「よし、とりあえず冒険者登録をしよう。デザントと同じなら、クランを作れるようになるのはBランクから。じゃんじゃん依頼を受けないとな」

「さっすがアルノード様、話がわかるぅ!」

「……私より強い奴に会いに行く」


 エンヴィー、服の裾を引っ張るな。

 既製品だけど絹製で高いんだから、もうちょっと大切に扱ってくれ。


 あとマリアベル、自分より強い奴とは戦っちゃダメだぞ。

 そんなことをしたらやられちゃうじゃないか。



 俺たちは通りがかった隊商の護衛をしていた冒険者から話を聞き、ガードナーと呼ばれる街へやってきた。

 リンブルでギリ十指に入らないくらいの中規模な街らしい。


 街の概観はデザントのものとそう変わらない。

 違うのは、魔道具を使っている人が少ないところだろうか。

 気になったので魔道具を取り扱う商店に入ると、質が悪いにもかかわらず、値段は王国の物の倍以上だった。

 あっちの方が魔導師育成に金をかけてる分、良質な魔道具なんかが比較的安価で買えるってことなんだろう。

 そう考えると、王国はわりと恵まれた国なのかもしれない。


 あのザルな国境のことを考えれば、魔道具転売すればボロ儲けな気がするが、魔道具は購入の際に署名や戸籍確認をされるし、大量に買われれば調査の手が入る。

 そして他国で売っているとわかった場合、かなりエグい追徴課税が入る。

 そのため魔道雑貨商人も、おおっぴらには自国の製品をメインで売っているようだった。

 裏ルートだともっと色んな物が手に入るんだけどな……売る方としても買う方としても、昔はよくお世話になってました。


 品揃えを見た感じ、俺が魔道具専門店を開いても十分やっていけそうだ。

 『収納袋』の中に死蔵されている素材が死ぬほどあるので、一点物の高級魔道具作りをメインにすれば、稼ぎだけでも大隊のみんなを養えそうである。

 もちろん彼女たちもそんなことは望まないだろうが、最悪の場合の保険があるというだけでずいぶん気持ちが楽になった。


「そんなに嬉しいことがありました?」

「きっとこれから魔の森で鏖殺するのを楽しんでるに違いない」


 魔の森というのは、トイトブルク大森林の通称だな。

 魔物が出てくるから魔の森というのは安直すぎるので、俺は正式名称の方で呼ばせてもらっている。

 こいつらは俺のことをなんだと思ってるんだ。

 仕事だからやってただけで、別に戦うのなんか好きでもなんでもないんだが。

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