対話
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スケルトンとゾンビの群れを蹴散らしながら、デュラハンの下まで向かっていく。
自分たちを生み出した主へと近付いても、彼らの行動ルーチンに変更はない。
これでもし、クリエイション系のカースドウェポンだとしたら、俺ってもしかしてお役御免になるんだろうか。
そんなバカなことを考えていると、デュラハンの下へたどり着く。
デュラハンの弱点もまた、スケルトンと同じく核である。
ただし鎧の中は空洞で、核は身体のどこかにぷかぷかと浮いている。
どうやらカースドウェポンに大分精神を侵食されてるみたいだな、これほど近付いても反応が無いとは。
だがさすがに向こうもこちらに気付く。
デュラハンはすっくと立ち上がり、こちらへ向かって剣を正眼に構える。
「ガルネリア、セリアを守れ。セリアは何かあったら俺に言うように」
向こうが使っているのはミスリルの剣だ。
俺も『収納袋』からオリハルコンの直剣を取り出し、構える。
相手よりいい得物を使うことを、俺はまったく躊躇しない。
「――っ!」
「シッ!」
気力によって身体強化を施して前に出る。
対する黒いデュラハンは、俺の動きをしっかりと読み切って空に剣を置いた。
中々いい勘をしている。
だから勝敗を分けるのは、得物の差だ。
俺はオリハルコン製の剣で、相手の剣を半ばほどから断ち切った。
そのまま柄で籠手を打ち、剣を取り落とさせる。
蹴りを入れて吹っ飛ばし、地面から立ち上がる前に用意していた術式を発動させる。
「『超過駆動』アースバインド」
本来の何十倍にも強化された土魔法であるアースバインドが、蛇のようにぐるぐるとデュラハンの身体に巻き付いていく。
そして拘束から逃れようとするデュラハンに近づき、ぽっかりと開いている鎧の中を確認する。
核は……右足首の辺りか。
『収納袋』から取り出したミスリルの投げナイフを投擲する。
パリンとあっけなく、デュラハンの核は割れた。
そのままデュラハンは動きを止める。
『サーチ&デストロイ君三号』を見ると、既に魔力反応はない。
だから残っている鎧は、もうただのカースドウェポンのはずだ。
「浄化をかけて呪い弱めとくか?」
「いえ、それをやると効果も弱くなっちゃうかもしれませんのでぇ。まずは私が一人でやります」
呪いを制御できるかどうかのやり方は、死霊術におけるアンデッドとのやり取りに近い物があるらしい。
本職の言うことには従っておこうと、俺は下がってセリアを見守ることにした。
入れ替わるように彼女は鎧に近付き、そっと触れる。
隣では、ガルネリアが剣を持ち直立している。
彼は空っぽな眼窩で、セリアのことをジッと見つめていた。
「あのぅ、どうもぉ……」
「――いえいえ、そうではなくぅ」
「またまたご謙遜をぉ」
セリアはぶつぶつと独り言を言いながら、へらへらと笑い出した。
気が狂ったのかと思う人もいるかもしれないが、安心してほしい。
これは彼女の平常運転だ。
カースドウェポンの中には、多くの場合怨念が籠もっている。
優れた死霊術士である彼女は、その怨念と対話をすることができるのだ。
俺なんかは魔力をぶつけるか浄化をかける力業で呪いを制御するが、彼女の場合はまず対話から始める。
そのおかげで、彼女にはカースドウェポンの怨念そのものを強めることもできる。
彼女が手に持っている『無道ノ零』も、元は特に変哲もない、使っていると亡霊の声が聞こえてくるくらいのカースドウェポンだった。
だが彼女が対話を重ね自分や魔物の血を振りかけたりしているうちに、気付けば今のような魔道具になっていたのだ。
こんな風に、カースドウェポンは呪いや怨念を強めることで進化することがある。
だからカースドウェポンこそが最強の武器だと主張する奴らも一定数いる。
ちなみに俺はそいつらとは逆の意見だ。
武器は誰が使っても同じくらいの戦力になる物の方が、絶対にいい。
一点物の武器って、誰かに代用させるのが難しいからな……。
大隊の中には鞭使いや鉄爪使いがいたんだが、あいつらが戦線離脱して武器を誰かが使える状態になっても、それを使いこなせる奴らがいなかったのだ。
俺は武器にとって一番大切なのは、汎用性だと思っている。
「終わりましたぁ、ふぅ疲れたぁ……」
「とりあえず使ってみるか。俺がもう一体を片付けてくるから、その間に残敵掃討しといてくれ」
「了解でーす」
もう一体の魔物の方は、俺一人で相手をしよう。
デュラハンとの戦いがあっさりしすぎていたせいで、どうにも消化不良だからな。
……俺ももしかして、バトルマニアに足を突っ込んでいるんだろうか。
エンヴィーたちの考えが移ったのかな……。
そういえばあいつらの方は、無事にやっていけてるだろうか。
エルルとサクラの仲が悪いのが、少し気になるが……二人とも頭は良いし、そこらへんの分別はつけるだろう。
俺は俺の仕事を、きっちりとこなしますかね。
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