自負
「ほら、急がんと敵に気付かれるぞ」
「――はっ、そうですね。この魔道具についてはまた後で! ゴルネザさん、イベリアさん、シュプリームさんにテアさん、これを使ってくださーい!」
セリアは我に返り、取り出した二つの『収納袋』をひっくり返した。
中からは、大量の剣が地面にぶちまけられていく。
各団長の指示に従い、スケルトンたちは武器を拾い上げ、前進を開始した。
鍛冶担当だったダックが半泣きで作ったその鉄剣の数、実に五千。
つまり俺とセリアが組めば、強力なアンデッドに率いられたスケルトンの軍団を、即席で生み出すことができる。
『超過駆動』を使えば通常よりはるかに高い魔力効率で魔法を使うことができるため、魔力切れの心配もない。
その分神経を使うので、精神的な疲労は溜まるけどな。
セリアの命令に従った『葬送の五騎士』率いるスケルトン軍が、接敵する様子を見つめながら、俺は黙々とクリエイション・スケルトンを『超過駆動』で発動させ、二百体ずつスケルトンを生み出しては戦線へ投入していく。
こんな泥臭い戦い方、他の『七師』の奴らなら鼻で笑うことだろう。
俺は『七師』の中では誰よりも魔法の才能がなかった。
だからこそ戦い方だけは、誰よりも工夫を凝らしてきたつもりだ。
魔法の才能というものは、先天的な部分によるところが大きい。
俺の四元素に関する魔法の才能は、他の『七師』と比べるとどうしても劣っていた。
また俺には、ガーベラのような何かに一点突破した四元素魔法以外の魔法――系統外魔法の才能もない。
だから俺は、なんでもできる万能であることを求めた。
一点突破で勝てないのなら、総合点で勝てばいい。
そう考え、実戦し、突き詰めていった結果が、どんな魔法も常人の数十倍の規模で使えるようになる『超過駆動』だ。
魔道具作りの功績を認められていただけだった俺は、『超過駆動』を編み出したことで極めて高い応用力を手に入れることができた。
けれど……俺にできたのは、あくまでもそこまでだった。
だが、そこで気付いたのだ。
俺は一人ではないということに。
他の『七師』の奴らのように、何もかもを一人でやる必要などない。
自分が足りない部分は、仲間に補ってもらえばいい。
第三十五辺境大隊のみんなはかなり尖った奴らばかりだが、その尖りを活かせる場所を与えることさえできれば、輝く粒ぞろいの奴らばかり。
そして応用力に秀でた俺であれば、彼女たちに然るべき魔道具や場所を用意することは十分に可能。
俺の戦闘能力は、『七師』の中では下から数えた方が早いだろう。
けれど部下と――『辺境サンゴ』のみんなと一緒に戦えば、きっと誰にだって勝てる。
俺がバルクスで得た、一番大切なもの。
きっとそれは――俺を信じて付いてきてくれる、仲間たちに違いない。
「ごぉー、ふぁいっ、うぃんっ!」
セリアはフレーフレーとスケルトン軍団を応援していた。
彼女の戦闘は『葬送の五騎士』が代わりにやってくれるので、召喚を終えたらもう何もすることはない。
だがそれだと決まりが悪いのか、必死に声をあげていた。
あとは戦いの結果が出るまで、見届けていればいいだろうに……。
セリアの小さな背中を見つめながら、俺は笑う。
そして彼女の頭を、ガシガシと撫でた。
「わっぷ!?」
「ゆっくり休んでおけ、まだ先は長いぞ」
俺はそう言って、再び二百体のスケルトンを召喚する。
お前が活躍できる舞台は、俺が整えてやるさ。
なんてったって俺は――『怠惰』のアルノードだからな。
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