超過駆動
少し休憩してから、ゆっくりと進み出す。
先頭を行くのは俺と四体のスケルトンだ。
俺は魔法の発動準備を整えていて、彼らは近くにいる魔物たちを適当に間引いてくれている。
そして俺たちの少し後ろから、セリアが後をついてくる。
ガルネリアは彼女の護衛として側に侍り、周囲を警戒してくれていた。
五体の中だと、ガルネリアだけなんか動作が洗練されてるんだよな。
もしかしたら生前は、わりといいところの貴族か何かだったのかもしれない。
「ガガガッ!」
「ギギッ!」
「どうどう、よくわからんがそんなに怒らないでくれ」
残る四人の名前はえーっと……ド忘れした。
セリアが使うアンデッドは種類が多すぎて、全部覚えきれないんだよな。
今ではもう、印象に残っているやつしか覚えてない。
最初の頃は俺も頑張って覚えてたけど、暗記したと思ったら新しいのが大量に追加されて諦めたんだよな……。
俺が彼らのパーソナルな部分を覚えていないせいか、彼らの俺への評価は非常に低い。
別に剣を向けられたりするわけじゃないし、命令すればちゃんと聞くんだが、一緒に行動していると妙につっかかってくることが多いのだ。
なので基本的に連携を取ったりはしない。
あいつらはあいつらで、俺は俺で勝手に動く場合がほとんどだな。
『サーチ&デストロイ君三号』で明らかになっている、他よりも数段強力な個体の反応は合わせて二つ。
うち一つは大量の配下を抱えているやつで、もう一つは周囲に他の魔物がまったくいないやつだ。
前者はオークキングみたいな強力な個体が部下となる下位の魔物たちを従えているパターン。
そして後者が、龍種のように個体が強力すぎて、周囲から魔物の影がいなくなったパターンだな。
俺たちの目的は、これ以上リンブルに被害が及ばないような敵戦力の殲滅。
なのでまず最初に優先すべきは、大量の反応がある方だ。
配下を引き連れた魔物が街に流れ込めば、とんでもない被害が出かねないからな。
俺とセリアが組むと、大量の個体を持つタイプの敵と非常に相性がいい。
大隊の中ではこいつと一緒に戦うのが、一番コスパ良く魔物を屠れる。
広域殲滅魔法を使う必要もないしな。
広域殲滅魔法はたしかに強力だが、色々と手間も多い。
邪魔されたりして発動が失敗すれば、魔法が霧散して大量の魔力が無駄になる。
事前のタメも結構必要だし、おまけにバカみたいに魔力も食う。
魔物をトレインして大量に引き寄せてから使わないと、魔力消費の採算が合わないのだ。
適当にブレイドブラストファイアボールみたいな上級範囲魔法を連発して敵を潰した方が、消費はよっぽど抑えられる。
魔物の軍勢でも来たり、戦争をするんならまた話は変わるが……普通に強力な魔物と戦う上だとあんまり必要じゃないんだよな。
おっと、そろそろ魔法の準備が整うな。
いつでも発動できる状態にしておかなければ。
さて、いったい何系の魔物がいるんだろうか。
「おっと、これは……」
「いい匂い、ですねぇ」
俺たちの視界を埋め尽くすように並んでいるのは、アンデッドの群れだった。
ゾンビ系とスケルトン系がほとんどだが……種類が多いな。
ここら辺で死んだ魔物を片っ端からアンデッド化させているからか、種類的なまとまりは皆無だ。
ただ群れを統率する魔物が、ある程度力量のあるアンデッドなのは間違いない。
セリアの戦力アップのチャンスだな。
「二系統いるのが気になるな。群れの主は変異種か何かかもしれない」
「それならちょっとぉ、張り切らなきゃですねぇ」
アンデッドは通常、同種のアンデッドしか作ることができない。
例えばリッチはスケルトン種なので、死体をスケルトンに変えることはできる。
ハイ・ゾンビはゾンビ種なので、死体をゾンビに変えることができる
けれどリッチはゾンビを作れないし、ハイ・ゾンビもスケルトンは作れない。
二系統の魔物が共生しており、強力な反応は一つだけ。
もしかすると敵は、本来とは異なる特殊な力を持った魔物――変異種かもしれない。
「クリエイション系の魔法が使えるゾンビだったりするんだろうか」
「本当にそうなら、世紀の大発見ですねぇ」
ハイ・スケルトンにクリエイション系の魔法でスケルトン魔物を作らせ続け、無限骸骨集団を作ることはできない。
アンデッドは先の分類で言うところの、ネクロマンス系しか使うことができないからだ。
それなら墓地にでも行ってスケルトンを起こし続ければいいと思うかもしれないが、これも不可能だ。
セリアとアンデッドたちは、彼女が上下関係を作り使役する過程で、個別に契約を結ぶ。
そしてそれは、契約したアンデッドたちが死体を新たなアンデッドへ変えた場合も同じ。
するとどうなるかというと、セリアは全てのアンデッドたちと間接的な契約を結ぶことになってしまう。
イメージとしては、彼女を頂点としたピラミッドを想像してくれるとわかりやすいと思う。
契約には魔力消費だけではなく、脳の容量の使用や肉体的な負荷も伴う。
つまりあまりに配下を増やしすぎればセリアの肉体は限界を迎え……彼女は死ぬ。
実際セリアはそれで、前に一回死にかけたことがある。
俺がたまたま入手していた不死鳥素材を使って作った『不死鳥の尾羽』がなければ、彼女は全身から血を噴き出して死んでいただろう。
死霊術は、まだまだ謎の多い分野で、デザントでも研究はまったくと言っていいほど進んでいない。
クリエイション系の魔法は別に気力を使うわけではないから、理論上アンデッドにも使えるはずなんだが……どれほど高位のアンデッドであっても不可能なんだよな。
「どうかしましたかぁ?」
「……いや、少し昔のことを思い出していただけだ」
「そうですかぁ。でも無制限に増えるタイプのゾンビだと厄介ですしぃ、早めに気付けて良かったですねぇ」
ゾンビ系の魔物は牙を経由してゾンビ細胞を相手に流し込み、噛みついた相手をゾンビ化させることができる。
これは死体にも有効であるため、とある特定の条件下であればゾンビは爆発的に増加する。 生き物も死骸もあらゆるものをゾンビ化させながら行われる去年の魔物の軍勢は、正に悪夢だった。
何度もあった魔物の軍勢の中で、アルティメット・ゾンビが率いていた屍者の軍勢が一番キツかったからな……。
ちなみにそのアルティメット・ゾンビは、今ではセリアの持つ見せられない鬼札のうちの一体だ。
こいつは周囲の死者を噛まずにゾンビ化させる凶悪な能力を持っているため、未だ一度も使ったことはないらしい。
もしやろうものなら、セリアの容量を即座にオーバーしてぶっ倒れるだろうから、当然だな。
このゾンビ一体でも、結構な容量を使っているらしいし。
でも今思うと、セリアはどうしてあんな使い道のない爆弾を抱えているんだろうか。
デザントと戦争になった時に、デザントリアのど真ん中に契約破棄したアルティメット・ゾンビを投げ入れるような使い方しか、俺には思いつかないが。
「それじゃあ隊長、お願いします」
のほほんとした顔をしているセリアの頭を撫でてやりながら、俺はずっと発動待機中にしていた魔法を唱える。
俺とセリアが組めば、大量の敵を簡単にすりつぶせる。
その理由は――
「『超過発動、クリエイション・スケルトン!』」
二人で力を合わせれば、大量のスケルトンを動かすことができるからである。
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