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激励

あとがきに大切なお知らせがあります!

ぜひ最後までご覧ください!


 長いようで短かったクランでの生活も、これで一旦はおしまいだ。

 ただ別に、隊員たちとのつながりが切れるわけじゃない。

 むしろ今後は今まで以上に彼女たちと連絡を密に取る必要があるだろう。




「えー……ごめんな、事前に言うことを決めてきたわけじゃないんだ。だからあんまり上手にはできないかもしれないけど、許してくれ」


 俺は今、以前作戦指令を出す時に使っていた段の上に立っている。

 指揮官には威厳が必要だからとエルルに言われて作ったので、金やら貝殻やらでそれっぽい装飾がなされている。

 風魔法を使い声を拡散させてやれば、魔道具を使わずともここにいる全員に声を届けることができる。


 壇上から見下ろすのは、『辺境サンゴ』のフルメンバー。

 こうして一同が同じ場に立つのは、果たして一体どれくらいぶりのことだろう。

 考えてみると、最後にバルクスで戦っていた頃ぶりなんじゃないだろうか。


 第三十五辺境大隊、総勢六百人にもなる面々が揃っているのは圧巻の一言に尽きる。

 マリアベル、エンヴィー達幹部陣はもちろんのこと。

 双子のミミィとリリィに雑草お嬢様のマフィン達。

 長いこと顔を合わせていなかったやつもいれば、毎日のように顔を合わせてきたやつらもいる。


「デザントを抜けてから『辺境サンゴ』を作って、ドラゴンを討伐したり『七師』と戦うことになったり、一緒にガルシアに向かったり……一年にもなっていないって信じられないくらいに、濃密な時間だった」


 頷きを返してくれる彼女達の顔色は、皆明るい。

 正直、軍務に就いていた頃よりもよっぽど。


 ここにいる『辺境サンゴ』の皆は、デザントにおいて不遇な扱いを受けてきた者ばかりだ。 その多くは給料が低く労働条件が劣悪な二等臣民の扱いを受けていた。


 二等臣民は二十五年ほどの軍役に就き、無事生き残って退役をすれば市民権を得ることができる。

 一度市民権を得てしまえば、デザントで生きていくことは非常に容易になる。

 皆そのために、安い給料でこき使われてきても耐えてきたのだ。


「今だから言うけど、追放を言い渡された当時はぶっちゃけかなり気を揉んでたよ。マリアベル達は勝手に軍を抜けてくるし、おまけに他にも似たような考えのやつらがわんさかいるって聞かされて……俺だけでなんとかできるのかなってずっと不安だった」


 今まで頑張って耐えてきたっていうのに、俺が追放されたことに怒って軍を抜けるなんて、……なんてバカなやつらなんだろうかって思ったよ。

 俺ならなんとかしてくれるって、信じてるって言われてもさ。

 いや、俺のことを神か何かと勘違いしてるんじゃないかって。


 正直なところ、俺は自分にあまり自信がなかった。

 今だって、自信があるとは言いがたい。


 けどまあ、あちこちを駆けずり回ったり、ソルド王と知己を得たり、ウルスムスを倒したり……色々とやっていくうちに、ある一点に関しては、自信がついた。

 それは……


「でも今なら言える。俺はここにいる『辺境サンゴ』の皆と一緒ならなんだってできるって」


「隊長……」


「隊長!」


「さすがアルノードさん!」


 はやし立て始める隊員達。少し気恥ずかしいが、間違ったことは言っていないつもりだ。

 俺はここにいる皆と一緒にやれば、どんなことだってできる。

 そしてそれはきっと、『辺境サンゴ』ってクランがなくなったって変わらない。


「『辺境サンゴ』は今日この時を以て解散する。ただもちろん、ここが俺達の終わりじゃない。誰一人欠けずに、それぞれの戦いが終わったら……その時はもう一度この場所で、『辺境サンゴ』を再結成しよう。大丈夫、俺達ならやれるさ」


「「「おおおおおおおおおっっ!」」」


 割れんばかりの歓声と拍手が上がる。

 鍛えているやつらが多いこともあり、一人当たりの声量がエグい。

 誇張でもなんでもなく空気が震え、地面が揺れていた。


 こうして俺達『辺境サンゴ』は解散し……それぞれの戦場へと向かっていく。

 もちろん戦闘能力がない魔道具班や生産班のやつらだって、自分達の戦場で戦い続けることになる。

 また会おうと交わした約束が嘘にならないよう、俺はこれから属州へと向かう。

 どのような形で終わるにせよ、誰一人欠けることがないように、微力を尽くさせてもらおう。


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