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答え

 属州に手を貸すべきか否か。

 その決め手は、行動によって得ることができる果実から考えるべきだ。


 まずは受けることによるデメリットから考えていく。

 ラッフェルハルデに釘を刺されたにもかかわらず属州に手を貸せば、俺はデザントから本気で疎まれることになるだろう。


 場合によっては以前ウルスムスがそうであったように『七師』を送り込んでくる可能性も十分に考えられる。

 一人であればなんとかできるとは思うが……たとえば二人以上の『七師』が俺だけを狙ってきた場合。

 『辺境サンゴ』の皆と力を合わせたところで、正直かなり分の悪い戦いをしなければならなくなるだろう。


 それに加えて『辺境サンゴ』の皆のモチベーションが下がるのも捨て置けない。

 例えば属州が蜂起をした場合、彼女たちの故郷は戦場になる。

 そうなれば離脱するメンバーも増えるだろうし、そしてその末路は恐らくは悲惨なものになる。


 つまるところデメリットは俺と隊員、そしてその家族たちの命の問題だ。


 対してメリットはどうか。

 まず第一に、属州内の戦力を増強することで、デザントの混乱を助長することができる。

 国力を削ぐこともできるし、更にリンブルが飛躍するための時間を稼ぐことも可能だろう。 今のリンブルに必要なのは時間だからな。


 また、属州に『辺境サンゴ』で向かうことによるメリットは他にもある。


 それは隊員たちを経由したり、俺が直接指導をするという形で属州に伝手を作ることができること。

 デザントの属州は、獅子身中の虫になり得る。

 彼らと連動をする形で動けば、リンブルが得ることができるものは多いはずだ。


 更に言えば、属州の人間は力こそパワーな脳筋タイプが非常に多い。

 バルクスで鍛え上げた隊員の皆は、そこに非常に相性がいい。


 属州出身者が多いこともあるし、彼らが指導をしていけば、属州内で重要な位置に上り詰めることもできるだろう。

 隊員の皆としても、故郷のためということであれば力を遺憾なく発揮できるだろう。


 もちろん俺たちが力を貸すせいで戦いが激化する可能性もあるから、引き時や将来的な落とし所はしっかり意識しておく必要があるが……。


 一晩ほど悩み隊員たちからも話を聞いた結果、答えは出た。

 次の日、グリンダムさんと再び会い、右手を差し出す。


「俺たちでよければ、ぜひお手伝いをさせてください」


「助かる、アルノード殿と『辺境サンゴ』が来てくれれば、百人力だ」


 俺は属州に力を貸すことにした。

 やはり決め手となったのは、もし属州に何かあった場合、『辺境サンゴ』を抜けて故郷で戦うと口にする隊員たちは多かったことだろう。


『私、行きますよ。お父さんたちに無駄死にされるのは、嫌ですから』


『……私も。一人でも多く、みちづれにする』


 エンヴィーやマリアベルたち、クランの幹部クラスの面々ですらこんな風に言ってくるのだ。

 彼女たちの引率である俺は、頷かざるを得なかった。


 彼女たちがいくら強いと言っても、戦場では多勢に無勢。

 その多くは、戦場で命を散らすことになるだろう。

 であれば隊員たちを守るためにも、俺が直々に出向くべきだよな。


(といっても、まだ戦端が開かれてるわけじゃないんだけど)


 グリンダムさんたち属州のお偉方たちはデザントへの不満を明らかにしているらしいが、実際に行動を起こしているわけではない。


 ただなんとなくの勘なんだが……恐らくそう遠くないうちに、彼らの不満は爆発することになる気がしている。

 残念なことに、こういう時の俺の勘は良く当たるんだ。


 いざ反乱が始まった時に側に居ることができるようにするためにも、近くで観察をさせてもらおう。


 つい先日まで行われていたガルシアとの戦役とは違い、今回の戦場はデザントの国内だ。 多分……というか間違いなく、『七師』達が出てくることになるだろう。


 まさかこんなに早く戦うことになるとは思っていなかったが……彼ら相手に勝てるように、既に研究と対策は終えている。


 リンブルへの帰還やソルド王への報告もあるので、一旦別れてから再度合流する約束を取り付ける。

 まさかこんなに各地を転戦するとは思ってなかったが……皆のためにも、気張らなくちゃ名。


 まあどこまでできるかはわからないけど……とりあえずいつも通り、できることをやっていきますかね。


新作の短編を書きました!

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