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会合


 デザントからガルシアに向けられている軍団は、合わせて三つ。

 第三軍団・第六軍団・そして第十三軍団だ。


 現在俺たちは各地で転戦を繰り返すことで、それら全てから継戦能力を奪うことに成功していた。


 まず第六軍団だが、こちらは完全に死に体といっていい。

 虎の子のアルティメット・ゾンビを使った『ゾンビあたっく!』によって軍団長のヴェッケルを含め、百人隊長以上の人間はほぼ全てが死んでいる。


 俺としては正直、彼らに関してはやり過ぎたと思っている。

 まさかアルティメット・ゾンビを人のど真ん中に落としただけであそこまでの惨劇になるとは……ちょっとあの魔物の強さを見誤っていた。


 ちなみに全員がゾンビになったかというとそんなことはなく、千人前後の兵士が捕虜になっている。

 下手に逃がして野盗になられても困るため、逃げ出した兵士たちを『辺境サンゴ』のメンバー総出で捕まえたおかげだ。


 あ、ちなみにゾンビ化した人員は浄化の魔法を使ってしっかりと供養させてもらった。

 死ねば仏ってやつだ。


 各地で奴隷狩りをしたり殲滅作戦を行っていた第十三軍団は、無線型の『通信』の魔道具を使い網目を広げる形で対応させてもらった。

 これは人員を輸送するのが厳しかったこともあり、現地の隊によって対応は様々だ。


 エルルの隊は可能な限り人員を捕虜として捕らえ、エンヴィーとマリアベルは比較的効率重視であまり生死を気にせず動き回っていたようだ。


 捕虜にすることばかりを重視するあまりガルシアの被害がこれ以上大きくなっては本末転倒なので、俺は彼女たちの判断を支持している。


 そして最後は、ミンディで投降を認めさせたラガット率いる第三軍団だ。

 軍団としての数が一番残っているのはこの第三軍団で、彼らは生き残っている兵達のほぼ全てを捕虜にしている状態だ。

 ある程度数は減っているが、人数的にはまだ五千以上の人員が残っている。


 基本的に捕虜の扱いは、俺が一元で管理する形にさせてもらっていた。

 ――そうしないと、捕虜達の命が危なかったからな。


 ガンドレア軍をはじめとしたガルシア連邦の人間達は彼らを処刑するよう何度も嘆願してきたが、俺としてはそれを許すわけにはいかなかった。


 たしかにデザントはガルシア連邦の者達相手にかなり好き放題やっていたが、俺はラガットに投降と引き換えに彼らの命の保証を約束してしまっている。


 あの時、ラガットはミンディの住民達を皆殺しにするという形で報復をすることもできた。

 そうせず白旗を揚げてくれた軍人に対しては、しっかりと報いなければならない。


 現在は主に、装備を没収してから徒党を組めないように俺たち『辺境サンゴ』が切り開いた場所を開墾してもらっている。

 農作業に従事してもらい土地の開拓や食料の増産に励んでくれれば、少しは恨みも薄れるだろうという判断からだ。


 ちなみに殺し尽くすのは軍事的にもあまりいいことではない。

 既に俺達は一万八千人近くいたデザント兵達を、三分の一弱になるまで減らしてしまっている。

 これは軍隊として考えれば、壊滅の判定を食らうほどのダメージだ。


 デザントは腐っても大国だ。

 今はベクトルが内側に向いているおかげでなんとかなっているが、やりすぎて挙国一致体制でも築かれてしまうと非常にまずい。


 貴族や王家が一致団結し『七師』を複数送られたりすると、俺たちでも勝てるか怪しいからな。

 なので今後のことをなるべくやりすぎず、かつデザントの国力をしっかり削ぐという難しい条件を達成しなければならなかった。

 戦力半減というのは、我ながら上手いことやった方ではないだろうか。


 その証拠に実際に終戦条約の調印のためにやってくるのはお飾りのフランツシュミットではなく、軍務総監であるラッフェルハルデ卿なのだから――。



 ガンドレア火山国において最も堅牢な城とされている、バーレスク城。

 その一室には、今回のキーマンである者達が一同に介している。


 左側にいるのがガルシア連邦の代表者達。

 そして右側にいるのがラッフェルハルデ卿率いるデザント王国の特使達だ。

 ちなみに俺は両者の間に立ち、立会人としての自分の立場を明確にしている。

 こんだけ深入りしといて今更何をって話だが、こういうのは形式が大切だからな。


 ガルシア側の人員を見ると、そこにはいくつかの見知った顔がある。

 なぜかダークエルフの英雄として代表になっているダナさんに、気力強化と魔法による身体強化を交互に使うことで息切れすることなく戦い続けることができるようになっているダンテさん。


 ガンドレア火山国の代表であるゴズや、他の国の代表であるエルフや純粋な人間種の人間などもいる。

 デザントに侵攻されていない地域の人たちとは未だ面識はないので、軽く会釈をするにとどめておく。


「こうしてお会いになるのは初めてでしたな、アルノード殿。ラッツスター・フォン・ラッフェルハルデです」


「お初にお目にかかります、ラッフェルハルデ卿。今日は立会人としての参加を許していただき、感謝の念に堪えません」


「いや、此度の戦争の立役者がいなくては始まりませんからな。さて、それでは始めましょうか、長きに渡り続いたデザントとガルシアの戦争に終止符を打つタイミングは、今をおいて他にありませぬ」


 こうしてデザントとガルシアとの間での話し合いが、始まった。

 戦争は始めるのも難しいが、終わらせるのはもっと難しい。


 一体どのくらいの長さになるだろうか。

 さっさと終戦させて、リンブルに帰りたいものである。

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